経営理念は必要か? 目次

株式会社ねぎしフードサービス 経営理念 インタビュー

坂上:まず会社名とお名前、事業内容、業績や会社の規模について伺わせてください。

根岸榮治社長(以後「根岸社長」と表記):
株式会社ねぎしフードサービス、根岸榮治です。
事業内容は牛タン専門店。それと共にお肉の定食をセット販売しております。平均単価は1,300円、2013年度での売上は54億円、経常利益で約3億円、利益率は6~7%になります。現在従業員は正社員が110名、アルバイトが890名程度で約1,000人です。

坂上:次に社長様のプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。ちなみに創業社長でいらっしゃいますよね。ゼロから作られたということで。

根岸社長:73歳、現在の会社は私がゼロから創業しております。福島県いわき市で時計屋を営む商店の長男として生まれ、商売を見ながら育ちました。高校までそこで育ち、大学から東京へ出て商学部で経済を学び、百貨店に就職しました。

坂上:実家が時計屋さんで経済を学ばれたということですが、時計や商売自体に興味はありましたか。他に学生時代に何か思い入れのあったことなどがあればお聞かせ下さい。

根岸社長:いえ普通の生徒で、特別なものは何もありませんでした。学部に関してもなんとなく選択したという感じで。大学の先生方の御紹介で東京の百貨店に勤め、呉服や自動車の販売を担当しました。8年ほど勤めた頃に、実家の時計屋の資金繰りがうまくいかず、倒産したため故郷に呼び戻され、生活のために融資を受けて実家を改装し、飲食店を起業しました。それが1970年のことです。当時30歳でした。

坂上:なぜ飲食だったんでしょうか。魚屋でも八百屋でも良かったと思いますが。

根岸社長:日銭を扱うので手っ取り早かったというのが一番ですが、きっかけはたまたま本屋で「月間食堂」という雑誌に興味を持ち、その中でセミナーの募集もあり、これはと思い東京でのセミナーに参加しました。それが年に数回ありまして、色々と勉強になりました。東京へ来て勉強し、来る度にそのセミナーだけではなく最低1泊、もしくは2泊して、当時東京で流行っている店を色々見て、地元へ戻っていたんです。

その縁で「月間食堂」の編集長からカレー専門店が今流行っているというアドバイスを頂きまして、それで単純にカレーやろうと思いました。当時一流の設計士の方も紹介してくれまして、そのカレー専門店で売上が爆発的に上がったんですよ。それでなんとか。

坂上:ちなみにお店の広さとか、単価とか年商ベースでいくとどのくらいでしたか。

根岸社長:今でいうと10億円くらいですかね。当時の月商で7~800万くらいか、それ以上だったと思います。25~6畳くらいのお店でした。カレーしかないのですが、それを徹底的に、とにかくカラフルで綺麗な店を作って営業しました。当時は生業店と家業店ばかりでチェーン店はなかったので、普通は月商200万とか4~500万くらいの時代でしたね。

坂上:ではカレー専門店から今の「ねぎし」さんに移ってくるのはどの辺りからですか。1981年で一つ線がある感じですが、その10年には何がありましたか。

根岸社長:1981年からは牛タンですね。それまで私自身が狩猟型経営で流行りものを追いかけていたのが、農耕型経営に変わっていきました。当時は仙台から水戸までの250kmの間に、ポツポツと20店舗位まで事業を拡大しましたが、業態の違うものを営業していた為に管理が出来なかった。人の管理と商品の磨き上げがどちらも出来ない。

オープン当初は一番良くても5~6年過ぎると競合店が出て、その時間がプラスに作用して磨き上がるならいいんですが、逆に劣化していった。人も商品もダメになっていった。そこで、これはいわゆる永続性にならない、どうしたらいいのかと。その時ちょうど雑誌か何かで、ランチェスターの簡単な専門書というか、そういう本を見まして、単純に三角商法とか、出店の仕方を集中するとか、そういうもので学びました。

その時点は仙台に事務所があって、仙台を中心に南の方に出店していました。東京で流行りの大皿料理とかを含めて、色々と東京で1号店という時にさっと持ってくる。それで東北で初めてという店をいっぱいやっていました。でもある時、全員いなくなるわけです。料理長から2番手3番手、それからホールのメンバー、そこに従うアルバイトが5~6人、そういう人たちが始める競合店にお客が付いて、そっくりそっちへ行っちゃうわけですよ。

そういう色々なきっかけがありましたが、基本的には100年企業に結びつくにはどうしたらいいかと考えました。それにはいわゆるこれからの商品を狙おうと、それで仙台ではそこそこ流行っていましたが、全国的にみるとまだこれからという商品である「牛タン」というものを知って、当時は完全に男性の酒のつまみだったものを、女性客も呼び込むため、厚い肉を薄くし、女性向けの店作りにするなど工夫しました。

一番の問題だったのはヘルシーな牛タンを食事化、定食化する為にどうするかということで、うちが初めてとろろを入れたんですね。それをセットで売ったわけです。それが1981年です。そういうコンセプトを組み立てて「ねぎし」が始まったんです。

坂上:それはご自身で全部考えられたんですか。

根岸社長:そうですね。もともと仙台には牛タンの元祖の店が別にあり、私は20件目位の中途参入でした。ですが、その為に女性向きのコンセプトにし、仙台ではなく一番市場性の熱い東京にしようと、そしてその中でもドミナント経営が出来る新宿を出店場所としたんです。

坂上:商品開発やコンセプト作りなど非常に戦略的ですが、経営理念はどこから出てきましたか。

根岸社長:もともと飲食のセミナーで東京へ行っていて、多い時は年に4~5回、最低でも3回。セミナーを日課の如く聞きに来て、それと共に勧められる本を読んで、そこからですね。

坂上:それから43年間社長業をされている。最初の10年があり、転換期の11年目、何か違う戦略があったと思いますが、現在のような経営理念を作ろうと思ったのはいつ頃ですか。

根岸社長:この前にも社訓というものはあり、半ば強制で合唱させていました。店舗が離れていて、何も共通するものないので。ただ、単に社訓を合唱させても結局一つも身にならない。まあ多少の枠というか牽制、拘束にはなりますが、実質は無かった。それを1995年くらいまでやって来たんですが、その時に中小企業家同友会に入会し、そこで経営指針書、年次計画を学びました。それと前後して経営理念というものをもう一度作り直して、現在のものにしたんです。

坂上:1995年が経営理念の大きなターニングポイントだという事ですね。それは誰か教えてくれる人がいたんですか、本とか人とか色々なきっかけがあった。

根岸社長:色々なセミナーで学びました。経営理念が非常に大切だという事、もう一つは、経営理念を具現化する仕組みが無いという事。普通に仕事をしながらの仕組みですね。ですので一つ一つ仕組みを作っていきました。

坂上:では1995年の時点では、今までの体験もありますが勉強し、自分の中に言葉が出来てきます。これを紙の形にするにはどの位の時間が掛かった感じですか。

根岸社長:色んなものをまとめて大分変わりましたが、この「ねぎし精神」が経営理念なんです。「ねぎしの思い」というのが経営目標なんですね。あとは「共にの誓い」ですね。こういうものを色々な集まりがある毎に、最初と最後に必ず合唱するんです。

要はこれらを具現化する為の仕組みがあるのかという事。だから一つ一つ仕組みを作り23年間ずっとやってきたわけです。それがある時からプラスになり、ある時期を過ぎると相乗的に掛け算になり形になっていった。人を成長させる道具、仕組みになったわけです。

坂上:では経営理念を作るきっかけは何でしたか。一番最初は社員が辞めるとかがあり、ご自身の中では経営計画書に出会い、戦略を作ると同時に理念に気が付いたという感じですか。

根岸社長:やはり同じ思い。例えば政治や宗教でも、強いのはみんな思いの同じ人達なんです、それが良い悪いでは無く組織としてブレない。それは起業以前から思ってました。うちの場合は、一度それが空中分解しました。それはトップそのものの問題だったと考えています。

それの真逆ではないですけど一つの理念のもとに戦略、戦術を明確にし、そして商品が明確になる。結局独自性のある商品を明確に出さないとお客さんが来ないと気がついた。まず食べ物屋ですから。誰もが分かる何屋っていうものが明確にあって、それがまず美味しくなきゃいけない。その中で今度はランチェスターですよね。とにかく自分の設定したところで断トツ№1にならないとお客さんは選んでくれない。

坂上:この1995年くらいだと従業員数は何人くらいですか、店舗数とか。

相良氏:当時で7店舗、従業員はバイトを含めて300人くらい、売り上げは9億円くらいですね。

坂上:その時に「思い」を作りこむ部分ですが、どなたがどのように作られましたか。

根岸社長:最初は私が作っていましたが、1991年から改革を開始してプロジェクトを始めました。当時のイトーヨーカドーを真似て、週一回は無理ですが月一回ならと全体会議を。うちは月一回全社員が集まり半年間実施してきた作業改善事例を6店舗づつ発表しています。みんな同一地域における同一業態ですから、発表した内容はいずれ我が事だと。だから興味を持ってみんなが聞くわけです。月一回で6店舗分、全部で33店舗ですので、年に2回は自分に順番が回ってくる。発表5分、質疑応答5分、1店舗10分で計60分。これがもう23年続いています。

坂上:なるほど。順番として経営理念の唱和があり、「経営の目的」、「ねぎしの思い」、「お客様は常に正しい」、その後で「ケーススタディー」の発表、「トラブルの報告」と。これが完全に会社全体の仕組みとして理念の共有化が図られている。サイクルに落とし込まれたと。

根岸社長:そこで今どの店で何に取り組んで、どういう事が起きているのかを情報共有します。次回に発表する店は、発表するまでの半年間、店長を中心にずっといい人間関係とチームワークがないとよい発表が出来ないわけです。それをやる過程に当人たちの人間的な成長、店長のリーダーシップ、他のメンバーの人間的な成長だけじゃなくて、いい人間関係が出来るわけですよ。それがチーム力アップになり、店舗力アップになるわけです。いわゆるねぎしの「5大商品」です。

坂上:「味、笑顔・元気、清潔、親切、楽しさ」。これを「5大商品」と呼ばれていますね。

根岸社長:これひとつひとつに仕組みがあるんですが、これが高いレベルで提供できるようになるとお客様は満足するわけです。ですから何か問題が起こったら解決するためにみんなで協力し、努力してその結果を発表します。その問題は改善されますよね。それだけじゃなくて、そのプロセスが人を成長させる。そのプロセスでいい人間関係が出来て、今度はお客さんの対応とか味の問題とかにすごくいい結果になって出てくるわけです。ですから店舗力アップになると。

坂上:でも一方でその話を聞くと、それは理念ではなくスキルじゃないか、もしくはQCではと思う人もいるかもしれません。そこが「ねぎしの精神」にある「思い8割、スキル2割」という言葉につながるんですか。

根岸社長:色々なスキルがあるんですが、それは全部思いがないといけないんですよ、思いがないと。では思いにはどうような共有徹底の仕組みがあるのかということになります。それは朝礼・夕礼とか会議等々で言うだけじゃなくて、その一端として「私と経営理念」を全社員や取引先などに年一回書いて提出してもらい、冊子にまとめて発行、配布しています。さらに全体会議の場で全員集まっている前でこれを読むんです。

坂上:そこに落とし込むことで浸透していくわけですね。これは最初から全体会議など、こういう風にやりたいと思ってらっしゃったんですか。他社事例も見てこれはいけると。

根岸社長:それは経営理念を共有徹底しないという思いがあり、全体会議は全員で理念を共有する場であり、確認する、価値を共有する、いろんな問題をみんなで共有する場にしたんです。なぜなら1店1店は数人なんですよ、社員は。だからみんなで集まって情報共有から始まり、理念共有、情報共有、みんなで確認し合うというか、認め合うという場が無いと一つの団体として成り立たないと。

あともう一つは、いちいち価値判断を求められても対応できないということです。絶えず24時間付きっきりなんてやりようがないわけです。では何で縛るんだと。

坂上:いかに企業統治するかという事ですよね。企業をちゃんとオペレーションするかというか。

根岸社長:理念を信じ込むと私たちは何のために仕事をしてるのかと、そして経営理念を明確に共有すると、社長とか上司に縛られるのではなくて経営理念を中心に動くんですよ、それぞれが価値判断しながら。それがいいわけですね。だから「私と経営理念」をやって、初めてそういう反応が返ってきた。迷う時は経営理念に戻るということが社員にも理解してもらえた。

坂上:「ねぎしの精神」を作るきっかけは、いつ、どのように社長の中から出てきたんですか。

根岸社長:色々なスーパーとか含めて飲食店とか、どういうのがいいのかなと参考に見ました。自分の思いにピタッと来ることが前提ですけど。基本いいとこ取りですね。ちょうど1994年の時に経営指針書策定のプロジェクトをやっていて、経営指針書の第一号を検討するときに経営理念を作らなくちゃいけない。でもそれは社長の仕事だと。

坂上:その時は50歳くらいですね。人間的にも色んな経験をされて、30歳の時とは同じものにならないと思いますが、最初はいいとこ取りしながら、練りこんでいった感じですか。またこの「私と経営理念」の発表は、最初からあったんですか、これはいつ頃からですか。

根岸社長:そうですね、あっちのやつを取り、こっちのやつを取りとして作りました。発表自体はそんなになってない。4~5年くらいになります。

坂上:ベースには経営理念があり、改善会議をずっとやりながら新しい取り組みとして追加でやって来たと。経営理念には懐疑的な経営者も多いのですが、それでは店を閉めて全員が来てしまうので生産性が下がらないのかという懸念もあると思いますがその点は。

根岸社長:会議は営業時間前の朝8時から10時の2時間で行っているので、その点は問題ないです。第二水曜日に固定で、近隣で会議室を借りて社員やバイト120名くらいでやっています。そこで発表以外にもクレンリネスコンテストや各種表彰など色々な事をやっています。

坂上:なるほど、社員の方にとってそんなに負荷が高いわけでもないんですね。商品とかエリア戦略も含めて、出店は基本的には23区中心とか決められているんですか。

根岸社長:東京と横浜だけですね。新宿から30分以内。それ以外は出さないです。

坂上:そうですか。あとはこの「思い8割、スキル2割」というのはどんな感じでしょうか。経営理念があり、ねぎしのミッションがあり、仕事の目的がある中で。

根岸社長:思い8割というのは、どんなにスキルを磨いても思いがあって初めて活きて来るということです。その思いを共有するというのが一番大切で、思いというのは経営理念とか、そういうものによってみんなが仕事をする、動かされるという事。誰かに言われてではなくて。

坂上:ビジョンの見える化というのも、この「ねぎしの富士山」という理想的な姿が書かれてありますが、この辺りは思いの部分とどういう風な位置付けになりますか。

根岸社長:見える化すると、非常に仕事が分かりやすく、やりやすい。全体像を見える化していくということが戦略・戦術も含めて、すごく大切なことだと思っています。その仕事を何のためにやっているのか、ということが分かる。これが経営理念の目的ですよね。

坂上:浸透させる上で大事なところなんですね。それが「ねぎしの思い」だと。

根岸社長:働く仲間の幸せというのは、「人の成長と100年企業」というのを定義付けています。働く仲間の幸せとは何ぞやというと、それは人の成長だと。それぞれの成長、そして企業が100年続くという事が私たちにとってすごく大切なことだと。この為の定義付けが必要で、次にその為の仕組みはどうかという事になるわけです。

例えばクレンリネスコンテストが年二回4月と10月の第三水曜日にあります。これだけは相対評価なんです。33店舗のうち何位かと。相対評価することで店舗間競争し、競争することで内部団結する。それぞれの店舗で店長中心にせざるを得ないわけです。店長は採用・面接・教育、時給アップと絶大な権限を持っている。そうすると何度教えても分からない店員は罵倒して叱りつける。それがお客さんに直接聞こえて苦情がきます。そういう店は絶えず従業員の定着率が悪くなり、そうすると「5大商品」のレベル、提供力が低くなるから、美味しくない、サービスの悪い物が出てくるわけですよ。

