経営理念を社風にまで高めてゆくやり方

価値観を共有する仲間経営理念はつくることが大切なのではなく、経営理念が会社の社風にまでなることが大切なのだと思います。働く社員全員がブレずにピシっと同じ経営理念を共有している。

同じ信念のもとに働く「同志」となっている。価値観を共有する仲間になっていることです。言葉を変えれば、経営理念が会社に浸透しているということです。ではそのために必要なやり方はどのようなものがあるのか?ここでも3段階でお話しします。

経営理念を朝5分間唱和する
経営理念の勉強会を定期的にやる(週30分程度)
毎朝、30分以上経営理念について対話する

ここでは、時間数とやり方の2つのポイントがあります。
・時間数は月間合計○時間と決める(朝5分×20日=100分=月間1時間40分)
・やり方は、(1)唱和する、(2)講話を聞く、(3)対話する(話す・聞く)の3通り

脳科学の視点から、脳が一番活性化するのは「対話」です。聞くだけでは眠くなるばかりで、自分のものになりません。また、唱和は声を出す分いいのですが、声を出して終りになりがちなので、自分のものになりづらいところがあります。対話とは、ある経営理念に基づいて、「自分の意見」を「具体的な仕事」に合わせて話すというところが他の2つとはまったく違います。

「話す」「聞く」という活動は、とても脳を活性化させます。対話する、コミュニケーションをとる。ここが一番大切なところです。

経営理念を浸透させる方法(例)売上が10億円以上、社員が50名、100名となってきたときに、経営理念をつくるにはいくつかやり方があります。まず一つ、部門別でチームをつくり、年齢別、階層別で組み合わせをつくるというような例があります。

横軸に部門、たとえば営業部、製造部、間接部門、検査部門など。縦軸に年齢、階層(20代、30代、40代、50代)担当、課長、部長、役員というようなマトリックスをつくり、それぞれの部門から人を選んでチームをつくって経営理念をともに学ぶつくり込むという方法があります。

また別のやり方では、ジュニアボードというような若手の20代、30代を中心とした経営理念作成チームをつくる。またはそのチームで勉強するという方法もあります。人数が多くなれば、やはりある程度小さいチームでそれをくくり、より多くの頻度で経営理念について学ぶ機会をつくるということが大切になります。

より具体的なやり方は?例(1) 毎日朝礼で話をする 
5分間、Aさんが経営理念を読み上げ、その内容について話しをする。それに対して同じ部門・グループの数人(4人~8人程度)の人からフィードバックをもらう。つまり、対話=コミュニケーションをとるようなやり方。

例(2) 会議で話をする
会議をする場合には、その初めに経営理念について唱和をする、または理念の一つの項目について「きょうの経営理念はこれです」と話をするというようなやり方。会議をする場合にも、必ず経営理念について語るという習慣を持つこと。

例(3) 定例勉強会
月に1回、または年間数回などの勉強会をする。半日(3~4時間)の場合、1日(6~8時間)の場合、1泊2日(10~24時間)の場合などを組み合わせる。

例(4) 年間での階層別、部門別の勉強会 
1年間の中で、たとえば階層別であれば、担当者レベルの勉強会、課長クラス、部長クラスの勉強会、役員クラスの勉強会というように、役職、階層別に経営理念を学ぶ機会をつくる。また、同じように部門別でも、営業部門、製造部門、管理部門などの部門別で勉強会を開く。このように縦と横というような感じで勉強会を開くやり方。

例(5) 社長、役員と各部門
社長役員が直接、部長クラスまたは課長クラスという「階層」に対して、または「部門」に対して、経営理念についての勉強会を月に1回、1時間やるという仕組みをつくっていくというやり方。

例(6) 朝会での経営理念の運用
経営理念をただの空理空論というようなものにするのではなく、より実践的にする方法。朝礼の中で15分なり30分というある程度の時間をとって、毎日の実務と経営理念について語るというような経営理念の浸透のさせ方。

具体的にはどういうものかというと、たとえば始業時間が9時であれば8時半から9時までの間に、経営理念の1つの項目、例えばある項目について、あまり大きくない単位つまり4人から6人程度に分かれ(各部門またはグループ)、そこの中で対話=コミュニケーションをする。経営理念の第3項目が「利他の心を持つ」だとしたら、昨日会った実務の出来事を「利他の心を持つ」というテーマに沿ってAさんが1分で話をする。それに対してB、C、Dさんと、参加している人が順番に1分で意見を言う。