やはり定着率がいいっていうのは全てにおいていいものが出てくるわけですよ。そうすると、どうしたら定着率が良くなるのかという風になり、クレンリネスコンテストも定着率アップ、チーム力アップ、それから店舗力アップにつながります。そうすると店長はどうしても上から目線でやっていたんではダメなわけです。みんなに協力していただくという姿勢に変わらないと、使ってあげるじゃなくて協力してもらっているみたいな考えに店長が変わっていかないと下は気持ちよく付いて来ないですね。

絶えず上位の店舗は、店長がいなくても優勝するんです。片方は店長がいてもシャッキリしなくて下位なんです。ということは上位は全員が我が事に、下位は店長だけが我が事であとは他人事で協力しているんですよ。それがリーダーシップの違いなんですね。

坂上:ではお店の改善のための店長異動などはされますか。定期的に移動するとか。

根岸社長:そういう異動は基本的にないです。新たに出店すると誰かが昇格して自動的に変わっていくということはありますが。ただ5年以上経ったらなるべく替えるような努力はしています。今も年に2~3店舗の出店が絶えずありますから、その時に替わるだけですね。

坂上:その辺はどんなお考えなんですか。100年企業も含めて店舗を増やしていく感じですか。

根岸社長:年輪経営ですから年間10店舗20店舗出していくようなことはしません。うちは東京と横浜で最大でも60店以上は出さない、年商で約100億前後。それで十分と考えています。その代わり東京と横浜の中で圧倒的なトップのブランドを作って、そして肉の定食屋としてのインフラ、なくてはならない社会基盤になりたい。

「美味しい味づくりで楽しい街づくり」と謳っていますが、その地域に訪れる人も住んでいる人も、この地域に「ねぎし」があって良かったと思っていただける店でありたいと。その為には同一競争しても仕方がない、独自性のある品揃えと地域社会と深い関わりをもったメンバーで、その店、地域になくてはならない「ねぎし」でありたいと考えています。今後国では地方がどうのと言っていますが、でも結果的には一極集中、東京集中になると私は思っています。横浜を含めて、一都三県です。地方では成り立たないと。

坂上:そのとおり一極集中です。地方では100%無理ですね。それは間違いないです。

根岸社長:その中で、肉の定食屋として東京で圧倒的な№1ブランドを作って社会的なインフラになれば、これが「ねぎしのミッション」だという事で十分だと。そしてその中で一人一人がイキイキと自分の成長を図りながら仕事出来れば、人生を過ごせれば非常にいいなと。その時は誰かがやってくれるんじゃなくて、自らの人生は自ら作り出すと、だから自分の仕事も預かった店舗は自ら作ると。

「ねぎし」の経営指針書のPDCAは、プラン、ドゥー、"コミュニケーション"、アクションなんですよ、C=チェックじゃなくて。それを繰り返すわけですが、Pから参加というのがうちの原則なんです。自分でプランを立てて、実行して、改善していけということで。自分の店を預かったら店長は自分の人生、自分の仕事だから、自分で開拓し自分で作り出していくということなんですね。

坂上:経営者意識ですよね、まず。

根岸社長:売上も、客数も、あとどんな店にしたいかも、半年掛かりで店長らが作っていくわけです。第1回の全体会議が今月になりますが、第四木曜日に店長と本社スタッフ、四十数名以上が全員集まって、5~6人のグループを作ってソート分析から始まって会議を重ねています。そして来年の4月までに延べにして10回くらいですかね、店長らが集まって経営指針書を作り上げていきます。会議は4時間から丸1日の時もあります。

最後は4月に朝9時から夜の6時までやって、近所で打ち上げ会もやって、それを5月の第二月曜日に経営指針書発表会として外部の銀行や取引先を呼んで発表を行っています。そして全員の前で発表です。ただ売上とかじゃなく、店長プロジェクトが中心です。もう22年続いていますけど色んなチームがあって、色んな店の問題が起こるんですけれど、どこかのチームに当てはまるから、そのチームが全部解決するんです。

坂上:なるほど、クレンリネスもあれば、そういう店長プロジェクトというものがあると。

根岸社長:そういう過程、プロセスで人は成長しますから。店にいるとその店だけの話になりますが、プロジェクトに入ると会社全体の動き、ルール作りに入ることになる。つまり店長プロジェクトが「ねぎし」を全部動かしています。ですから会社の運営に対して、店長らが我が事になってやっているわけです。それが一つありますね。あと日々のオペレーションではエリアミーティングというものがありまして。第三木曜か金曜に4~5店舗、歩いて10分とか近所の店舗の店長が集まって、損益からクレーム対応から2時間くらい会議をやっています。

一般的に飲食店の店長には孤独感があります、すべてが自分に来ますから。ですがうちの場合は孤独感がない。何故ならエリアミーティングで一人が悩んでいる問題を出すと、後の3人、4人で解決する。孤独感で大変だというのであれば、一人の問題は他の店長らがみんなで解決してあげると。その過程でお互いに分かりあって裸になるわけですよ。

坂上:それも仕組みにされた訳ですね。話し合うという。店長から見ると月に何回くらいそういった会議体みたいなものがあるわけですか。

根岸社長:店長プロジェクトやその企画物もあるので、2時間くらいの会議を月4回です。

坂上:簡単に言うと週に1回はこうやってみんなで集まる機会があると。その仕組みを作り上げた事は大きいですね。孤独感が無いという意味でも。

根岸社長:問題が起こるとすべて自分で解決しなきゃならない、そんなの悩みますよね。人が辞めた、顧客トラブル、売り上げが予定通りいかない、材料が間に合わない、ロスが多いとか、みんな店長じゃないですか。これじゃやっていられないということになりますよね。

坂上:KPIというか、指標は何かありますか。売上や利益とか利益率とか顧客数とか、そういうものはどういう風にされているんですか。

相良氏:店長損益というのがありまして、それと毎週、毎週の売上の目標予算や客数予算。それに人時売上、1時間の1人当たりの売上という目標があります。あとはワークスケジュールで毎週数値を見ています。店長は毎日で、マネージャーが週に1回チェックしています。

坂上:顧客数に時間当たり単価。それは全てパソコン上で共有されている感じですね。では1年目から入って店長になるには何年目からとか決まりはありますか。

相良氏:100ステッププログラムというのがありまして。元々この店長プロジェクトの一番最初に人事評価制度、キャリアパスプランを作ったんです。こちらの表に100項目あって、入社するとトレーニーから始まって、これが3項目。これを月に1回、評価面談を受けながら進みます。個人ファイルで管理し、自分がどこまで行ったかというので時給も上がる仕組みになっています。

坂上:一般的には店長さんの労働時間や待遇は、業界平均と比較してどのくらいですか。

相良氏:店長は残業5~60時間を入れて実労で230時間、給与は600万円位です。まあよい方だと思います。

根岸社長:とりあえず店長になりますと31万円から始まって、42~43万円までいきます。店長のクラスも4段階に分かれていまして、ジュニア、ミドル、シニア、アドバンスドシニアマネージャーという4段階になっています。その1段階の中に5つの項目があるんですね。

坂上:5×4で20ステップくらいあるわけですね。店長で600万円位と。その後はエリアマネージャーになるとかそういうのがあるわけですか。なるほど。あと個人の価値観と経営理念という事もお聞きしているんですが。個人にもそれぞれいろんな考え方があって、経営理念と合う合わないがありますが、そのあたりは会社の中ではどんな風にされていますか、何か仕組みがあったりするんですか。

相良氏:割と対話を繰り返しますね、会議体やセルフアセスメントの場で。セルフアセスメントでは80項目のカテゴリーを作り、それを自己評価します。その良い点、悪い点をエリアミーティングなどで必ず対話しています。そこにはマネージャー以上のメンバーが、必ず一人は入ってコミュニケーションを図ります。そこでそれは来年の経営課題にしようとか、対話を通して課題を具体化しています。

坂上:最後に教えて頂きたいことがいくつかありまして。まず一つは経営理念の完成度や浸透度に点数をつけるとすると100点満点で何点でしょうか。今の社長のお考えで結構ですので。

根岸社長:経営理念はこれでいきたいですね、ずっと。だから完成度は100点に近い、と思って信じています。浸透度は合格点だとは思います。まあそうですね、80点くらいですかね。

坂上:もう1点ありまして、実は私が今ランチェスターについて一番強く言っている「論語とソロバン」という事なんですが、差別化・集中・№1というのがランチェスターの本質であると言い続けていますが、やはり理念、思いですね、社長の言葉ですけど思いがなければ実現していかないと、いくらこれを言ってもうまくいかない会社もあるんですよ。でも御社の場合は今54億円くらいの売り上げの中で、戦略と思いを持って非常にいい形になっています。社長の中でまず順番としては売り上げを立てる、事業、戦略が先にあったと思いますが、例えばここに100人の経営者がいて、戦略と理念について聞くと普通戦略が9で理念1みたいに思っている人が多い。この辺りについてはどうでしょうか。

根岸社長:トップの最大の仕事は事業選択の実行なんです。必ずやれば勝つという事業領域をどう見つけるか、出し物と市場ですね。まず食べて生きていかなきゃならないですから。自分にとって良い事業領域をどう見つけるかというのが第一ですね。今度はそれを活かすため、活かすだけじゃなくて継続、永続させる、100年企業は経営理念、思いですよね。ただ、どんなに優秀な素晴らしい思いがあっても、いまさら自分の事業領域じゃないに突然入るって言ってもとてもじゃないけど出来ないですよね。

第二に経営理念ですよ。100年企業が続く為、永続する為には何が必要かと。それが経営理念、思いなんですよ。どっちも人が絡みますから、その人を活かすのはやはり思いです。

坂上:最初の10年で色々手を広げて、経済的なところでも大変な思いがあって、やっぱりちゃんと食べなきゃダメなんだと、勝たなきゃダメなんだと。そこにやりながらさらに上に行くには経営理念が非常に大事だったとこんな感じで合ってますかね。いや、本当にありがとうございます。大変勉強になりました。今、離職率とかどんな感じですか。業界平均と比べて相当低いと思うんですけど。

根岸社長:業界平均では7割くらいですね。社員もアルバイトを入れて全部で。普通の所では良く一回転するっていいます。ですが平均すると7割とモノの本には書いてありますね。うちはそれが3割。社員については10%くらい。ですから、定着率はいいですね。あと親切賞っていうアンケートハガキがありまして。これが月に1200枚くらい来るんですよ、毎月33店舗から持ってくる。そしてここに本日輝いている人というものをお客様に書いてもらっています。

これに店員310名が書かれたんですよ。そしてみんなが素晴らしいと書かれたのが21店舗ありまして、書かれた人や店には食事券1000円を出すんですよ、みんな。書いて頂いたお客様にも毎月120名くらい500円券をプレゼントしています。

坂上:じゃあ、会社の方が30万円くらい払っているわけですね。それはいつ頃から。

相良氏:2002~3年くらいですね。

坂上:店長同士で飲みに行ったりというのは、年1回はあるとお聞きしましたが、それ以外でもあるんですか。あと店長のお休みや休日出勤などは。

相良氏:店長は週休2日で基本休日出勤はなし。曜日はバイトのシフト優先なので各自異なります。飲み会はほかにも、新店オープンの時には決起集会みたいなものをチームでやったりとか。そうですね、あとお誕生日会だったり、懇親会とか。

坂上:バイトの採用は今大変ですよね。だから人が辞めちゃう会社ほどさらに大変になってきますよね。求人広告費用とか。

相良氏:うちはヘルプ制度というのがあり、他の店舗にヘルプに行ってスタンプが5回集まると1000円の商品券を出していて、そういうものを積極的にやってくれています。何かあればエリアマネージャーが割と近いので、ぱっと駆けつける。

坂上:とにかく動くって駄目なんです。ほんとランチェスター戦争理論なので、むやみに動くことが本当に自滅させるんで。いま僕はそれを世の中に伝えているんですが、でもやっぱり理念も大事だと。やっぱり「論語とソロバン」で戦略だけだとやっぱりダメなんです。でも食べていかないと次には入れないので、仕組みをきちっと作って、続けていこうとすると今度は離反する人が出てくる。社長が経験されているように、ちょっと遠い距離にいてコミュニケーションないと不信感で辞めてしまって、誰もいなくなるみたいに。

でも根岸社長は素直でオープンな、ピュアなというか、そういう気持ちで乗り越えて学ぼうという意欲を相当持たれていたんじゃなかろうかなと思います。いろんな勉強会に出てこれだ、これだと。でもそうなる時期がすごく大事だと僕は思っていて。本人がこれでいいんだと頭の中がその理念だけになる。簡単に言うと思いこみなんです。間違っているかもしれない、でも自分で自分を洗脳するというか、これでいいんだと、みんなが反応してくれてこれでいいんだって、結局そういう事ですよね。

外から誰が何を言っても関係ない、俺たちはこれでやっていくんだと、食べていられるし、とこれが大事なところなんですよ。この実利、コインの裏表、車の両輪と僕は言っているんですが、結局これをもっていないと全然ダメなんですね。どこかで崩れてしまう。

相良氏:経営理念については2008年の時に店長らがずっと検討して、あと社員研修でもずっとやったんですね、みんなに意見出してもらって。それからすごい浸透したんです。

坂上:あぁ、じゃあそれがポイントの1個ですね。最初のコアは社長が100%、ステージが上がって9:1とかになって、8:2とか、で社員巻き込んでみんなでやっていくことで浸透した、とこんなイメージですね。素晴らしいですね。分かりました、本日はどうもありがとうございました。

ねぎし精神

経営理念
お客さまにおいしさを
お客さまにまごころを
ねぎしはお客さまのためにある
そして
お客さまの喜びを自分の喜びとして
親切と奉仕に努める

ねぎしの思い
「働く仲間の幸せ」
(人の成長・100年企業)
「日本のとろろ文化」に貢献する
おいしい味づくりで楽しい街づくり

共にの誓い

●共に学び、共に築き、共に進もう。そして、共に幸せになろう。

一、ねぎしは価値ある人生のために仕事を通して世の中のお役に立ち、
その仕事を通して自分を磨き高め、共に成長していくことのできる
職場環境を育みます。

一、エンパワーメント(=自ら考え行動できる力)を発揮し、
共に楽しく成長できる自由闊達な風土をつくります。

経営の目的(ねぎしの思い)

働く仲間の幸せ
(人の成長・100年企業)

「働く仲間の幸せ」と「顧客満足」を通して、
地域・社会、ビジネスパートナーから高い評価を受け、
永続的に業績も抜群に優れている
100年企業を目指します。

日本のとろろ文化に貢献する
日本古来の食文化である「とろろ」と「麦めし」のおいしさを広め、
伝承していくことを通して、
「日本のとろろ文化」と日本の農業に貢献します。

おいしい味づくりで楽しい街づくり

『牛たん・とろろ・麦めしなら「ねぎし!」』と思って頂けるねぎしの独自性のある健康的な商品を提供する事で、『地域や街にねぎしがあって良かった』と思われる店でありたい。
ひいては、楽しい街づくりにつながり、地域社会と共生します。

株式会社B 経営理念事例

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

経営理念
より良い働きを通じて、全従業員の物心両面の幸せを創造し、社会へ貢献しよう

株式会社BのWです。
事業内容は、広告代理店様へのサインディスプレイの販売です。サインディスプレイとは、紙を中心にした販売促進のツールで、例えば大型ポスターや、厚紙も含めたPOPなどがそれに当たります。前年度の売上が15億6千万円、経常利益が3億800万円。利益率が20%弱になります。現在従業員は82名です。成長率は、過去13年は平均して毎年15%ほどになります。

坂上:次に社長様のプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

W社長:64歳、35歳で今の会社を設立して約30年になります。大阪出身です。

坂上:毎年15%とは驚くほどの伸びですが、どのように取り組まれているのですか?

W社長:売上を伸ばすためのやり方として、私は絵図面を書くところから始めます。そして、絵図面に寸法、つまり数字を入れたものが事業計画になります。

坂上:絵図面とは、どのように描いていくのですか。

W社長:成長発展の3つの要素、新たな市場、新たな商品、新たなロジックを描いていくことです。最初に自分の商売を知り尽くす。自分の商売の周りや、延長線上で、儲かりそうな部分を考え、準備や設備投資をして、営業をしかけ、売上を増やしていくと。

坂上:新たな事業に取り組まない企業は、大きな伸びは期待できないと?

W社長:市場環境が良くて一時的に伸びている企業もありますが、それに甘えている企業は、不景気になったとたんに売上はガックリと落ちます。伸びている原因が自社ではなく社外ですから当然です。だから、社長さん同士で景気の話しをしていると、この人達は景気で商売しているんだなと思いますね。うちの会社は景気なんかどうだっていいんです。リーマンショックの時だって、売上が伸びましたから。景気で商売をするのと、時流を読むということは全く違います。時流適合という原則の中で、儲かる事業分野に進出し、儲からない事業分野からは撤退する。大切なことです。

坂上:絵図面を考えていく上で、指針となるものはありますか?

W社長:絵図面を描く際のポイントの1つは、根底に事業戦略、経営戦略をしっかりと見据えていくこと。そして自分の商売哲学を保持する。例えば汗して働く商売が好きだ、とか。そこを踏み外さないような形で、成長発展の手を打っていかなければ、企業内で矛盾が生じ、伸びることができません。そしてもう1つは、伸びていない会社の悪い所を学ぶこと。伸びている企業からの学びも必要ですが、良い企業の事例はなかなか見せてもらえませんし、伸びていない企業の事例は自分にも憶えがありますからね。

坂上:社長から見て、伸びる会社と伸びない会社の違いは何でしょうか?

W社長:伸びない要因の一つは先ほど述べた市場環境。そしてもう一つが、頑張っているかどうか。とはいっても、頑張っていない会社はないんですよ。儲けたい意欲がありますからね。

坂上:同じ頑張りでも、何が違うのでしょうか?

W社長:そこで絡んでくるのが経営理念でしょうね。理念の浸透は、短期間で直接的に判断するのは難しいので、他社を見る際には、経営理念に支えられている社風を参考にしています。社風が良くて伸びている会社を支えているのが経営理念だと思うんですよ。一方、社風が悪いのに、伸びている会社もゼロではありません。

坂上:ご自身が創業経営者ということですが、経営理念をつくられてからどのくらいになりますか?

W社長:定めたのは13年前ですが、最初は僕も、尊敬する経営者が作った経営理念の真似事でした。深く考えずに、無かったらダメだろうなという位のもの。その尊敬する経営者を手本に、経営について学び始めたばかり。その当時までは無目的に働いていただけで、自分では全く思いつかなかったんですよ。ただただお金が欲しかっただけ。だから会社が伸びなかったんでしょうね。

坂上:経営理念をつくる期間はどれくらいでしたか?

W社長:10年以上かかっています。昔は言葉自体はあっても、哲学が背景にないから、社員に対しても鞭で打つような叱咤激励を行っていました。ともかく「やれ」と言うだけですから、社員がその気になるわけはありませんよね。

坂上:理念をつくるにあたって苦労はありましたか?

W社長:若いころはいろいろな手段で、様々な方から知識をいただきました。先輩社長たちからも、多くの影響を受けています。最初は見よう見まねで、完璧なものに3年かかるよりも、1日でまず形を整えようと。仏さんに魂入れるのは後でもいいと。もし、自社には違うと思ったら、直していったらいいんです。自分で一から考えたら一生かかりますよ。良いなと思ったら素直に習えばいいし、朝令暮改でいいんですよ。いいと思ったらすぐやることが大切だと思います。

坂上:その後、修正を入れていったんですか?

W社長:経営理念自体は、文言上では、一つも変わっていません。上の例えでいうと、魂が入っていったんですよ。言うは易く行うは難しですから。

坂上:理念を作る中で気づかれたことはありますか?

W社長:お互いに対する思いやりというと、少し軽く聞こえるかもしれませんが、私は会社のために頑張ります、会社は社員皆さんの生活、絶対守り抜くぞと。社長は社員のことを考えて、社員は会社、社長のためを思って働く。お互いが快適に、より良く仕事ができるように協力する。経営理念を、平たく置き換えたら、こういうことではないでしょうか。これは、家庭もそうだし、男と女もそうだし、そして会社にも当てはまると思います。

坂上:分かりやすく、納得させられる表現ですね。

W社長:こういうベースがあって初めて、事業戦略が何だという議論が始まる。根底に、会社は社員の生活を良くするためにあるという信頼ですね。経営理念、信頼感というベースの上に、社長が市場戦略とか営業戦略を乗せ、社員が日々戦術にまで高めてくれる。

坂上:経営理念をつくる上での工夫、苦労は?

W社長:理念を作った当時は、ただ売上を伸ばさなければという目先のことしか考えていませんでした。どこの企業でも、動機はさておき、売上伸ばしたくない社長なんていません。けれど、社員は、そうではありません。俺さえよければ、全社的なんてどうでもいいと考える社員もいます。もっといえば、社内の人間を出し抜いてでも、自分の数字を増やせばいいという思考だってあります。

坂上:そういった社員に対して、どういったアプローチを行うのですか?

W社長:方向性と動機付けをきちんと示してあげることです。何で売上を伸ばさなきゃいけないのか、なんで利益を増やさなきゃいけないのかと。まずは、身近な動機付けから示していきます。社長の自己満足ではなく、年収600万円にしよう。だから、18億円の売り上げにしようと。

坂上:直接的な、社員自身の利益を指し示すんですね?

W社長:まずは、年収という、最も短期的な動機付け。そして、それを理解してくれるようになったら、利益がたまればたまるほど、会社は倒産しにくくなる。中長期的にも、社員のためだと。決して、社長が決算書良くしたいとか、ベンツ買いたいとかじゃないんです。社員の10年後の未来を左右するのはこの利益にかかっていると、自信を持って言えます。自分は、100%そう確信しているし、事実そうだから。自信を持った言葉には真実味と説得力が宿る。だから、社員も信じてくれるんです。

坂上:まず、自分のためを出発点にしつつ、利己ではなく利他というか、同じ船に乗っているという意識で、会社自身の利益を考えなければと、自覚を持たせるんですね。このように、経営理念が深まっていった一番のきっかけは何だったんでしょうか?

W社長:何か大きな出来事というよりは、改善の積み重ねでした。人間って同じことしたら面白くないじゃないですか。経営理念、経営理念と、毎日お題目のように唱えていましたから。会社の業績と社員の物心両面の幸福は通じるものがあるんだと、自然と理解するに至って。言っている以上、実行もしなければいけませんしね。

坂上:経営理念は必要だと思いますか?

W社長:中小企業は足りないもの尽くしです。足りないということを、社員がどうとらえ、何を望むのか。足りないことを不満に思うのか、足りないから頑張ろうとプラスのエネルギーに変えてくれるか、そこで、経営理念が業績に差を生むんです。例えば、多くの社員は、立派な休憩室を作るよりは、ボーナスが増える方が嬉しいんじゃないかと思います。優先順位をつけて、不足に耐える部分と必要な部分をどう考えるのか。まずは自分の損得からでいいので、足りないことを全て不満だと思わない状態になってこそ、社員と戦略に関する話しができるようになりますよね。

坂上:全てを満たすことは不可能だけど、社員の心を上に向けて、耐える力、足りない部分を頑張ろうというエネルギーに変えられる状況を、まず社長が作るということですか?

W社長:これは足りないけれど会社はこうはしてくれた。社長も、これはできないけれど、この部分はやってあげようとか。先ほどの思いやりや与えあうという部分ですね。

坂上:経営理念と業績の関係は?

W社長:経営理念を作るのは難しいことではないけれど、それを浸透させる、社風を変えるのは時間がかかります。業績が上がる方が答えが出るのは早いですから。まず成果を出して業績を上げる。それによって社員に健全な還元をすることで、社員も上を向くことができる。それをチャンスとして、社風を上げていくことを心がけました。

坂上:業績を上げていくことが、経営理念の上でも、欠かせないんですね?

W社長:業績を伸ばすためには、常に新規分野も模索します。的確な商品を開発して、的確な営業戦略でお客さんにプロモーションする。時系列で何月中にここまですると、カレンダー付きの計画を作る。そして常に、経営戦略や事業戦略の上で、新しい事業を進めていくけれど、これは実は社風を良くするための活動でもあるから、心をベースに進めていかなければいけない。

坂上:業績と経営理念、両方への対策が相乗効果を生み、両方を向上させると?

W社長:私は経営理念ばかりに重点を置く改革はあまり感心しません。業績をしっかりと見据えなければならないと思います。中小企業というのは、人も、資材も、機械も、全てが足りない中で、きちんとした業績を上げなければいけないのですから、気が抜けません。

坂上:業績と理念、つまり業績と幸福の関係性ですね?

W社長:精神的な側面に加えて、成功体験がなかったら絶対にダメです。実績を出していって初めて、机上の空論でなく言葉が重みを帯びてくる。経営理念は立派だけれど、業績が下がっていったら、説得力も何もないですよね。

坂上:灯りが見えるというか、光が見えていつつ、どんどん目的地にも近付いていると?

W社長:経営理念を証明するためにも、業績を上げなければいけません。業績が上がれば、経営理念もますます深めて浸透させなければとなってきます。経営理念は、社員の幸せに焦点を置いていますが、売上とか利益とか、商売上の数字が全て経営理念に直結しているんです。もちろん社長の生き方も、経営理念、業績と矛盾していてはだめです。

坂上:先ほど、理念と業績、両方からのアプローチというお話がありましたが、業績に関する社員の取り組みは、どう行っているんですか?

W社長:経営理念に加えて、モノ作りの生産性とか効率性などを考えていかなければいけません。ストラテジー(戦略)と、それを進めるための細かい戦術、全て共通しているのは、お客様の方を向いて決めていかなければいけないということです。自社ではなく、お客様の都合に沿って会社を変えて行くのです。

坂上:お客様に合わせて自社を変えていくんですね。具体的にはどのような方法で行っていますか?

W社長:顧客満足を上げ自社の利益も達成するために、大切なことはPDCA。例えば、係長各自が管理する内容がマチマチにならないように、標準化を行い、全て数字で把握する。どういう数字を拾ってくるかを標準化するために、会議のフォーマットも決めました。把握の方法を明確にすることで、月別、人別で、売上予算があって、最終利益がいくらかと、精緻に想像がつくようにしています。

坂上:責任の違いなんですね?

W社長:ピッチャーとキャッチャーは、どっちが偉いか、ではなくて、どちらもいないと野球ができません。これは社長も同じで、社長が偉いわけではない。社長は社長の仕事をしたらいいというだけで、人間の値打ちは同じ。

坂上:経営理念を浸透させる工夫、苦労を具体的に言うと?

W社長:業績が悪い時にあまり経営理念を語ってもそれは絵空事です。経営理念や社風にばかり取り組んでいても、業績に反映するのは時間かかるんですよ。短期的には、業績改善のテコ入れ、業績向上。そして、中長期を見据えての経営理念、この両輪です。ただし、鶏と卵ではないですが、経営理念も浸透させずに、業績改善にだけ取り組んでいるのもこれはこれでダメです。一時的に伸びたとしても、永続させることはできません。

坂上:永続的な成長を支えるもの、それが経営理念ですか?

W社長:例えば景気が良い時、よその会社も自社も15%伸びているとします。この伸びは市場の伸びであって自社の伸びではない。けれど、業績が良く成果が上がっているときには、社員も上を向くんです。だからこのチャンスに、うちは20%の伸びを目指す。すると市場環境が±ゼロでも5%伸ばせるようになるんですね。社員が上を向いたことによる5%、これが、社員の業務遂行の意欲と精度や、PDCA(plan-do-check-action)が機能しているか、つまり、経営理念に支えられた社風だと思っています。

坂上:経営理念に支えられた社風とは、具体的には、どういったことですか?

W社長:社員が一人一人使命感を持って密度の高い仕事をしていること。よその会社は営業で1日3件訪問しているのを、うちの会社は6件回ってくる。これをやるには経営理念が浸透し社風が良くなり、社員が自発的に取り組んでくれることが必要なんです。けれど、長期的な目線で見ても、社員への経営理念の浸透だけではダメだと思います。事業成長、発展のロジック、これは社員側の事情ではなく社長側の役割で、社員任せにはできません。社長の役割は社員とは違います。決断は社風では行えませんから。

坂上:社長と社員の役割分担ですか?

W社長:社長の役割は、経営理念をちゃんと作って、それに基づいて自社の方向性、働く目的をしっかり指し示すことです。これは、日本の終身雇用制とも、密接な関係があります。今、30歳の社員が10年後、40歳になった時に会社はどうなっているか。

坂上:社員のライフプランも見据えてということですか?

W社長:10年後、子供がいて中学校に行っているとします。年収500万円じゃ、とってもやっていけません。700万円欲しいと。それなら、10年後に、年収700万円取れる会社にしようと。

坂上:社員の人生について、考えていくんですね?

W社長:社員の人生について考えるのは、会社の存在について考えることですから。終身雇用制で、社員に一生を送ってもらうために会社は存在しているんだと。これが、経営理念の考え方だと思うんですよね。

坂上:理念を浸透させる時の苦労はありますか?

W社長:経営理念を社長が、どの程度深堀りして保有しているかということ。どの程度、日々社員に言い続けているかということ。日々取り上げていないと、当然のことですが覚えていられません。経営理念ができたら即実行、全て身に着くというのは理想論で、最初は正直、理念の意味もしっかりとは認識できていません。けれど日々唱え、日々実行しようと努めることで、段々言葉の意味が、真実味を帯びて自分の日々の生活に迫ってきます。

坂上:経営理念実行の方法として、社員には、どのような態度で、接しているのですか?

W社長:例えばですが、怒る時でも損得で怒らないようにしています。損得で怒るというのは、「このロス考えてみろ」という怒り方。私が怒る時は、「そんなことして、10年後、どうするんだ」と社員に問いかけます。損得で怒るような人間は、自分の根底に、経営理念が身についていない。そんな人間が、いくら経営理念を語ったってダメですよ。

坂上:経営理念が身に付いた社長とは、どのような方を指すんですか?

W社長:まず、社長は全ての責任を持ち、方向性を決めるということ。それが社長の大事な仕事です。社員がビジョンを述べたり、企業の方向性をかじ取りするのはちょっと違う。社長と社員の役割の区別、これが分かってないからギクシャクするんですよ。オーケストラは、各楽器でビジョンを持たず、全体構成は指揮者にゆだねなくては。

坂上:トップダウンが重要ということですか?

W社長:大きな決断についてはそうです。ただし、業績が伸びたら、必ず社員にリターンされる。その積み重ねが社長と社員を変えていく。僕はこれだと思っています。

坂上:中小企業では、社長の独断による決定も重要なんですね?

W社長:社員を信じて決断する。邁進する。勢い、火の玉のようなエネルギーを失わずに、です。勢いを保つためには迅速な判断が求められるし、時間の少ない判断は誤る場合もある。その場合にも、社長が一人で決めていれば、すばやく修正の判断を下すことができます。

坂上:勢い、エネルギーですか?

W社長:会社が伸びようと思ったら、人の倍働かなければなりません。とは言っても、無駄に深夜まで残っていればいいわけではない。うちは、業績が伸びつつも、半年かかって、一日2時間早く帰れるような体制に持っていきました。

坂上:社員の方は、どれくらい、勉強をされるのですか?

W社長:会社入って半年目に、必ずドラッカーの勉強会をします。レンタカーでドライブしながら、行き3時間、帰り3時間。旅館に着いたら1泊2日で別の勉強会をします。

坂上:そういった勉強会は、年に何回位ですか?

W社長:全社研修は年に2回、2月と5月です。その他に、入って半年以内に入社時の合宿研修。新卒だけでなく中途採用も同様です。会社入って、3~4年目の人は北海道研修。北海道研修というのは、ドライブしながら車の中で、コンサルタント・中村文昭さんの講和を聞き続ける。ガソリンスタンドに入ったら、全員降りて皆で窓を拭くといった感じです。

坂上:入社して1年くらいたつと、合計での勉強時間数というのはどれくらいでしょうか?

W社長:1年目ですと、新入社員研修が1回、全社研修が2回といった感じでしょうか。加えて、毎朝5~10分位、経営理念を唱和しています。毎朝読んでいくことで、年月が経つと社内で標準語がいっぱいできている。朝の唱和では、経営理念に加えて定められた78か条からも1個ずつ読んでいきます。

坂上:個人の価値観と経営理念の関係は?