つまり、昨日あった具体的な仕事の中身を、経営理念と照らし合わせた場合に、「私はこれについてはこう思った」「これが参考になった」「こういうふうに反省した」「これはこういうふうに次からはしたいと思う」というような感想や決意を、経営理念をもとに述べるという方法。

社員全員に経営理念を浸透させるより効果的な方法例(6)のメリットは、ただの説教ではないということです。経営理念を浸透させるとなると、多くの会社が社長が長い時間、説教をするというパターンが多くなります。実はこれはあまりおすすめしていません。理由は、社員が話を聞いてくれないからです。話す人が、落語の名人でもない限り、黙って聞く人を10分以上もひきつけられません。その解決法がこのやり方なのです。

(1)小グループ(2)全員参加(3)1人1分以内=短い時間(4)話し、聞く
つまり、「小グループ全員参加型、1分間、対話方式」です。通常は、次のように対照的です。

(1)1対多(2)社長の独り舞台(3)社長が1時間=長い時間(4)聞くだけ
これは、「心理学的」にも「脳科学」の視点からも非常に効果的です。理由は、次のようになります。

・小グループなので自分の存在感がある
・全員参加なので積極的になれる
・1人1分以内の短い時間なので眠くならない
・聞くだけではなく、話し、聞く対話をするので脳が活性化して記憶にも残る

また、日々の仕事と経営理念を結びつけた内容を毎日、話をしていくので、空理空論になりません。実務につながることが一番の学びとなります。これは経営理念の勉強でありながら、日常の業務と密接に結びついているので、仕事をしていくうえでの判断基準としての経営理念を身につけるうえで、非常にいいやり方となっているのです。

経営理念が浸透するとは「社風になる」ということ

社員全員に経営理念を浸透させてゆく具体的で効果的なやり方について

「社風」がよくなってこそ、経営理念が浸透したといえる

どこの会社にも「その会社なりのある雰囲気」というものがあります。それが「社風」といわれるものです。立派な経営理念を壁に掛け、額に入れてはいても、会社の社風が悪い会社もあれば、ことさら大きな声で経営理念といわなくても、会社の雰囲気がいい。社風が良い会社もあります。

つまり、経営理念は額に入れればいいというのではなく、最終的には社風が良くなるということが大切なのです。社員全体が持つ考え方が軟らかくて優しくて、いい雰囲気を持つようになることが大切になるのです。「ああ、あの人にまた会いたいな。あの会社にまた会いたいな」と思われるということです。

経営理念とは考え方ではありますが、実際に社員がその経営理念に基づいて行動するので、その社員の行動に表われるその雰囲気というもので、最終的に経営理念がいいかどうかが判断できるということになるのです。

経営理念の浸透と時間の関係

1年間は何時間あるのか?【質問】1年間は何時間あるでしょうか?

多くの人が答えられないと思いますが、1年間というのは、8760時間あります。8760時間=24時間/日×365日です。

参考までに、一生の時間と、その働く時間について記しておきます。
1年間、8760時間を仮に80年生きるとすると、8760時間×80=700,800時間になります。つまり、一生涯、80歳まで生きたとすると、人間というのは70万時間生きるということになります。

では、普通のサラリーマンというのは1年間で、いったいどのくらい働くのでしょうか?計算したことがあるでしょうか?
仮に1日7時間、年間240日間働くとすると、7時間×240=1680時間となります。これは、1年間、8760時間分の1680時間となるので、19%となります。つまり、通常のサラリーマンは、1年間のうち19%しか働いていないということになります。

この1680時間というのは1日平均にすると、なんと4.6時間であり、非常に少ない時間です。なぜ、少なく感じるかというと、土日、および祝祭日には働かないので、平均すると少なくなるのです。働いている本人はとても長く働いている気がしても、実はさほど長く働いてはいないのです。

では、生涯の労働時間はどのくらいでしょうか?
この1680時間を、20歳から60歳まで40年間働くとすると、1680×40=6万7200時間となります。この6万7200時間というのは、一生涯の70万800時間のうちのなんと、たったの9.6%です。

つまり、「私はよく働いた!」と思う人がいたとしても、一生涯でも働く時間は6万7000時間、比率にしても10%も働いていないということがわかります。このように、具体的に数字にしてみるとわかることがたくさんあるのです。