W社長:良くないパターンというのは、社長と社員の関係性が、奪い合うというか対立している。または社員間でも対立している。そうではなく、奪い合う愛が、与え合う愛となっていくようにしていかなければなりません。言葉で「与え合う愛」と言って誰も反論しませんが、無意識な時には逆の事をしている。それを無意識な時に自然に思考して「与え合う」というように成長させる。会社というのは、「社長が社員を幸せにする」そして、社員もまたそれに応える。同じ船に乗っているという意識がないのに、経営理念の文字並べたって、無意味ですから。

坂上:相手から求めることばかりではダメだと?

W社長:与え合うことがうまくいっている集団というのは、すごく温かいものです。会社に来たら、社長は社員の靴をそろえて、社員は自発的に社長の机を拭いて。例えばうちは、職責の重い人ほど昼飯は後回しにしています。こういう風に考えていったら、経営理念は勝手にできてきますし、経営理念を作る前に、まずは生き方、心を変えろと。

坂上:経営理念は生き方ができてから、ですか?

W社長:経営理念は絵空事では意味がないんです。それにふさわしい心構えがないと意味はありません。理念は社風だけでなく、目つき、言葉遣い、立ち居振る舞い全てに出ますからね。そして、経営理念を最初に体現しなければならないのは社長です。まず社長が骨の髄まで、経営理念に則した社長にならないといけませんね。

株式会社ネクスト 経営理念 インタビュー

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

鈴木氏:株式会社ネクスト・広報担当の鈴木です。
事業内容は、不動産情報サービス事業『HOME'S』を主軸として、不動産会社向け業務支援サービス、金融情報サイトなど幅広く業務を展開しております。現在創業16年目になります。

経営理念
常に革進することで、より多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る


坂上:それぞれお仕事、入社年次など簡単に教えてください。

長沢氏:ビジョンプロジェクトのリーダーを務めております、長沢と申します。新卒で入社して7年目で、担当業務は『HOME'S』の技術的なインフラの構築、運用です。

鈴木氏:私は入社が2003年の5月で、12年目です。今は広報として主にネクストという会社について知っていただくこと、より良く理解していただくことを目指して、情報発信や取材対応などをしております。

田中氏:入社は2008年の11月で、ちょうど丸6年たったところです。現在の業務としてはコーポレートブランディングを担当しています。また、長沢と同じくビジョンプロジェクトのサブリーダーを務めています。

坂上:前の会社とネクストさんの比較みたいなものをお聞きしたいと思うのですが?

田中氏:ネクストを含めると今4社目になりまして、実はネクストが最長勤続年数になります。新卒で入った会社はインテリア、スペースプランニングの会社で、規模としては東京、大阪あわせて200名ぐらいの従業員がいました。理念はありましたが理念を意識するというよりは、とにかくワンマン社長といった印象でした。

2社目は、女性向けの情報サイトを運営している小規模な事務所です。これと定めた理念はありませんでしたが、働く女性がもっと輝くための情報提供や、研修の運営をしていたので、常に経営理念に匹敵するような「高い志」を啓蒙されており、やりがいは感じていました。ただ、組織として一体感があるかというとそれは感じられず、離職率も高くて1年続けば良い方というような感じの会社でした。

3社目は不動産のアセットマネジメント系の会社です。入社時の社員数は200名ぐらいでしたが、2年半で1,000名近くまで急成長した後、最終的にはリーマンショックのあおりをうけて潰れてしまいました。この会社の理念は「日本一の大家さんになる」を掲げていましたが、それが本当に浸透していたかというと、そういう感じではありませんでした。どちらかというと成果主義の風土が強く、理念のためというよりは自分のために働いている人が多い印象がありました。組織としての一体感は弱く、いざという時に力が出なかった。だからこそ、今はもう存在していない理由につながっているのではないかと考えています。

坂上:仮に結婚してネクストを辞めちゃったとします。そしたら今の時点でどう表現しますか?

田中氏:とにかくゴール、自分たちが実現したい世界感への執着心がすごく強い会社だと思っています。そして、会社の目指す世界観が組織全体に非常に高いレベルで共有されているのですが、最終ゴールへのアプローチ方法は、統制されてはおらず、みんなで都度考えていこうとする雰囲気があり、自由度が高い。私の表現で言えば、新しい会社、面白い会社だと思います。

坂上:御社のビジョンプロジェクトについてご説明いただけますか?

長沢氏:ビジョンプロジェクトとは2年半前に有志が起ち上げたものです。弊社にはその少し前から開始した海外選抜研修という制度があり、トップセールス賞やベストマネージャー賞などの受賞者を中心とした次世代リーダー候補の社員が選ばれて海外に行って見聞を広めるという取り組みの中で、アメリカのザッポスという会社に行ったんです。

ザッポスはすごくビジョナリーで有名な会社で、そこに行って刺激を受けた社員が、弊社でもやっぱりビジョンはあるものの、社員一人一人がそのビジョンと自分の業務のつながりをしっかり考えて取り組めている状態にあるとは言い切れない部分があったので、もっとそこを強めていこうと立ち上げたプロジェクトなんです。

最初に海外研修に行ったメンバーは6人いて、自分はそこに含まれて無かったんですが、一緒にビジョンプロジェクトを進めていくメンバーの募集があった時に自分と田中はそこに手を挙げて、有志のメンバーとして参加することになりました。当初2年間は一メンバーとして参加し、3年目の今年からリーダーとしてプロジェクトを推進しています。

坂上:全員で何名いらっしゃるんですか?

長沢氏:今は、全員で40名ですね。

坂上:40人いらっしゃるんですね。全社で何人とおっしゃってましたっけ?

鈴木氏:海外小会社を含めたグループ全体では約700名程ですが、ネクスト本社では約500名くらいですね。

坂上:500分の40ぐらい?

長沢氏:そこに役員もプラスされるので、それも含めるとネクスト本社の一割弱です。

坂上:具体的な活動としては?

長沢氏:ビジョンを浸透させるには、まずいろんな層に対してアプローチする施策を実施しなくてはいけないですし、浸透施策を実施した後、それが有効に機能したかをチェックして、それをまた新たな施策にフィードバックして、というプロセスが必要なので、それを作るところから始まりました。それが1年目の活動です。1年目の活動でその枠組みができたんですね。

それで2年目はもうちょっと浸透の部分を強めていこうという方針の下、メンバーレイヤーに浸透させる施策と、グループ長とかユニット長とかミドル層に浸透する施策に分けて、それぞれ実施していきました。役員も例外ではないので、そこは役員でチームを作ってもらって進めています。とはいえ、あくまでもボトムアップのプロジェクトなので、役員から何か指示があるというより、プロジェクト内で考えたことを役員チームとして実施してください、というかたちで一緒に取り組んでいるような感じですね。

坂上:ミドル層の年齢はおいくつですか?

長沢氏:20代半ばから30代半ばぐらいまでですね。

坂上:そのプロジェクトをもう少し具体的にいうと?

長沢氏:まずチームが7つに分かれていて、それぞれのチームが目的にそって活動しています。ビジョンを作る事をサポートしてフォーマットを決めたりする「作る」チーム、定期的にアンケート等を実施してどのくらい効果があがっているかをみて次の改善につなげる「チェック」チーム、これ以外のチームでは、さまざまなかたちで社内外にビジョンを浸透させるための施策を企画しています。

たとえば対象が社内であれば、ミドルマネジメントがどういう場面でビジョンを語るとメンバーに伝わるか、どうすればメンバーが業務とビジョンのつながりを自分自身で考えることができるようになるかなどの視点で社内施策を検討して実施しています。

坂上:経営理念はいつごろ作られたんですか?

鈴木氏:一番最初に経営理念を作ったのは2004年です。

坂上:98年の創業時には経営理念は無かったんですか?

鈴木氏:はい。井上の頭の中には骨格のようなものはあって、なんとなくそういう話はしていたけれども、明文化されたものが無いという状態で5年ぐらい経過しました。

坂上:経営理念を作るきっかけは何だったんですか?創業5年目の2003年の春に、それまで社員が十数名の会社だったところへ中途採用で社員が10人ぐらい入って、社員が倍増した時期がありまして、だんだん「これってどうなの?」というようなことが出てきたりして、やはり明文化する事が必要だと考えたことからですね。

坂上:理念はどうやって作られたんですか?

鈴木氏:その翌年の2004年の春に約50人の社員全員で一泊二日の合宿に行ったんです。まず経営理念を決めましょうということで。今はここに下げている「常に革進することでより多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る」っていうのをいろんな角度で、一語一句みんなで議論をした中で決めました。

坂上:作るのに要した時間はどれくらいでしょうか?

鈴木氏:昼間はずっとその話し合いをして、10時間くらいはかけたと思います。さらに『心と行動のガイドライン』と『組織のガイドライン』というのがあるんですが、有志数名と経営陣、特に井上の意見から、ここは外せないという要素を起こしていって、社員からの意見をアンケートで吸い上げたりして、『ビジョンカード』というかたちにまとめたのは2004年の冬から翌年の春にかけてです。

坂上:当時の売り上げはどんなものだったんでしょう?

鈴木氏:2004年3月期の売り上げは約10億円でした。まだHOME'Sも規模が小さい時でしたから。

坂上:その後、理念の見直しなどはされたんですか?

鈴木氏:2006、7年の頃に新規事業展開のため、社員数を急激に増やした時期があるんですが、社歴の浅い社員が増えてくると理念やガイドラインにこめた想いが伝わりにくくなりました。そこで一旦、みんなでガイドラインを見直そうと動き出したのが2007年です。

坂上:その時で社員が何人ぐらいですか?

鈴木氏:150人前後だったと思います。当初設定した時と同じように、細かく一言一句、これが今の状況にあっているかを、ワークグループを作って、有志が中心になって取りまとめて、現在使っているものができました。さらに、今年に入ってからもガイドラインの見直しや、もうちょっと別の角度のガイドラインが必要かどうかという議論が動き出しているところですので、ステージで言うと、無い状態から初版ができて、見直して、今3期目が動きだした状態です。

坂上:二回目の作成には何人ぐらいが関わりを持って、時間的にはどのぐらいかけられたんでしょうか?

鈴木氏:希望者が誰でも参加できる検討会を月一、二回ぐらいのペースで実施しながら、結局トータルで半年程度はかかったと思います。何らかのかたちで過半数の社員が関わりました。

坂上:経営理念を浸透させるにあたり工夫されたことはありますか?

長沢氏:一つ目の取り組みとして、ビジョンを組織ごとに作るということをやっています。組織の最小単位であるグループは全部で70ぐらいあるんですけど、それぞれグループごとにちゃんとビジョンを持っています。つまり、経営理念から落とした部のビジョンがあって、ユニットのビジョン、さらにグループのビジョンがあるということです。

あとは個人と組織の行動の規範として『心と行動のガイドライン』が8項目、『組織のガイドライン』が6項目にまとめてあるんですが、これをきちんと実践できているかというのを、360度でお互いにメンバー同士やメンバーとG長の間で評価し合うということを半期ごとに実施しています。特に弊社の場合はこの骨格の考え方ができていない人は昇格させませんという考え方を人事評価制度の中で明確に打ち出しています。

坂上:はい。それでちょっと質問があるんですけれども、今おっしゃった2007年でしたっけ、つまり9年前に人事評価に入れる前は人事評価には反映されてなかったっていうことですよね?

鈴木氏:なんとなくは反映はされていたけれども明確なルールとしてはなかったということです。

坂上:その時は人数どのぐらいですか?

鈴木氏:100...200人はいなかったと思います。

坂上:それで、今はもう600になる感じで人数が増えてくにしたがって、何となくの評価はやはりやめようよと、こういう感じだったわけですよね?

鈴木氏:そうですね。評価の中に単純な能力とか業績、実績だけではなくて考え方の骨格を入れましょうという事になって制度を改定しました。

坂上:比率はどれぐらいですか?業績と50:50ぐらいになってるんですか?

鈴木氏:一つ上のクラスに昇格するかどうかという時の基準のひとつになります。ただ、その半期に目標として掲げた事をどれだけ達成したかという実績については切り離して定量的に評価して、各期ごとの賞与に直結するようになっています。ある時期に高い業績をあげた人はその期のボーナスがプラスされますが、それと昇格するかどうかは別の判断です。功を出した者には禄で報いよ、徳を積んだ者には格で報いよという考え方が基本で、一つ上のステップ、あなたもメンバーじゃなくてグループ長になってくださいとか、その上に進んでくださいっていう判断にこの軸を使っています。

坂上:ビジョンと経営理念とガイドラインは一体どう違うのかを教えてください。

長沢氏:経営理念が「目指してるところ」であるのに対して、ガイドラインは具体的な行動、進み方ですね。『心と行動のガイドライン』『組織のガイドライン』に添った考え方や行動をして、経営理念の実現を目指して進んで行きましょうという感じです。

坂上:ビジョンというのはそことどう関わるんでしょうか?

長沢氏:組織ごとに定めたビジョンは経営理念をブレイクダウンしたものです。

坂上:ビジョンという言葉は他の言葉に置き換えるとどういう言葉になりますか?

長沢氏:「自分たちが作っていく世界」みたいな感じですかね。井上がよく言っているのは、経営理念はずっと掲げ続ける究極のゴールで、完成されるのは例えば100年後か200年後かというのが分からないものだと。それに対して各組織で掲げるビジョンというのは、見ているスパンが3年だったり1年だったりするんですね。本来あるべきビジョンというのは、私たちが日々業務にあたりサービスを生み出した事で、一年後に世の中がどういう状態になっていて欲しいですか?ということを掲げるものだと私たちは認識しています。

坂上:そのビジョンプロジェクトの前後の違いについて教えてください。

長沢氏:ビジョンプロジェクトが始まった時に一番最初にとったアンケートがあるんですが、自分の今の担当業務と各部門で掲げるビジョンの繋がり度というのを目標にしていて、最初はその数字が60パーセントぐらいしか無かったと思うんです。第1期目、2期目は繋がり度というところを目標にしてやってきて、同じアンケートをとって、3年間で80パーセントぐらいまで数字を上げることができたんです。そういった意味では、各メンバーを見た時に、自分の今やってる業務が自部署のビジョン、ひいては経営理念とつながっていると感じる事ができるメンバーが増えているとは言えると思います。

坂上:各階層のビジョンはどうやって作られたんですか?

長沢氏:まずはビジョンの見直しを全社でやりました。というのも、今までは階層別にビジョンはあったんですが、日々の業務とビジョンとのつながりを感じきれないメンバーが一定数いたり、本当にこれって経営理念からブレイクダウンして作られたビジョンなんだっけ?みたいな疑問が出たりする状況でした。

さらに、自部署のビジョンを知らないメンバーがいたり、そのビジョンが作られた背景や意図を理解していないメンバーがいたので、ビジョンプロジェクトで最初に先ず、基本的にそこに関わるメンバーは原則全員参加してビジョンを作りましょうというような決まりを作って、きちんとみんなで話し合った上で全員が納得してビジョンを作ってもらうということを経営理念から順にブレイクダウンして各階層のビジョンに落としていくようにしました。それが先ずビジョンの階層の整理というところで取り組んだことです。

田中氏:区割りでいうと、ビジョンはそもそもグループビジョンだったり、ユニットビジョンだったり、部のビジョンっていうのはあったんですが、それが本当に必要なのかという、グループビジョンまでわざわざ作る必要があるのかっていうところも役員と初期のメンバーで話し合いをして、結局ビジョンはグループビジョンまで一旦は必要だという前提のもとで、じゃあそのビジョンを作る際にどういうふうに作っていくべきか、メンバーとどう関わっていくべきかというので作ったのがそのビジョンプロジェクトです

坂上:そのビジョンプロジェクトの前にやっていた浸透のための具体的な工夫はなんですか?

田中氏:まずは、全社総会を月に一回やっているんですが、その始めに必ず代表の井上が、ビジョンシェアリングという場を設けてまして、そこで10分程度ビジョンにつながるような話が必ず一回あります。あと、ネクストテストというのがありまして、1年に一回、必ず全社員が受けるものなんですが、その中にこの経営理念や『心と行動のガイドライン』『組織のガイドライン』を覚えて、一言一句間違えずに書けるかというのを試されるものがあります。

テストにはそれ以外にも事業部の実績であったりビジネスモデルの話も含まれるんですが、点数の配分が一番多いのが、理念とガイドラインの2つですね。

鈴木氏:また、中途採用、新卒もそうなんですが、入社して1ヶ月後ぐらいに、ビジョンカレッジという研修があって、そこは必ず全員参加で半日かけて、基本的には井上が、ネクストにおけるビジョンはこういうもの、それを体現するとはこういうことなんだよという事を、ある意味刷り込むみたいな場を設けています。あとは、ビジョンに関連したテーマについて語るコンパを開催したり、組織改編後にあらためて各階層でブレイクダウンしたビジョンを検討したりしています。

坂上:中途採用だと社風に違和感を感じることがありますよね?

田中氏:そうですね。テストだったり、これ(ビジョンカード)を日々携帯してねって言われる事自体が最初はすごく嫌で、違和感はありました。やはり縛られてる感じだったりとか、そこまで会社と心身を一体にして業務に取り組みたいかというと最初はここまで思わないですよね。

坂上:どこから変わったんですか?

田中氏:最初は変わったというよりは、やはりそのネクストテストっていうのが結構強烈な印象があって、本当にこういう事やるんだっていうのを身にしみてわかって、来年はやらないで良いのかなとか思ってたら、また来年やるんですよ。もう、これは諦めるしか無いと。

そこからこの文化に共感を覚えるようになったのは2010年あたりに、それまで右肩上がりだった業績が一時足踏み状態になった事や、HOME'Sの方で大幅なサイトリニューアルがあったりとか、会社として大きな節目があったんですが、その時期は会社全体で、今は売り上げの伸びが停滞しているけど、ユーザーにこういうサービスを提供したい、こういう世界を提供したいから、今変化を遂げなければいけないという、みんなで最終ゴールを共有する場を持つことを非常に意識していました。だからこそ、しばらくの間苦しくてもこれを乗り越えてがんばろうという人が多いという事を実感しました。

前職で会社が傾きかけた時の離散の仕方が、いわゆるクモの子を散らしたみたいな感じで、本当に上の人からどんどん辞めていくっていう酷い状態だったんです。それを自分なりに考えると、やはりユーザーにこういう事を提供していきたいという夢であったり、会社の存在意義を全員で共有できているかどうかという事が会社にとって重要なことなのだと感じています。

坂上:他に影響を受けた事柄は何だったんですか?

田中氏:あとは、HOME'Sっていうサービスがあるのが大きいかなと思っていて、私は入社してからずっと管理部門で同じ仕事を担当していてサービスを作る側にはいないんですね。なのであまりHOME'Sの世界観は入社する前は知らなかったんです。それで中に入ってみると、みんなが真剣にユーザーにとって使い易いサイトにしたいって思ってるんです。そういう業務中の会話を聞いたりしたことが大きかったですね。

坂上:このビジョンプロジェクトを通して、部門や階層や年齢を超えてのコミュニケーションを促し、話し合いをしていく中で新たな発見が行われると?

鈴木氏:そうですね。それに表彰システムの中で、ガイドライン大賞というものがあって、普段目立たないんだけど、実はこんなところですごくこだわってやってるという人が表彰される機会もあるんです。そうするとみんな本気でそれを誉め称えるし、それを見ていると途中から入って来たりとか、いまいちまだビジョンに対してピンときていない人でも、やはりいいものなんだなと。本質的にやはり良い事だと思うので、そこは理解していくんだと思います。

経営理念を浸透させる上で大事な事は、ありとあらゆる機会があるって事だと思います。入った時の研修とか年に一回のテストだけでは無く、それこそ半年に一回の評価面談の際にも、もちろん業績の評価とは別に「ガイドラインのこの項目は360度で相変わらず三角が多いから今期はちょっとがんばろうよ」みたいな会話が自然に出て来たりしますし。ありとあらゆるところで、ビジョンが骨格になっているということがやはり一番重要だと思います。

坂上:なるほど。それをベースにしていろいろな仕組みがその上に乗っかってる。そういう感じですね。

鈴木氏:そうですね。迷ったら立ち返れるところがあると。

坂上:なるほど。では、コンパをやればいいって話でも無いですよね。その辺は人事評価ともつながってることは大事ですよね。それと、日常の業務の中で、話される言葉がその「利他だよね」とか、「お客様にとっていいよね」とかそういう言葉があるというのが大事ですよね。

鈴木氏:そうですね。だから徐々に社員が増えていく分には、ある程度そこをちゃんと理解している人間が周りにいるので、馴染んでいくんですけど、怖いのは何らかの事情で急激に人が増えたときで、ただ思い返すとそういうタイミングでちゃんとやろうっていう声が起こって、プロジェクトが立ち上がって、その時々で必要な施策がとられてきたと思います。

坂上:例えばここに4人いるんですが、僕が中途で入ってきて「いや、利他なんてわけわかんねーよ」と言ってても、みんなはずっと「利他、利他」言ってるから、「え?利他っていう事なんですか?」とだんだんなっていくわけですよね。

ユメ(ノ)ソラホールディングス株式会社 経営理念

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

吉田博高代表取締役CEO(以降「吉田CEO」と表記)
ユメ(ノ)ソラホールディングス株式会社・代表取締役CEO・吉田博高です。
事業内容は、漫画、玩具、個人出版物、キャラクターグッズの販売・通信販売を主事業にするほか、漫画の企画・編集・キャラクターグッズ制作を手掛けています。売上高200億円、経常利益5億円、経常利益率2.5%、従業員約1,000名です。

坂上:次に吉田CEOのプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

吉田CEO:44歳、東京都世田谷区出身、法政大学キャリアデザイン学部卒業、法政大学大学院イノベーション・マネジメント専攻卒業、1988年に工業高校卒業後ソフマップ秋葉原店に勤務。94年虎の穴創業、96年法人化、03年株式会社化、13年ホールディングス化し、今年で虎の穴創業20年になります。

坂上:今会社の経営者になられてるわけですが、ご家族の影響はありますか?

吉田CEO:あったと思いますね。父は兄と二人で、従業員5人くらいの電気工事業を経営していました。孫請けのさらに下請けで、仕事内容もテレビの回線やLAN回線を家庭に引っ張ってくることぐらいだったので、利益率も悪いから、あまりあの職業につきたくないなと思ってました。

坂上:面白くない感じがしてたんですね。その時から自分で何かをやってみようとか、そういう方向に思いが向いたんですか?

吉田CEO:僕はパソコンが好きで小学生の時からやっていて、中学校に上がるころ、父に「勉強するからパソコンを買わしてください」といって、本当はゲームやりかった。中学から高校までひたすらゲームやってましたね。

坂上:中学、高校から起業に至るまでは?

吉田CEO:中学生のころにはパソコンに燃えて、あまり勉強をやる気がなかったんですね。漠然とそれでも生きられると思ってました。当時の、記憶して物事に答えるという教育を僕はあまり面白いと思ってなかった。創造性がないじゃないですか。高校卒業したら独立しようと思ってましたので、卒業の半年前くらいから、コンピューターのゲーム会社や、サポートをするビジネスのモデルを10個くらい考えていました。

坂上:でも結局独立しなかったわけですよね?

吉田CEO:そうです。うちの父に独立して事業をやっていきたいから「1000万お金を出してくれないか」と頼んだのですが、親子で金の貸し借りはしないということで出してもらえませんでした。そこから3年半ぐらい秋葉原のソフマップでアルバイトをしました。一番やりたいビジネスがソフマップのようなモデル、中古パソコンの買い取りとかソフトウエアの開発だったので。そこで学んで同じビジネスを立ち上げようかなという思いはありました。

坂上:今の経営理念を作ろうと思ったきっかけは何だったんですか?

吉田CEO:98年の5月に池袋のお店をオープンした時に、当時は売り上げが30億くらいで、会社案内を作る時に、「お客様からのイメージもあるから、理念も作らなくちゃいけないだろう」と、そういうレベルでしたね。社員数はアルバイトを入れても100人に満たなかったころです。

坂上:今お手元にいただいている「仕事を通じてクリエイターのファミリーになる。ビジョンに向けて実現するには理念に共感共有できる人だけと仕事を行うことを決め、経営理念を新たに作成した」とありますが、これはいつごろのことですか?

吉田CEO:今から3、4年前のことですね。今から7年前に赤字決算を出して千葉に移転した時に、56人ぐらいが2、3カ月のうちに退職していきました。

坂上:当時で何人ぐらいいらっしゃったんですか?

吉田CEO:164名程度です。その時に「だれとやるか」というのがやはり改めて必要だと感じました。当時は今から考えてみると、前例主義の考え方が強くて「そういうことは前例にないから」という状況で、経営理念は社員のためにも重要なことで、これは作らなくてはいけないと、ひしひしと感じていたんです。それでちゃんと作ろうと思いました。

坂上:経営理念を作って気付いたのは、クリエイターに支えられている実態を改めて痛感したということですか?

黒田COO:年間収益の中では同人誌の売上高比率が大きいんですが、それらを作られているのはいわゆるクリエイターさんで、そういった方々に長年の取引を通じて支えられているところが我々の強みであると改めて認識をしました。もっとクリエイターさんに寄り添う会社として全社を挙げて努力すべきということに気付きました。

坂上:経営理念は時間的にはどれくらいでつくったんですか?

吉田CEO:1年くらいかかりましたね。素案をつくるのは時間かからなかったんですが、文章をどういうふうにするかとか、表現方法だけがちょっと時間がかかりました。

坂上:それはご自身が全部作られたんですか?

吉田CEO:一番最初に社是である利他道精神というのをつくりました。

坂上:それはご自身の頭の中にもある程度昔からあったんですか?

吉田CEO:それまでは「売上高を上げればいい、売れる作品があればいい」という考えでしたが、「なんで俺たちは飯が食えてたんだろうか」とか「どうしてお客様がうちに来ていただいてるんだろうか」ということを考えたときに、他人の喜ぶ顔を増やしていくビジネスをしていかないとだめだろうなと。当時もやってはいたんですが、それを表だって言ってなかったので、「他人のために働こう」という言葉を出していこうと思ったんです。

坂上:この利他という言葉はどこから来たんですか?

吉田CEO:稲盛さんの本を読んだ際、取り入れました。

坂上:この利他に対して「利他道」と、「道」が入ってるところも特徴的ですね?

吉田CEO:僕は武士道の精神が非常に大事だと思っているんです。武士道って毎日死を意識するから一生懸命生きるということですよね。どちらかというと僕等精進だろうなということで、道を付けました。必要部分の要素だけ取り出して、行動理念の中には生きています。

坂上:理念をつくる時に、どこかの瞬間で「理念って大事だなあ」と自分の中で意識が変わっていくのはどういうイメージだったんでしょうか?

吉田CEO:意識を変えていかないといけないなと思ったのは、赤字決算を出して人がいなくなった時に、「こんなに簡単に人が辞めていくんだ」ということに対してでしたね。その時に、共通の意識を持った集団を作っていかなければと心底思いました。

坂上:ご自身が、後に続く若い経営者に経営理念のことについて伝えるとしたらどんな感じですか?

吉田CEO:理念が必要かどうかは会社の規模によると思いますね。社員が少ないうちはひとりひとりと話ができるじゃないですか。だから「お客様のために行動してるのか」ということは常に問いかけていたので、面接は私が全部アルバイトまで実施してました。そういう点では人の内面を見て「こいつだったら大丈夫」という判断をしていたので、特に理念を作ってなかったというのはありました。

でも、お金がなくて理念だけだったらやっていけないから、理念と売り上げとで50対50ぐらいは必要なんじゃないですか。理念って結局、社会に対して良き金をいただくことじゃないですか。良き金をいただき良き行動をしていく集団が、良き会社を作り上げていきますよね。ですからやはり理念の重要性の比率は5割くらいはあると思いますね。

坂上:経営理念をつくる苦労はありましたか?

吉田CEO:つくる苦労ではないのですが、強いて言えばまだそんなに浸透していないということですかね。

坂上:浸透の部分ですね。これは最後に聞こうと思ってたんですけど、経営理念の点数と浸透の点数は何点ぐらいですか?

吉田CEO:浸透度は30点ぐらい、赤点ですね、まだちょっと。

坂上:理念の点数は?

吉田CEO:理念の完成度は70点ですね。今の私たちの成長のラインだと、もうちょっと上があると思います。

社是:利他道精神
ビジョン:クリエイターのファミリーになる
ミッション:この星に生きる全ての人に、創造と発信の場を提供し、人類の幸せに貢献する
大切にする価値観:
自分の良心に従って行動しよう―誠実
成功におごらず、失敗から学べる人になろう―謙虚
思うだけでなく「ありがとう」と声に出そう―感謝
上下関係なく困っている仲間に手を差し出そう―愛情
逆境をチャンスととらえ、挑戦を楽しもう―胆力
立場にとらわれず、まず自分から行動しよう―責任感
物事の良い面に目を向けて、笑って生きよう―積極性

坂上:今の経営理念はこの社是「利他道精神」および、「大切にする価値観」、それとビジョンとミッションがあり、これ全体で経営理念と呼ばれているんですね。完成度が70点で、あと足りない30点はどんな部分ですか?

吉田CEO:やはり大切にする価値観はちょっと長いので、もっと覚えやすくする工夫もありますが、根本は行動に移せてないことですね。利他道精神は結構いい表現だと思います。短いし、わかりやすいじゃないですか。

坂上:個人の価値観と経営理念の関係はどうですか?

吉田CEO:ずれてる感じはしないですね。基本的に悪いことは書いてないですからね。これに反発してたらかなりおもしろいタイプだろうと思います。

坂上:経営理念と業績の関係ということもお聞きしてまして、経営理念があると業績は良くなりますか?

吉田CEO:僕の経験からすると、成長戦略をとっていくときに、いずれかは大企業病になったりする例が多いですが、その時にやはり、理念というものがあると引っ張ってくれそうな感じがしますね。人が同じ方向向いてるからバラバラにはならないというか。そういう意味合いとしてとらえてます。

ビジネスはビジネスでじゃんじゃん稼ぐというのも大切な視点なんじゃないかと思います。理念は業績にとって土台のようなものですね。稼ぐことは稼ぐんですけど稼ぎ方ってあるじゃないですか。そこに亀裂が入ったり考え方がずれていくと、やがて崩壊したりとか、何か問題が出てきたりしますよね。

坂上:人として正しいことというか、間違ったことをしないということをお互いに持つという感じですね。先ほどのお話で160人くらいの時に人が辞めるといったことがありましたが、理念を持った方がいい人数の線みたいなものはりますか?

吉田CEO:振り返ってみると、創業時から作るべきではないかと思います。人って自分勝手に期待をしたり、思想をもってるのは当たり前のことで、自分が一番と思ってる人たちと仕事をしていくことはあまりいい結果を生み出さないですね。やはり考えていることは次第にずれてくるので、仲たがいすることもあります。理念という方向性を打ち立て、その方向性に共感できると言ってくれる人と立ち上げていった方がいいと思いますね。

坂上:理念を浸透させるにあたりどのように価値観を共有していったんですか?

吉田CEO:最初はほぼできていなかったと思います。理念を作ってからは、自分自身が理念に沿った行動をこころがけていました。でも、当時はどちらかというと行動理念のようなものはなかったです。ビジョンもどちらかというと企業の事業領域みたいなもので「世界中のお客様にご満足いただける高い作品と最上のサービスを提供する」素晴らしい漫画文化を世界へ未来へはばたかせるというのがこのころの最大のビジョンだったんですが、じゃあ具体的な行動って何だろうと明確にできなかったってことが浸透しない理由の一つでしたね。

坂上:浸透させる工夫や具体的な行動はどんなふうにされてるんでしょうか?

黒田COO:昼朝礼で、パートナーも含めて全員で唱和しています。1日1回で3分くらいですね。ビジョン、ミッション、社是、大切にする価値観を唱和しています。あとはミーティングであったり何かしらの判断をするときに、みんなが意識して「それって利他道精神に反するんじゃないか」とか理念を基に判断するようにしています。一部には今ようやく浸透し始めていますね。あと社員全員に理念を書いたカードを配っています。

坂上:新卒と中途で比率はどうですか?

吉田CEO:50対50ぐらいです。

坂上:仮に中途で50人入ってきて、その人たちはカードをもらって入社の後に理念の勉強会とかそういうのはあるんですか?