1680時間×40=6万7200時間
6万7200時間/70万800時間=9.6%

経営理念について考える同じように、経営理念について考えてみましょう。
たとえば、毎朝5分だけ、200日、経営理念について勉強する会社があるとします。そうすると、1000分(16時間)となります。これは、年間の労働時間、1680時間に対して、なんと1%程度しかないのです。つまり、毎朝、毎朝、経営理念を唱えたとしても、年間の労働時間の1%にしかならないということです。

したがって、朝礼での経営理念の唱和は、悪いことではありませんが、それだけで経営理念が浸透したと思うのはむずかしいといえるのではないでしょうか。もし、経営理念を本当に浸透させたい、全社員がしっかりと経営理念を持った状態にしたいのであれば、年間の労働時間、1680時間のうちの「最低でも1%=16時間」、この「最低でも」というところが大切なのです。経営理念について学び、話す時間を持ちたいものです。

経営理念の浸透とテレビの関係

日本人は1年間で何時間、テレビを見るのか?ここに一つのデータがあります。年間の勉強時間とテレビを観る時間についてのものです。小学校6年生の年間総授業時間数は980時間だそうです。これを365日で割ると、1日平均2.6時間ということになります。

一方、日本人の平均テレビ視聴時間というのは5時間1分だそうです。年間にすると、5時間×365=1825時間。高齢者が長い時間テレビを観ている時間を除いたとしても、1日3時間テレビを観たとしたら、365×3時間=1095時間で、年間の小学校の授業時間数980時間よりも多くなるということです。つまり、学校の授業よりもテレビの影響のほうが大きくなるということです。

経営理念についても同じようなことがいえます。1年間で毎日5分を200日=1000分(約16時間)なら、1週間に観るテレビの時間(3時間×7日=21時間)よりも少ないことになります。日本人の平均5時間で考えれば、4日間(5時間×4日=20時間)で、1年間の経営理念を学ぶ時間よりも多くなるということになります。

つまり、どれほど熱心に話そうが、接触時間数が少なければ、やはり接触する時間が多いものに影響されるようになってしまうのです。経営理念を毎日5分1年間唱える16時間は、1週間のテレビを観る時間3時間×7日=21時間に時間数で負けるのです。

さらに、驚きの事実があります。先ほどお話した、年間の労働時間1680時間(=7時間×240日)は、日本人の1年間のテレビの視聴時間より145時間も少ないのです。つまり、働く時間よりテレビを観る時間のほうが多いということです。

ですから、表面的には社長の言うことを聞いても、本当に影響を受けているのはお笑いタレントなのかもしれません。自社の経営理念より、朝の天気予報のお姉さんが言っていたことを覚えているなんてことが起こりえるのです。したがって社長は、事あるごとに話したり書いたりしながら、全社員に対して自分の考えを伝える努力をしなければ、テレビに簡単に負けるということになるわけです。

*2005年度のフランス・カンヌで開催されたテレビ番組の国際見本市『MIPTV』で発表された統計によると、世界で最もテレビを観る時間が長いのは日本人で、1日のテレビ視聴時間は平均5時間1分だった。

経営理念の浸透をどうさせるのか? 質と量で考える

思いの強さも大切だが、何よりも「量」、つまり「回数」、「時間数」の与える影響が大きい、時間を味方につけること

質よりも量という考え方経営理念を浸透させるうえで大切なことを、量と質という考え方で見てみましょう。
量とは経営理念について考える時間であり回数といえ、質とは社長の思いの強さ、度合いといえます。強さの度合いは社長のいまの状態によって変わってくると思います。それより大切なのはこの量という考え方です。

量とはその時間であり回数と書きました。それはどういうことかというと、経営理念について学ぶ、または話す時間数を確保することが大切だということです。たとえば、毎日10分ずつ、年間200日働くとすれば、10分×200日=2000分(33時間)、経営理念について考え、話したということになります。そしてその回数は200回ということです。1年間で2000分という時間、経営理念について学んだということになります。

同じようにこの2000分を、100分ずつ20回という考え方もあれば、200分ずつ10回という考え方もあります。この回数と時間については、できれば毎日少しずつでも積み重ねるほうがいいと思います。たとえば、腕立てを毎日10回、200日やるという人と、2000回を1回だけやる人というのがあれば、10回、200日やる方が効果的だとわかると思います。

毎日10回、200日やるということは、2日に1回はコツコツとやっていることになります。一方、2000回を1回だけやるということは、1回はとてもがんばるのですが、あとの364日は何もしないということです。その364日で腕の力は弱くなりますし、その弱くなった腕で2000回やるということは現実的には無謀であり、実現不可能といっていいと思います。

経営理念を浸透させるといったようなことをする場合、一度にたくさんのことを一気にやるのではなく、毎日こつこつとやることのほうが大切なのです。毎日10回という低負荷を200日という日数でコツコツやり続けるほうが継続しやすく、成果が出やすいといえます。

経営理念をどうやって伝えていくのか?