吉田CEO:特にそこまではやってないですね。

坂上:ということは、とにかくカードをもらい、これを読んでおいてねと言われて朝礼で唱和するという感じですか?

吉田CEO:そうですね。ただ、こういうことが大切だってことに対して、仕事の中で説明するようにはしてますね。

坂上:それはだれがやるんですか?直接の上司ですか?

吉田CEO:まだ11人の幹部の人間しかできないですね。

坂上:浸透させるうえでこの辺に苦労してるということは何かありますか?

黒田COO:自己の利を考えるよりは他人の利を優先するということを、行動や判断でやっていけるかどうかということがなかなか難しいですね。

吉田CEO:サラリーマンっぽい人だとちょっと厳しいし、上司になっていきなり官僚みたいになる人も困るし。

坂上:経営理念を作ってこれを浸透させていくのにあたってトップとしてご自身が気をつけてることって何ですか?それ社長やってないじゃんって言われたりもしますよね?

吉田CEO:僕はこういう理念を持った人たちと仕事をできるようにしていくという人物像をまずとらえますね。行動理念に照らし合わせて、これに即してない行動をしてる人たちには、うちの会社にいてもらいたくないってこともあえて言ってますね。

坂上:例えば大切にする価値観を一つ二つおっしゃってもらってもいいですか?

黒田COO:自分の良心に従って行動しようというのが「誠実」。人それぞれ良心があるので。あとわかりやすいのは「胆力」というのがあって、逆境をチャンスにとらえ、挑戦を楽しむと。物事の良い面に目を向けて笑って生きようというのが「積極性」だったりとか。

坂上:そういうものを一つ一つみんなで決めたんですか?

吉田CEO:この前の項目の3項目くらいは実はそんなに難しくないですよ。どちらかというと後半がちょっと難しくなってるというか。「誠実」というのは実は君に託されてるよ、というのを言ってるだけなんです。

坂上:大切にする価値観という表現で「誠実、謙虚、価値観」それが自分の良心に従って行動するのが誠実であるということですね。いい言葉ですね。

黒田COO:浸透させる取り組みの一つとして人事評価制度の中に入れてます。

坂上:それはどのくらいの比率ですか?

黒田COO:行動評価の方にはすべて入れてます。

坂上:全体で100点のうちの何点くらい入れてますか?

黒田COO:もちろん管理職と一般職で変わるので一概には言えませんが、管理職の場合は業績が7割で3割が行動評価。逆に一般職の場合は業績は3割で7割が行動評価。より一般職に近い層に浸透させていきたいということですね。

坂上:そこも考え方の表れですよね。まさに価値観、理念ですよね。

吉田CEO:比較的これは日本人が好きな行動だと思いますね。

坂上:これはご自身が7、8割これだと思って、8割方作って皆で並べ替えたりとかそういう感じだったんですか?

黒田COO:吉田CEOと経営メンバーを集めて、コンサルの方にも入ってもらって抜き出して決めて行ったんです。

坂上:それはある程度時間をかけて?

黒田COO:外部の会場を借りて、当時通算4時間をかけて行いました。

坂上:さあやろうといって決まるまでは1カ月くらいですか?

吉田CEO:項目出しが結構大変でしたね。

黒田COO:何を大切にするかというのをまず抜き出し、吉田の方はそれを「そうじゃないんじゃないか」とか「どう思ってるんだとか」話を聞いたりして。

坂上:それはそのコンサルの方が、ご自身と黒田さんにインタビューして?

黒田COO:吉田と経営メンバー7人くらいです。全員集めてブレストみたいな形で抜き出し、付箋をはって言葉を抜き出してという感じですね。

坂上:それを3、4時間を3回ぐらいやったんですか?

吉田CEO:もっとやっていたと思います。1日当たりだとそんなに長くないんですが、あとでそれを繰り返し、それでいいのかとか最終的には合宿をして作りました。

坂上:ミーティングした回数的には10回ぐらいですか?月4回としても3カ月くらい?

吉田CEO:当時は、これ以上は出ないだろうなというぐらいには作りこみましたね。今から考えてみると、直したくなる部分もありますが。わかりやすいようにと変えていったんでどうしても長くなってしまったんです。

坂上:ご自身で何割くらい作られた感じですか?

吉田CEO:今回の経営理念は人選していく中で結構絞り込んでましたので、私が作った感じからすると、だいぶ話も早くまとまった気がします。特に後半の部分ですね。最初に作った方は自分だけで作ったのですが、後半は5割ぐらい手伝ってもらった感じです。

坂上:仮に言葉がここに100語あるとすると、最初の時点でご自身が出した言葉というのは何割くらいですか?

吉田CEO:最初の頭の部分とか「クリエイターのファミリーになる」とか、「利他道精神」とかは私が、あとの部分はみんなで出していって意見を合わせました。

黒田COO:ミッションが一番大変でしたね。最初は「地球上に」くらいだったんですが吉田的には「この星」とか「宇宙」くらいなイメージになっていたので。

坂上:この7項目はご自身がどれくらい作られたんですか?

吉田CEO:これはみんなで話していく中で作ったので、僕の考えた部分の方が少ないと思いますね。最初のこの大切にする価値観、「誠実」は、ノードストロームの経営理念の項目の第一条を見た時にこれは重要だなと思い取り入れました。

坂上:本でご自身が接して、いいなと思われたわけですね?

吉田CEO:経営に関する本はだいぶ読んでるので。その中でゴミから拾ってきたようなタイヤを返しても、ちゃんと返品のお金を払ったとか、そういう事例を通して、小売業の行動理念については学べた気がします。その他は足りない部分を補足した感じでしたね。

坂上:最後に若い方へのメッセージを一言お願いします。

吉田CEO:理念は人を一人雇う時点で作っておくと、自分達がなんのために仕事をしてるのかということが理解でき、そこで働く人たちがより「お金だけじゃない対価」を理解して育っていくと思います。ぜひ経営理念を、行動理念含め作っていくのがいいんじゃないかと思います。


経営理念
【社是】利他道精神
【ビジョン】クリエイターのファミリーになる
【ミッション】この星に生きる全ての人に、創造と発信の場を提供し、人類の幸せに貢献する
【大切にする価値観】
自分の良心に従って行動しよう―誠実
成功におごらず、失敗から学べる人になろう―謙虚
思うだけでなく「ありがとう」と声に出そう―感謝
上下関係なく困っている仲間に手を差し出そう―愛情
逆境をチャンスととらえ、挑戦を楽しもう―胆力
立場にとらわれず、まず自分から行動しよう―責任感
物事の良い面に目を向けて、笑って生きよう―積極性

eBASE株式会社 経営理念

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

常包浩司様(以降「常包社長」と表記)
eBASE株式会社・常包浩司です。
事業内容は、食品業界などの業種に特化したデータベースシステムの開発販売などです。前年度の売り上げが連結27億8,000万円、単体11億4,000万円、経常利益連結5億1,000万円、単体3億6,000万円、連結利益率19%、単体利益率32%になります。現在従業員は401名です。

坂上:次に社長のプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

常包社長:57歳、香川県出身です。慶應義塾大学工学部を卒業後、プリマハムに入社。親戚の紹介で大阪の凸版印刷株式会社に入社し、関西画像研究所の所長に就任しました。その時期に開発したデータ管理ソフトによる新しいビジネスモデルによって2001年10月に独立創業し、現在のeBASEシステムを開発販売しています。2006年12月大阪証券取引所ヘラクレス市場上場を果たし、関連子会社にBASE-NeXT株式会社とeBASE-PLUS株式会社を有しています。創業13年になります。

坂上:新卒でプリマハムに入って、その後凸版印刷に入ったというのは少しおもしろいなと思ったのですが、どういう経緯か簡単にお話ししていただけませんか?

常包社長:はい。大学の就職活動は当時9月と聞いていたので油断して大学へも熱心に行かずに飲み歩いてばかりでした。知人に紹介されたプリマハムさんにはもともと志を持って入社したわけではなかったので考え直して辞めました。その後大阪の凸版印刷の開発本部に遠縁の親戚がいたので、その下に拾っていただくことになりました。そこで技術を担当しCADやCADCAMなどを経験して、そこから関西画像研究所を作っていただきました。平成8年にはその所長に任命されカラーマネージメントを担当すると同時に今のeBASEにつながる商品データベース開発を始めました。

坂上:今のお話を聞くと、いわば凸版さんというのは、印刷をするとか、画像とか画素とか、でCADもあると。業務の中でどんどんそれを覚えていかれたわけですね?

常包社長:そうですね。それで以前、今の商品情報交換の仕組みも住宅建材業界でやってたんです。建材や住宅メーカー、工務店とかの分厚いカタログがありますが、当時CDROMが出されだしたんです。それが各メーカーごとでフォーマットがバラバラなんですよ。

坂上:不便ですよね。

常包社長:使う側はみんな一緒じゃないですか。違うフォーマットで持って来られても使われないというので、凸版印刷が提唱するMEDIAPRESSっていう統一フォーマットでやりましょう。そのかわり最初の4社はただでやります。そのただで4社分作ったのを、持って回って「これからは標準化です」と。当時1000万ぐらいで作られたのを200万で作って。

坂上:ということは今のお話は、業界の人のある意味利己というか、自分勝手な自社の都合を外から見ていて、それで高いものを5分の1の価格にして、使いやすさも統一して、それも紙という媒体からCDになり、そして今のような形のデジタルの方に移行する時にちょうど居合せた。それが非常に大きなポイントだったんですね?

常包社長:そうです、標準化で、業界単位でデータ交換、商品の流れと同時に商品情報の交換も標準化を図るというのを当時やって。ものすごく皆さんから賛同をいただいて、そのフォーマットを大日本印刷さんにも無償で提供したんですよ。凸版の上司からこっぴどく怒られましたけど。

坂上:そうか、それはトヨタと日産の関係と同じですからね。

常包社長:そうですね。ただで提供したと。大日本印刷さんはもう喜んで「ウチは100万円で作ります」って、凸版で200万で作ってシェアを取ってるやつを根こそぎ取ってったんですよ、大体半分ぐらい。もうえらく上層部から怒られました。だけど、「このフォーマットの次のフォーマットを作るのは凸版です」というと、大日本印刷さんはライセンシーじゃないですか、それで凸版が最初10社ぐらいを押さえて、大日本印刷さんが10社ぐらい押さえて、(合計)20社ぐらい。それで凸版印刷のシェアが取られ出した時に、「このフォーマットの次のフォーマットを作るのは凸版ですよ」と言うと、根こそぎ全部、また凸版に来て。

坂上:つまり技術優位性だったということですね?

常包社長:そうですね、ライセンスを持っているので、(プログラムの)変更権がある。大日本印刷さんはその同じものを作る権利はあるけど、改変権とかがないので、次のバージョンとかもわからない。われわれのところに依頼がくればそういうものを作りますよ。その次そのCD出すと当然ネット系に持っていくじゃないですか、メディアプレスネットと。そうなった途端に大日本印刷さんはできなくなりますよね。そういう、中期戦略というのを読んでたので、もう上層部に怒られようと勝手にやりました。

坂上:それは全部ご自身で考えられていたのですか?

常包社長:そうですね。

坂上:なるほど、それはフリーミアム、フリーの発想が当時からあったということですね?

常包社長:そうです。フリーミアムという言葉も当時は知らなかったですけど、そういう考え方でやって、今でもメディアプレスネットってのは、デファクト系で(デファクトスタンダード系)更新に行ったんですけど、(私が)作った人間なので、ひっくり返せると思ったけどひっくり返せなかったです(笑)。

坂上:eBASE株式会社の取扱い商品ですが、どういった業種のお客様が対象になるのでしょうか?

常包社長:実はメインの顧客が食品業界で、それは全体の6割を占めています。どうしてそうなったのかというと、まだ凸版印刷にいた頃、当時の紙ベースからデジタル化への流れの中で、紙ベースの業務用カタログなどに掲載されている何10万点というコンテンツをすべて一元管理しようと発想して、あるソフトウェアを開発しました。その後、スーパーやホームセンターでもeコマースの普及により、全店の商品情報をデータ化する必要が生じてまいりました。それで、商品情報と写真を一緒に入れて管理したいというニーズに答えるために開発されたのが、私たちのeBASEという商品でした。

写真や取り付け図、図面、ロゴマークなども入る、極めて柔軟性の高いデータベース構造を持つeBASEは、従来の困難な開発を一気に解決しました。高い柔軟性を持つデータ構造を実現するためにXML型のデータ構造を採用し、プログラム的に変更が生じても非常に簡単に行える仕組みを開発したんです。異なるカテゴリを持つデータベース構造を新たにプログラミングすることなく、単に羅列・追加するだけで新たなデータベース構造を作れるようにしました。

坂上:御社の売上のメインとなっている食品業界で、そうした新しいソフトを始めに導入された会社はどこだったんですか?

常包社長:実は最初に採用していただいたお客様は生協さんでした。その生協さんと相談しながら、食品業界向けに「食の安全管理」ソフトを開発しました。FOODS eBASEといいます。これがきっかけで食品業界に貢献させていただくことになったんです。生協さんを始めイオンさん、サークルKサンクスさんやセブンイレブンさん、関西スーパーマーケットさんなどで使用していただいています。

坂上:御社の売上はソフトの販売とライセンスやサポート費と保守費のようですが、年にいくらぐらいかかるのですか?

常包社長:パーケージソフトが販売価格1,000万円なら毎年100万円ずつの使用料が継続でかかります。例えばイオンさんでは3,000万円クラスのものがリテール部門に入っていますが、トップバリューさんのほうは導入型ではなくクラウド型で月100万ずつの利用料となります。

坂上:今の会社を創業された経緯をお聞かせください。

常包社長:プリマハムの退職後、大阪の凸版印刷の開発本部に親戚の紹介で入社しました。そこで技術を担当しCADやCADCAMなどを経験して、そこから関西画像研究所を作っていただきました。平成8年にはその所長に任命され、先に述べたMediaPress、カラーマネージメントを担当すると同時に、その時期に開発した商品情報管理ソフトによる新しいビジネスモデルによって独立創業し、現在に至ります。

坂上:そうですか。独立して会社を作るときに自分の中のいわゆる「経営理念」というものはどんな感じだったんでしょうか?

常包社長:経営理念と呼べるものは持ってなかったですが、凸版時代に作ろうとしたビジネスモデルのコンセプトとして、業界全体を最適化して、お客さんのためによいものを作れば、必ずお客さんからは感謝され、その結果、報酬として返ってくると。この考え方は理念としては持っていなかったですけれども、以前から頭の中にはありましたね。

坂上:ご自身が創業経営者ということですが、経営理念をつくられてからどのくらいになりますか?

常包社長:経営理念は「貢献なくして利益なし、利益なくして継続なし、継続なくして貢献なし」ですが、実はこれは、創業後2年を経た平成15年になって初めて考えました。私は身近に経営者を知らない環境で育ちましたし、画像研究所の所長とはいえ出勤も服装も自由なサラリーマン生活でした。ベンチャー的に仲間3人位で新しい会社を起しても、経営理念を作る大切さというものは全く意識してはいませんでした。

坂上:画像研究所の所長さんであって、サラリーマンであった状態から創業するというのはどういう感じだったんですか?

常包社長:会社作ってみたかったんですね。一般の企業は社長と、取締役と、その他の社員と大きく3層しかないというのがわかったんですね(笑)。その三つのグループにしか分けられない。所詮ある程度の年齢になると、ヒラの場合、本部長とか取締役にならなければ、どっかに行っちゃうと。定年過ぎて雇ってくれるのは役職つきですよね。でもその人たちもいつか定年がすぐ来る。それで社長になると、社長のあとに会長があって何があってとずっと続く。

凸版の中でも2万人の社員の中で、この上の社長と取締役、社長は1人ですわね、取り締まりになるのも十数名ということで、2万人の中の十数名に入るためには能力だけでは無理だろうと(笑)。そんな中で上になるよりは独立して社長になる方が、その3層の一番上になりやすいと思ったんです。

坂上:それに気づいたのが、この所長の頃ですか?

常包社長:ええそうです。

坂上:やはりそれは、そこの部門のトップになったという経験ですね?

常包社長:その頃は、もう百何十名の組織を任されてて、結構会社からも治外法権のように手当とかも多かったし、出勤も自由だし、服も自由だったりして。実は社内ベンチャーを作らせてほしいと言ってて。

坂上:ご自身で提案されたんですね?