「文字」で伝え、「話して」伝え、あれこれやってはじめて伝わってゆく

伝える方法=どうやって伝えていくのか?自分以外の人間に自分の思いを伝える方法は大きく2つあります。経営理念を伝える場合も同じです。

文字で伝える
話して伝える

つまり、これは文字という視覚を使う場合と、話すという聴覚を使う場合があるということです。

文字で伝える文字で伝える場合、次のような方法があります。

(1)紙で伝える
まず、紙で伝える場合です。紙で伝える場合には話して伝える場合よりも確実に伝わります。というのは、忘れられないということです。文字に残してあるということは、記録にとってあるということですから、これは伝わり方としては確実です。しかし、相手が本当に理解するかどうかということにおいては少し弱さが残ります。

(2)メールで伝える
メールも同じです。ある社員に毎日大量の書類やメールが50通、100通、200通と届く場合、あなたにとっては重要な経営理念の言葉なのですが、メールを受け取る本人にとってはその中の一つにしかなりません。たしかにあなたは伝えはしたのですが、相手が本当に理解したかというところでは疑問が残ります。

話して伝える話して伝える場合、次のようなやり方があります。

(3)講義で伝える
話す人は一方的に話し、聞く人はただ聞くというだけですから、脳科学の視点から見ても、聞く本人にとっては、ただ耳から音が入るというだけで、聞いてはいるけれども、本当に理解しているかというと、理解の度合いがうすい場合があります。

(4)勉強会で伝える
勉強会というと、人数が1対3、あるいは1対5のような小人数となるイメージがあるので、伝わり方は、1対100の場合よりも、より強くなります。したがって、勉強会を開くということであれば、より経営理念が伝わりやすくなるといえるかもしれません。

(5)対話で伝える
「話す」だけではなく「話す、聞く」というコミュニケーション、つまり、対話をすることによって、経営理念というのはより相手に伝わりやすくなります。さらにそのときのポイントは、空理空論ではなく、より実務に近いもの、毎日起こる出来事、きょう仕事で起こったその事柄について話す、対話をするということが非常に重要になってきます。

このように、経営理念を伝えるといった場合には、「文字」(紙、メール)と「話す」(講義、勉強会、対話方式)といったものを組み合わせながら伝えていくことが大切になります。そしてさらに、人は話す、聞くだけではなくて対話をすること、つまり、話し相手にフィードバックをすること、話し相手からフィードバックをもらうことを通じて、その経営理念、考え方というものに対してより深く理解をし、自分のものとなっていくといえるのです。

経営理念の浸透に欠かせない3つの視点

特に社員数が多くなれば、社長の意志も経営理念もなかなか届かなくなるのが当たり前

3つの視点を持つ経営理念を浸透させるうえで大切な3つの視点をお話します。

(1)立場 = 創業経営者か、それ以外か(二代目、三代目、雇われ社長など)
(2)意志の強さ = 経営理念に対して強い意志を持っている、持っていない
(3)社員数 = 10名まで、~30名、~50名、~100名、100名以上など

経営理念の浸透に欠かせない3つの視点 (1)立場あなた自身が創業者である場合とそうでない場合について、経営理念を浸透させるときにやり方が違ってくるということです。どういうことかというと、創業経営者であれば、自分自身の中に持っている経営理念を、自分の考えで全従業員に対して伝えることできるということです。

それは誰に遠慮することもなく、「私はこうしたい!」という強い思いを実現させるものが会社であるため、自分の思いをそのままストレートに伝えることができるわけです。 しかし、二代目経営者、三代目経営者、または雇われ社長の場合にはそうはいきません。

たとえば、二代目経営者の場合、創業社長がいて、創業社長の考えがあり、その人が持っていた経営理念と、まったく違うものを自分が経営理念として掲げることはむずかしいのです。 その理由は簡単です。いままでの経営理念と違うからです。

そして、いままで働いていた社員がいるからです。仮に、わかりやすく100人の社員がいるとしましょう。その人たちは創業社長と、ある思いを持って仕事をし、5年、10年、20年、30年と一緒に仕事をやってきたわけですから、やってきた仕事の中身もわかれば、やってきた仕事の思いについても十分理解をしています。