常包社長:社内ベンチャーでもOKの代わり、そこそこ黒字になるまでやってから独立しろと。金出してやろうかと言われてたんですけど、いざ黒字になってからだと、「いや、もうウチの事業部の稼ぎ頭やから、出せない」ってなる(笑)。トップ変わるじゃないですか。直属の取締役は3年ぐらいだから、その頃にそう言われて、もう辞めますと。もう一つは、凸版の中で120名もの人員を投じて、当時売上が7、8億ぐらいで利益が数億とか出てて、しかもほかの印刷物も取れる仕組みになってたんですが、100名の人員を入れたら100億の売上を取ってくるというのが凸版の使命なんです。印刷物を受注するのが役目だと。

当時も「貢献」とか言って、業界全体最適化みたいなことを言ってたんですが、「そんなの要らん」と。「何で凸版の作った仕組みのデータを大日本印刷が取れるんだ」と。「大日本印刷にカタログ作られたら、凸版がカタログ取れない」なんてことを言われるんですね。そうじゃなくて「よいものを作ってお客さんに認められれば必ず、凸版印刷にカタログ来ます」と。だからよいものを作ってオープンで勝負していきましょう、ということを上層部にも言ったんですが、それは通じなかったですね。

坂上:なるほど。

常包社長:それで「ソフト上げるから、そういうことやったら」と(笑)。

坂上:そのときは成功するとは思われてなかったんですかね(笑)。独立当初は何人ぐらいで?

常包社長:3人ぐらいですね。

坂上:でもご自身のノウハウがあるし、わかっている人がいればやって行けるなという感じだったんですか?でも、その技術は全部持っていっていいよということだったんですか?

常包社長:そうです。持っていっていいよということで、ちゃんと契約をして。

坂上:それはよかったですね。非常によい独立の仕方ですね。

常包社長:そうですね。しかもそのあと続々と、毎年3人ぐらいずつ3年間ぐらい、当時の100人ぐらいの上の十何人が次々と移って来てくれたんですね。

坂上:意図せず引き抜いて、その辺は大丈夫だったんですか?その辺も伺いたいんですが?

常包社長:その辺も怒られました。

坂上:でも大きな会社ですからね。なるほど。

常包社長:そう言われながらも、凸版印刷さんから創業期に毎年1000万ずつぐらい仕事をいただいたんで。創業期の1,000万って大きいですからね。その間に作ったソフトもちゃんと支援販売していただいてました。

坂上:そうですか。独立する時の思いとしては、きっかけとして、やってられないというところがあったと思いますが、会社を作るときに自分の中のいわゆる「経営理念」というものはどんな感じだったんでしょうか?

常包社長:経営理念というものは持ってなかったです。

坂上:理念を持たなきゃいけないと思って、身動きが取れなくなるよりは、とりあえず仕事して食べていこうよと、こんな感じですか?

常包社長:そうです。凸版時代に作ろうとしたビジネスモデルが、そのまま経営理念なんですが、業界全体最適化、お客さんのためによいものを作れば、必ずお客さんからは感謝されてお金をくれると。そして、お金をくれるから次に続けていけるんだっていう、この考え方は理念としては持っていなかったですが、頭の中にはずっとありましたね。

坂上:表面に言葉で書いて張ったりはしてないけれども、自分のモチベーションとか、仕事の動機自体がそこにあったということですね。

常包社長:ですから、当時やっていることと全く同じですから。

坂上:先ほどおっしゃった、フェアーでオープンで値段が安くて、使いやすくてスタンダードでとこういうような感じですね。

常包社長:そうですね。そして競合他社にもオープンにするっていう。

坂上:経営理念をつくったきっかけは何だったんでしょうか?

常包社長:トッパンフォームズの社長と会長を歴任された福田泰弘監査役と当時シャープの高森浩一常務のお二人の仲がよいのですが、ある時私と3人で会合している際に、お二人が「会社の理念って大事だね」と話をするのを横で聴いていて、そのとき企業にとって経営理念は大事であることを痛感しました。すると一瞬で「ピッ」と浮かんだので翌日まとめました。会社の進むべき方向を定めるには「経営理念」が必要ですし、その経営理念を掲げ方向性を定めることはランチェスター戦略にもある「一点集中」する助けになり、結果として業績につながってゆくと考えています。

坂上:経営理念と呼んでいるものは、この基本の3行ですか?それ以外に何かあるんですか?

常包社長:この3行だけです。

坂上:この3行だけで、それ以外の部分はあまりおっしゃってないんですね?

常包社長:理念というか考え方みたいなものは結構いろいろ言ってますね。世の中に偶然はない。すべては必然。すべての行動に関して、意思決定に関して理由をつけろと言ってます。必ずすべてに理由があると。その理由、必然というものを見つけることによって、実は偶然を排除できるんですね。偶然は再現できない。必然は再現できると。

坂上:経営理念を浸透させる工夫、苦労を具体的に言うと?

常包社長:この理念は自然発生的かつネイティブなものなので、いつも熱く語ることが浸透させる結果につながると思います。それは毎週の会議の中で、また営業拠点のある東京ではテレビ会議によって行なっています。営業、考え方、意思決定の中にこの「経営理念」のエッセンスが含まれているんですね。

坂上:新卒や中途採用の社員に対して意識して伝えていることはありますか?

常包社長:理念以前の問題かもしれませんが、まず働くことを楽しむということ。そのためには幸せじゃないといけないということを伝えています。そのためには幸せに関する絶対尺度を持つこと。例えば、自分や家族の健康が90点として、この90点さえ持っていれば、仕事がどうなろうが会社が倒産しようが、一生懸命に働いて5、600万稼いでくることができるなら、家族を育てられる。この「90点の価値観」を持ちなさいということ。

例えば、何かトラブルがあって、お客さんからのクレームで落ち込んでいて、その直後に子どもが交通事故に遭ったとする。そしたらお客さんとのトラブルの方は、自分の中の問題としては一気に小さくなるでしょ。それを相対尺度でしか考えられないのが人間なんです。絶対尺度は感覚的には持てないから、絶対尺度を平時のときから作っておきなさいと。家族と自分の健康があったら90点。飯食うだけの給料、そこも具体的に決めて、500万あったら95点。そう思えれば、今悩んでいることは5点分の何かで悩んでいることがわかるでしょう。

坂上:個人の価値観と経営理念の関係は?

常包社長:私たちのビジネスモデル自体が経営理念そのものなんです。普通のことを言ってるだけなので100社あったら100社とも「これ、あたりまえやん」と思われるでしょう。ですから無理矢理覚えさせるとか、押しつけたりする必要がないんです。ただ熱く語ることによってわかってもらえます。

坂上:「利益なくして貢献なし」と理念にありますが、会社が得る利益はどのくらいが適切なのか、経済観という視点からはいかがでしょうか?

常包社長:「利益」が大きいほど「貢献」していることになるとはいえ、過大な目標を据えてもそれは重荷になります。それで「見える手が届くところの一番端ってどこですか」と考えています。私たちが目指している市場というものは、非常に巨大ですから望めばどんどん広げることが可能です。市場は無限にあるのですが、現在見えている範囲内の市場という意味では、一先ずは経常利益10億を目指したいです。

坂上:「値決めは経営」という言葉がありますが、御社の場合のビジネスの特徴として、eBASE関連のソフトウェア販売、技術のライセンシーや保守費、クラウド型ビジネスによるネット課金など、多くの部分で他の業態に比べ、この「値決め」がやりやすく利益の幅も取りやすいと思われますが、何かいいアイデアなどお持ちでしょうか?

常包社長:食品業界に提供するサービス上で「食の安全」にかかわる私たちの会社には常に社会貢献が期待されています。食品業界では7万ユーザー、1万8000社の97%にツールを無償提供していかねばなりません。バージョンアップやサポートセンターによる電話対応などは全部無償でやります。なぜなら、食の安全情報データにアレルギー情報などを誤って入力すると大きなトラブルになりますので、顧客には「面」で対応すべき分野が多くあるからです。利益を出している大手企業はいくらでも費用を捻出できますが、そうできない会社もたくさんあります。

だから無償のツールの提供が必要なのです。しかしそのような社会的な貢献はいずれ利益を生みます。これからも小さな会社にも負担にならないように、月々1000円から5000円程度で使えるツールを提供していきます。でもいきなりその使用ソフトに月々1万円の課金をするようなことはいたしません。それはできないのです。

坂上:他の経営者の方が聞けば、市場に貢献して利益を上げる商機と感じる向きも多いと思われますが、それはできないとおっしゃる理由は何でしょうか?

常包社長:私たちには社会貢献と約束があるからです。会社が赤字に転じたときには赤字ではなくなるように課金をしたいと考えておりますが、現在その必要は生じておりません。創業以来の無借金経営で経常利益を5億円も出していて、どうしてそこに高額の課金ができるでしょうか。それで社員にもそのように話しています。赤字になったら課金するのは許される、黒字の間は許されない。

坂上:経営理念の満足度、浸透度は100点満点で何点でしょうか?

常包社長:自画自賛ですが、正直言って私は100点だと思います。とにかく、すっと浮かんで来ましたから。浸透度というところで言えば、私自身の評価では20点ぐらいです。理念をわかってくださった方が、さらにまた浸透の努力をしてくださっています。これからも理念浸透の努力を重ね、貢献のための利益追求に取り組んでいきます。

【経営理念】
貢献なくして利益なし
利益なくして継続なし
継続なくして貢献なし
社会貢献できる事業でないと、利益を得る事はできない。
利益を得られる事業でないと、継続する事はできない。
継続できる事業でないと、社会貢献にはならない。

株式会社フォーデジット 経営理念

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

蛭田正司社長(以降「蛭田社長」と表記)
株式会社フォーデジット、蛭田正司です。
事業内容はホームページのコンサルティング、制作、運用。それにまつわるシステムの開発です。前年度の売り上げが約10億円、経常利益が約1億円、利益率が10%強になります。現在従業員はアルバイトも入れて約130人です。

坂上:次に社長様のプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

蛭田社長:53歳、現在の会社を創業して14期目です。大阪出身で、大学を卒業し、東京エレクトロンに入社、それから当リクルート系の不動産デベロッパーに移り営業をしていました。そのころ知り合いの社長がアメリカのチェーン店を日本で展開するという、新しい事業を始めるので手伝わないかと御誘いを受け、4年ほど勤務、そこから独立したという経緯です。

坂上:ご自身が創業社長だということで、経営理念というのはいつごろ作られたんですか。

蛭田社長:2,3年目では一応、第1次の経営理念はできていました。

坂上:それはなぜ作られたんですか?

蛭田社長:定かではないんですが、最初の事務所から次の事務所に移る時に人がちょっと増えてきて、20人超えたくらいの時期だったと思います。

坂上:では、3年で20人くらいに増えたんですね?

蛭田社長:3,4年だったですかね。その時に、どういうことがしたいのかとか、何を大切に思っているのかなどは、ハッキリ言葉にした方がいいかなと思ってました。例えば、当時から、うさん臭い業種の仕事は絶対やらないとか、良心に恥じることはしないとかは、はっきり思っていたし、社内でも言っていました。でも、それって個別の対処の話になってしまうので、人数が増えていく中で言えば、そういうのをスパッとまとめたようなものがあった方がいいかなと思って。内容的には、感覚的、道徳的というか、自分の気持ちという感じの内容だったと思います。

坂上:ご自身で会社を作るにあたり、どの事業でというこだわりはなかったんですか?

蛭田社長:はい。30代で起業したいというのは以前から思ってたんですが、その当時の仲間に、たまたまweb関係に詳しい子がいたのと、当時、新築の不動産のプロモーションが紙からネットに移行する時代だったので、面白そうだなと思って。

坂上:そこに強い、日本のインターネットを変えるぞ、みたいな気持ちはなかったわけですね?

蛭田社長:正直なかったですね。だけど途中から、インターネットを使うともっとお客さんにいいサービスを与えられるとか、そういうのはすごく思いました。

坂上:経営理念はどんな内容なんですか?

蛭田社長:最初に作ったのは、「スタッフ、お客さんをはじめ、関わる人たちの幸せを追求する」「成長を志向する」「正々堂々と仕事をして利益を追求する」といった内容でした。

坂上:創業してから1人や2人には伝えていたけど、人数が多くなってきて、20人くらいになったから、やはりきちんと分かりやすくしなきゃなという感じですね。きっかけ的には。

蛭田社長:そうですね。学生のアルバイトの子も多かったんで、「こういうことなんだよ」ということをちゃんと伝えたいと思って。それと、周りの要請も多少あったような気がします。

坂上:周りの要請って何だったんですか?

蛭田社長:どういうことをやっていくんですか、というような話が出た記憶があります。そこが大きかったですね。

坂上:まず数年して最初の理念ができ、その後はどんな感じだったんですか?

蛭田社長:その後は確か、7、8年目に整理し直しました。それが今のものです。ですが基本は一緒です。最初の、「スタッフやお客さんをはじめ」というのを取って、「関わる人の幸せを追及する」というのと、成長も一緒ですし、あとは日常の基本的な考え方をルールとしてまとめました。

坂上:経営理念を作ったことで気付いたことはありましたか?

蛭田社長:本質的に自分は何を求めているのかとか、どういうことをやりたいかということと、理念はやはりかなり近いと思いました。結果的に考えていくとそこはつながるものだと。価値観と合致する部分があると思います。

坂上:自分の価値観と理念って、「ああ、作ってみたら一緒じゃないか」という感じですか?

蛭田社長:言語化したらそういうことなのかと。それでそこを周りにも求めてるし、そういうことに共感できるというかもともと近い人が周りに集まってくるもんだなと思いましたね。

坂上:自分の中で言語化できていなかったものを、理念をつくるプロセスで、言葉にしていった感じですね?

蛭田社長:そうですね。

坂上:大事だなと思ったことを、まず理念先行型でやる方と、実務で行く方がいますけど、どちらかというと実務で入られた感じですね?

蛭田社長:そうです。

坂上:理念をつくる時の工夫ってありましたか?全くゼロから作るのも大変じゃないですか?

蛭田社長:いくつか本も読みましたが、基本的には自分の言葉で書きました。それでその時の主要メンバーと一緒に調整した感じです。基本は私が作って、それから修正したりとか言い回しを変えたりというのを2,3人に手伝ってもらいました。

坂上:社内の人ですか?

蛭田社長:社内です。それは今の改訂版みたいなやつも同じです。基本を作って手伝ってもらった。2回目の改定の時は外部に頼むことも考えたんですけど、なんかしっくりこなかったんで自分で作りました。言葉は拙いけども、きれいな言葉じゃなくてもいいと思います。

坂上:外を使おうというのはどんな感じだったんですか?

蛭田社長:ライターにもうちょっと文章をかっこよくしてもらうとか。

坂上:すると、強い価値観とか倫理観とかではなく、「うちのことなんかわかりやすく表現してくれる人いない」という感じで?

蛭田社長:僕自身が持ってる価値観を言語化して、書いた文章をリライトしたという感じですね。

坂上:経営理念について5W2Hでお聞きしたいんですが、いつ作ったか、ということで言うと会社を作ってから3年目で1回。そして次はいつごろだったんでしょう?

蛭田社長:8年目でした。

坂上:作成の間隔が3年5年とあるわけですけど、会社にとってはどういうタイミングですか?

蛭田社長:2回目にまとめ直した時は、規模が急に拡張してた時です。

坂上:その時で何人くらいですか?

蛭田社長:50人、60人超えたころだったと思いますね。

坂上:最初は何人でしたっけ?

蛭田社長:20人程度の時に作りましたね。

坂上:20人と50人の時に作ったという感じですね。それは時間の問題が大きかったですか、それとも人数の問題が大きかったですか?

蛭田社長:事業もちょっと多角化を初めてたんで、人数と事業の拡大に応じてという感じです。

坂上:従業員50人のころは売り上げは何億円くらいあったんですか?

蛭田社長:4,5億円でしたね。

坂上:どこで作ったかというのは外部ではなく自分であり、だれが作ったかというのは、ご自分が何割作って、誰が何割作った感じですか?

蛭田社長:私が8割ですね。両方とも僕が8割で、あとは最後の調整を2、3人でやっていったと思います。

坂上:その2,3人の方はどんな方だったんでしょうか?