ところが、二代目、または三代目の社長であるあなたが、突然大学を卒業し、20代でその会社に入ったとすれば、すでにお話ししたように、あなたが赤ちゃんの頃から知っている、部長クラスの人、50代、60代の人は、赤ちゃんのあなたを想像するだけで、大人になったあなたの考え方に、簡単に賛同するということはむずかしくなるわけです。

したがって、二代目であるあなたは、いまいる社員の考え方を理解したうえで、経営理念をつくり、浸透させていくということが必要になるわけです。浸透させるということは、ある意味では、いまいる社員の考え方を、オセロのようにひっくり返し、黒を白にするとまではいかないまでも、考え方を変えていく必要が出てくるのです。それは非常にむずかしい事柄になるわけです。

経営理念の浸透に欠かせない3つの視点 (2)意志の強さあなた自身が持っているいまの経営理念が非常に強いものなのか、そうでないのかによって、経営理念の浸透のさせ方、および浸透の度合いというものは変わってきます。 

田の字の図をつくったとしましょう 左右に「創業社長」「それ以外」とあります。縦横に「経営理念をしっかり持つ」「まあまあ」とあります。つまり、ここに4つの事象があるわけです。

(i)創業社長であり、経営理念をしっかり持っている場合 
これは浸透のさせ方も簡単ですし、社長も非常に強い思いを持って浸透させていくことができます。

(ii)創業社長であり、経営理念がまあまあ
創業社長であるので、自分の思いで好きなように、いまの会社に考え方を伝えていくことはできます。しかし、自分自身の経営理念が非常に強いものではなく、「まあまあこれでいいかな。こんな感じような思いなんだよな」というレベルの人も多いと思います。

その場合には、浸透のさせ方も、浸透していく度合いも、経営理念をしっかり持っている場合とは違ってくるわけです。そして、自分自身の考えがまあまあであるならば、経営理念がさほど強い思いでないならば、無理に時間をとってやっていくというよりも、少しずつゆっくりと経営理念を浸透させていくということが大事になります。

(iii)創業社長以外(二代目、三代目、雇われ社長)で、経営理念をしっかり持っている
この場合には、自分の考え方を強く持っている分、気をつけなければならないところがあります。それが、いままで働いていた人の考え方であり、いままであった経営理念との違いです。

こんなことはないかもしれませんが、「先代の経営理念が右に行く」だったのに、「私の経営理念は左に行く」というようなまったく逆の考え方を自分が持っているとすれば、それは、社員も非常に混乱を起こしやすくなるわけです。そういった違いを自分自身が理解し、社員の気持ちを汲んでいくということも大事なこと項目になります。

(iv)創業社長以外で、経営理念がさほど強くない、まあまあ
この場合は、浸透のさせ方も一番むずかしいですし、浸透させていくのに非常に時間がかかっていく感じになります。たとえば、(i)の創業社長であり、経営理念をしっかり持っている人が1年かかるところを、3年から5年くらいかかるようなイメージだと思います。大きな理由は、自分自身の考えがさほど強くないこと、そして、いままでの社員がいること、そしてその人たちにも先代の社長の考えが染みついていて、それが変えづらいということが挙げられます。

経営理念の浸透に欠かせない3つの視点 (3)社員数社員数の違いによって、経営理念を浸透させるときのむずかしさ、または浸透度というのは当然違ってきます。たとえば、創業したばかりで、3人で会社をつくったというのであれば、自分以外の2人とは毎日のように話し、自分自身の考えも伝わっていくと思います。

しかし、会社が大きくなり、5人、10人となっていくと、互いのコミュニケーションの量も少なくなり、質も下がってくるわけです。社員が1人だったときに1人に対して10伝えられていたことが、社員が10人となれば、その10分の1となると思えばいいわけです。

まず一つ目の段階が、この10人までです。 そして次のステージが30人。こうなってくると、全体的に、だんだんと自分の考えていることが伝わらなくなってくる感覚を持っている社長も多いと思います。同じようにして50人になってくると、自分が思っていることとまったく違うようなことが、社員の間で話されているというような感じになってきます。

これがいわゆる「自分が思ったことが伝わらない」「ベクトルが合わない」というようなことです。 そして、その次のステージ、社員が100人までともなると、社長の考えが本当に全員まで伝わっているとはいいがたくなってきます。

それを回避し、社長の考えを全社員に伝えていく。そのための仕組みが経営理念をつくることであり、そしてこの経営理念を浸透させるというプロセスになってくるわけです。もちろん、社員が100人を超えれば、経営理念の浸透はさらにむずかしくなってくるわけです。

非言語の経営理念が「社風」をつくる

経営理念の中には、「言語化された経営理念」もあれば、「非言語の経営理念」もあります。この非言語の経営理念が「社風」をつくり上げるものとなるのです。どの会社でも創業当時は、言語化された経営理念はありません。しかし、「非言語の経営理念」はあるのです。

言葉になっていないが、社長の頭の中にだけある「経営理念」です。創業メンバーは身近で社長の一挙手一投足を見ながら、社長の非言語の経営理念を"察して"仕事をしていくのです。これが日本人の素晴らしいところです。

しかし、社員が増え、30人を超えるくらいになると問題が起こります。社員が社長の毎日の言動を見ることが少なくなるのです。「きょうは、1回も社長を見ていないな......」社員がそう思い始めたときが、黄色信号がつき始めたときといえるかもしれません。そうなると、社員は社長が何を考え、どんな行動をしているのかがわからなくなるのです。社員のベクトルが合わなくなり始めるのです。

そうはいっても、全社員の一つひとつの行動をいちいち指示するわけにはいきません。だからこそ、判断する基準や行動する基準が言葉として必要になってくるわけです。それが「言語化された経営理念」です。言わなくてもお互いに察してやっていく親族や夫婦のような「非言語の経営理念」から、「言語化された経営理念」にシフトする必要があるのです。つまり、「経営理念」をつくる必要があるということです。

売上10億円、社員30人が、「言語化された経営理念」をつくり始める一つの基準なのかもしれません。実際は、非言語の経営理念が「社風」をつくっているところも多いのです

夢に経営理念が出てくる

本当に英語をしゃべれる人というのは夢の中で英語の夢を見るともいいますが、あなたは経営理念を夢の中で見ることがあるでしょうか?夢に経営理念が出てくるようになれば最高です(でも、そうなりたくないなんて思ったりして......)。

たとえば、夢に経営理念が出てくるといったときに、「いや、そんなもの嫌だよ。夢にまで見るなんてね」と思う人もいるかもしれません。しかし一方で、「ああ、夢にまで出てきてうれしい」と思う人がいるのかもしれません。それはつまり、「経営理念に対してどう思っているのか?」ということとつながるのだと思います。つまり、経営理念とは究極的には人として正しいことです。

言っていることが筋が通っていることです。誰が見ても、聞いても、読んでも、書いても、そのとおりだと思えるようなことが経営理念であるべきなのです。そうでなければ、多くの人の賛同は得られません。みなが「そのとおりだ!」と思えなければなりません。逆にいえば、誰に話しても、誰から聞いても、「そのとおりだよね。なるほどそうだ!」と同意してもらえるような志の高いものであることが、経営理念を浸透させるということの中では大切になってくるわけです。

しかし、人間は弱くて、ずるくて、卑怯でもあります。そんな自分を奮い立たせ、そんな弱い自分に打ち勝つために経営理念というものはあります。そして、その経営理念をごく自然に自分の言葉として素直に話せるようになる。社長が、社員が毎日、経営理念を話している。そんなふうになると、経営理念は浸透したといえるのかもしれません。夢に経営理念が出てくる人が増えると経営理念はずいぶんと浸透しているはずです

経営理念を浸透させることは外国語を習得することと同じ

1日5分間、200日学ぶ程度では、英語も経営理念も話せるようにはならない
自分の知らない言語を習得するのと同じだと思うこと

経営理念とは言語なので、「自分の知らない言語を習得する」と一度思うことが大切です。たとえば、英語を話せない人が英語を学ぶのと同じといえます。もしあなたが英語をまったくしゃべれないのであれば、英語が話せるようになるためには1日5分間、200日だけ学んでもなかなかしゃべれるようにはなりません。経営理念は日本語で書いてあるのですが、いったんそれを外国語だと思い、外国語を習得するような気持でその言葉を話し、聞き、考えるということが大切になります。

本当に自らの血肉となるためには、経営理念という外国語があったとして、その経営理念という言語を身につけるためには、やはり年間でも数百時間、できたら1000時間ぐらいを使って、その言葉を覚える。それを3年間くらいやって、初めて自分のものになってくるのだと思います。

ここでいう経営理念とは、額に飾ってある1行の経営理念だけを指すのではなく、その経営理念をつくり上げる根幹となる考え方や、判断基準といえるのかもしれません。紙に書き出されてはいないけれども、社長が思っている「非言語の経営理念」も含むということです。

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