蛭田社長:その時の経営メンバーというか、普段よく話してる主要なメンバーだったと思います。

坂上:何を入れたかということでいくと、こういう項目入れたいな、というのはあったんですか?

蛭田社長:基本は、「何を何のためにやるか」という目的の部分と、具体的な事業じゃなくて「どういうことがしたくてしたくないのか」みたいなことを。

坂上:目的と判断基準という感じですか?

蛭田社長:それとあとは、働き方の、最初の時は入れてたかな。やり方とかスタイルの宣言だったと思います。

坂上:作成にはどのくらいかかったんでしょうか?

蛭田社長:どこから始まったかあまり定かではないんですが、3、4カ月の感覚ですね。

坂上:それは、だれか、何かの本を参考にしたことはありますか?

蛭田社長:稲盛さんの本やお話しには影響を受けています。最初のものはそれほど影響されてないですが、2回目はもう本も何回も読んでますんで強く反映されていると思います。

坂上:盛和塾は何年からとおっしゃいましたっけ?

蛭田社長:設立4、5年だと思います。

坂上:そのころから熱心に行かれてたんですか?

蛭田社長:機関紙は熟読していますが、ほとんど行ってないです。

坂上:稲盛塾長の本は読まれてたんですか?

蛭田社長:結構前から読んでました。もともと好きだったです。

坂上:影響のあった本はどんな本ですか?

蛭田社長:「パッション」ですか。ただ好きでしたけど、好きな1人みたいな感じで、特にその本ばかりを読んでたというわけではありません。

坂上:他にはどなたがお好きだったんですか?

蛭田社長:当時はやっていた経営書みたいなものは結構パラパラ読んでました。今はあまり覚えてないですね。

坂上:あと、「なぜ作ったか」というのは、人が増えるに従って、やはり意思を伝えたいということだったんですか?

蛭田社長:そうですね。こういう会社で、こういうスタイルでやりたいというのを、ある程度ベクトルを合わせておきたいなと思いました。「こういうことだよ」というのを宣言したかったというか。

坂上:その当時は、社内に問題が起こってたんですか?

蛭田社長:具体的に何かがきっかけというドラマティックな話はなかったです。必要性は日々の業務の中で感じてたんだと思います。

坂上:経営されて14年ですが、何か大きな問題が起こったりとか、社員が辞めたり事故に遭ったり、多額の借金をかぶったりそういうことはあまりなかったんですね?

蛭田社長:もちろん問題は常に、普通に経営をしていればあると思います。ただ、今まで順調に来たと思います。お金の苦労とかは基本的にほぼしていないです。

坂上:人の苦労とかはどうですか?ベクトルを合わせたりとか?

蛭田社長:人の苦労は勿論あります。ウェブ制作の会社というのは、離職率が高かったり、今は改善しているつもりですけれど、労働条件もそんなに良くなくて、長時間重労働的な側面も強かったので、一時期は離職率も高い時期もありましたし、主要メンバーが辞めた時期もありました。

坂上:今は新卒、中途採用の割合はどんな感じですか?

蛭田社長:新卒を4年ほど前から1人2人で初めて、今年の新卒は5人。それで来年の新卒は4人という感じですね。

坂上:平均年齢はおいくつぐらいなんですか?

蛭田社長:29くらいです。

坂上:そんなに若いんですか?ご自身は53歳ですよね?

蛭田社長:僕の次が40くらいですかね。

坂上:何か大きな社員の離反があったりとか、僕もずいぶんたくさんの経営者と会ってきたんですけど、蛭田社長の場合は、「おらー、いくぞー」というタイプでもないですし。やはりいいマーケットを見つけて、知恵を持ってスッときれいにそこの市場に入って、事業をやるセンスのあるタイプだと思いますが?

蛭田社長:自分じゃ全然そう思ってないです。そこが当たったというか、スムーズに行きましたけども。周りに恵まれてるところが大きいと思いますね。ちゃんとサイトを作れる子がいたりだとか。

坂上:メンバーであり、お客さまにも恵まれていたということですか?

蛭田社長:それはありますね。こう言ったら変ですけど、助けられてる感じはすごくあります。僕はすごく実力があるわけでも、営業ができるわけでも別にないです。ビジネスセンスも、多少の嗅覚があったくらいです。スタッフやお客様に助けられてると思います。

坂上:経営理念を浸透させる工夫、苦労という部分については?

蛭田社長:ここは意識が弱いので、大してできていないです。全社員が集まるという機会は年に2回くらいはあるんですが、その時に話しをしてます。

坂上:社員は何人でしたっけ?

蛭田社長:今日現在で130弱だと思います。

坂上:130というとちょっと多い数ですよね?

蛭田社長:そんなに聞いてないと思いますね。伝え方の問題がおおきいとおもいますけれど。そういう場で僕が話をするというのと、経営幹部や昔からのメンバーは長いので、理念は共有できていると思います。

坂上:それは何人くらいですか?

蛭田社長:経営幹部は3人です。

坂上:ご自身プラス3人だと。この方はおいくつぐらいの方ですか?

蛭田社長:35,31,40です。

坂上:それで10年ずつぐらいやってる感じですかね?

蛭田社長:7、8年ですね。

坂上:その方たちとは価値観が共有できているんです?。

蛭田社長:その辺と、あと昔からいるメンバーだとかは、シェアできてるのかなと思います。それと、業務上で接点の多い子はよく話をするので、仕事のスタイルや判断基準のような話はわりとできています。あと、内容は軽めなんですが、ブログを書いているのでそこで発信しています。それくらいしかできてないので、経営理念をどう浸透させていくかというのが、今の会社の課題でもあります。

坂上:理念はいま冊子みたいなものになっているんですか?A4サイズ1枚ですか?

蛭田社長:貼ってあります。でも地味に張ってあるので、あまり見られない。スマホで見れるようにとかはしてますけど、多分見てないと思うなあ。

坂上:それは課題だと思ってらっしゃるんですか?それともしょうがないかなというか?

蛭田社長:課題感は勿論あります。周囲に浸透させていかなければならないと分かってはいるけど、実際は、後回しになってるのかもしれませんね。

坂上:仕事内容としては、パソコンにデータを打ち込んでいる時間の方が長いんですか?それとも人と打ち合わせをすることの方が多いですか?

蛭田社長:職種によります。制作はデザインやコーディングという時間がほとんどですが、ディレクターはお客さんのところにも行きますし、制作と打ち合わせしたりもしてるんで、1/3くらいは人と接する仕事です。でもパソコンと接する時間はほかの職種に比べて長いと思います。

坂上:その業務内容の中で理念、考え方を浸透させる重要性をどのように感じられてますか?

蛭田社長:製造業でもネット関係でも関係ないと思います。理念や自分たちのスタイルや方針を、しっかりシェアしてベクトルを合わすというのは、組織の上においては必須だと思います。

坂上:理念の浸透の工夫ということで、先ほど勉強会は年2回ということだったんですが?

蛭田社長:勉強会というか忘年会とキックオフです。

坂上:それが丸1日、でも忘年会は夜からですよね?

蛭田社長:2、3時間です。僕、話は短いので最長で30分ですね。

坂上:それ以外の勉強会みたいなことは?

蛭田社長:やってないです。

坂上:個人の価値観と経営の関係ということをお聞きしたいんですが?

蛭田社長:もともと近くないとだめだと思うんですよね。これは教科書的な答えかもしれないですけど。面接の時も、経営理念という問い方では聞きませんが、理念と同じような感覚や同じような判断基軸があるかということは、僕が直接聞きます。

坂上:必ずしてる質問とかはあるんですか?

蛭田社長:変えてます。結構。

坂上:内容的にはどんな?

蛭田社長:働き方、真摯に仕事をちゃんとやるか。正直かとか。「ベンチャーだし、成長を大事に思ってるよ」とか、「まじめに働いて、でも楽しくやろうよ仕事は」とか、そんな感じの話です。

坂上:ご自身の中では、理念の浸透についてはもうちょっと考えていかないと、というところですか?

蛭田社長:それはすごくありますが、すごくあると言っている割に対処できてないですね。事業の成長というのが今は頭の中では強いかもしれないですね。

坂上:盛和塾に入って変わられたことはありますか?

蛭田社長:ほとんど行ってないというのが正直なところですけど。機関誌を熟読して、コピーして持ち歩いたりしています。

坂上:自分が目指すような姿がそこの中にあるというか、ケーススタディーのような根本的な姿勢や、ものの考え方というところが共感できるんでしょうか?

蛭田社長:徹底されてらっしゃいますよね。勿論強く共感しています。

坂上:今、お仕事は時間的には、何時から何時ぐらいでされているんですか?

蛭田社長:朝7時半くらいに来て、そのあと人と会ったりします。夜は打ち合わせや食事があって、家に帰るのは夜11時ぐらいです。

坂上:土日はお休みなんですか?

蛭田社長:完全に休むわけじゃないです。半日打ち合わせ入れたりとかしています。

坂上:ご自宅は近いんですか?

蛭田社長:近いです。中目黒なんで近いです。朝タクシーで来てるんで、15分ぐらい。

坂上:給与はいかがですか?

蛭田社長:うちは給与は業界ではわりといいと思いますよ。構造的に、事業モデル的にはそれでいい。それは今期からずいぶん様変わりで、新築マンションのとかは非常に不景気になってきているので、供給がすごく減ってますから。でも10年そこで飯が食えたんで、変わらなきゃいけないタイミングというのも思ってますけど。

坂上:今、役員の方は何人ぐらいいらっしゃるんですか?

蛭田社長:子会社の役員を入れて7人です。

坂上:子会社にもそれぞれ社長がいらっしゃるわけですね?

蛭田社長:2人いて、1人兼任してて、社長と言われる人は3人いて、あと役員が 3、4人いますね。

坂上:これから先のビジョン的なことでいくと何か?

蛭田社長:成長したいですね。事業的なスケールや内容を成長させたいというのはすごく思っています。

坂上:具体的な数値目標を置いてるんですか。未来に対しては?

蛭田社長:売り上げ20億円くらい。4年くらいで倍にはしたいですね。あと、事業のポートフォリオを整えたいというか、制作だけで大きくするのはやはりリスクもあると思いますので。

坂上:いままでご覧になって来られたIT関係の会社で、理念とか大事にされてる所はどこかありますか?

蛭田社長:そんなにお付き合いしてるわけじゃないです。社内とかお客さんが多いですし盛和塾もあまり行ってないので。オロさんは本当に素晴らしい経営をと思います。カヤックさんも有名ですが、少ないんじゃないですか、この業界には。そもそも制作系なので、理念をかっちりしているところは少ない気がします。

坂上:あと、技術的なところを最後にちょっとお聞きしたいんですが。こういう技術を追求していきたいとかここでナンバーワンになりたいとか、ここを磨いていきたいというのはあるんですか?

蛭田社長:それは会社で違いますね。一般の会社は圧倒的なデザインというか、表層的なデザインでなくてUIと言う、ユーザーインターフェースとか、ユーザービリティーとか、「使いやすくてめっちゃかっこいい」みたいなものを追求しています。不動産の方はやはり、圧倒的にコンバージョンがとれること。こっちは見掛けとかじゃなくて、どうコンバージョンをとるかというのをベースに置いていますよね。

運営の方もいかにミスがなく、効率的かということ。それぞれ目指しているところは違うんで、全体でというわけではないです。全体のベースは技術というよりも、実際に役に立つ、きちんと成果が出るということをベースに、ちゃんとお客さんの対価以上のものを具体的に出すことを志向しています。

坂上:一般的にはデザイン、見た目なんだけど、蛭田社長の意図というか意識があって、より役に立つとか、コンバージョンが取れるとか、機能的なものを求めていくと、ちょうど間でいいのができている、こういうイメージですね?

蛭田社長:今は私が直接は言ってないですが、以前は「結果をちゃんと出しなさい」ということを言っていました。それが社員の目的意識として残ってるところはあると思います。

坂上:これから経営理念を作り直すご予定はあるんですか?

蛭田社長:ないです。

坂上:気持ち的なバージョンアップとかも特にしないで、まずそれより成長なんですね。

蛭田社長:現行のものを当然大切に思っていますので。

坂上:フィット感がある感じなんですね?

蛭田社長:やはり浸透させる努力をしなきゃいけないと思います。

坂上:浸透の点数は何点くらいですか?

蛭田社長:点数は難しいですけど半分はいかないですかね。理念のできあがりの点数は100点くらい。

坂上:ご自分では納得しているものができてて、特に若い子に浸透させていくことに課題を感じていらっしゃるんですね?

蛭田社長:そうですね。入社して短いメンバーとはもっと共有したいですね。

坂上:そうですか。どうもありがとうございました。

経営理念
identity  関わる人すべての幸せを追求する
mission  仕事を通じて成長する
rule
1. きれいな言葉を使う。
2. 楽しくやる。
3. 仲間を大切にする。
4. お客様に喜んでもらう。
5. 良心に基づき行動する。
6. スピードを重視する。
7. 自分で動く。
8. 仕事を全力でやりきる。

DIグループ 経営理念

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

小板橋社長(以降「小板橋社長」と表記)
DIグループ(株式会社大一不動産、大一建設株式会社、株式会社DI・SANWA CORPORATION)・小板橋博幸です。
事業内容は、一般建設(店舗、医療施設、賃貸マンション・アパート)、注文住宅、中古住宅売買、リフォームおよび賃貸マンション・アパートへの入居者募集・管理や生命保険の見直しその他。前年度の売り上げが約45億円、経常利益が約2億円、利益率が約4,4%になります。現在従業員は約75人です。

坂上:次に社長様のプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

小板橋社長:群馬県高崎市で生まれで小学校入学~大学卒業までは東京で暮らしました、51歳です。東京の大学を卒業後、銀行で5年間勤務し、融資や融資外交をしていました。平成5年に妻の父の後を継ぐ形で不動産業を始め、M&Aを経て現在3つの会社の代表取締役を務めています。

坂上:経営理念をつくったきっかけを教えていただけますか?

小板橋社長:当初はいろんな本を読んでて、ひとつの旗印が必要だと思っていました。銀行に勤めていた時、3つのSという標語がありまして、それをもじって3つの何かを作りたいと思ったことがきっかけです。

坂上:さらに根本的なきっかけは何だったのでしょうか?

小板橋社長:銀行です。私は、銀行みたいな不動産建設業をしようと考えたんです。個人の考えで動く三和銀行に思い入れがあって。当時いろんな銀行からお誘いがあったんですが、人で決めたんです。野武士集団と言われるような組織で、軍隊的に動くのではなく、個人の考えで。入行2年目ぐらいの人間が新商品をOKするような銀行でした。そういう先輩にほれて入ったんです。ですから、三和銀行のような会社を作るんだという思いが僕の中に未だにあります。

坂上:平成5年に、そういった思いを形にしたいと思ったということですが、そう思ったきっかけは何ですか?

小板橋社長:業界として、認められるような会社じゃないと感じたことです。例えば重要事項説明書というのがありますが、それを私はだいたいお客さんに2,3時間かけて説明していたんですが、ほとんどの人は1、2分で。『ここにサインして』で終わってたんですよ。当時の業界の人の働く姿勢を見て、この人たちと付き合うのは嫌だし。同じに見られたくないと思いました。

坂上:理念を作る中で気づかれたことはありますか?

小板橋社長:考えることに相当時間をかけました。そこにはやはり顧客目線、顧客起点と、私を含めて社員がどういうかかわり合いを持てるかということを、自分の中で一番ポイントとして考えていました。

坂上:経営理念をつくる期間はどれくらいでしたか?

小板橋社長:作ると決めた時にはもう1日で出来ました。

坂上:この5年間の中で作り上げていったということですね?

小板橋社長:そうです。その中でいろいろ自分の考えがありました。例えば、『夢と感動』というのが第一項に出てくるんですが、これは実は、DIグループのDIに絡んでいます。このDIは元々DAIICHIのDIで、「出会い」を主にしました。そこから本格的に考えた時に、出会いからどこにいくのかを考えたらDreamsを思いつき、さらに、感動という意味のImpressionsを入れました。我々は住環境をやっていますから、お客様と社員が一緒に『夢と感動』に向かっていけたらいいなと。

坂上:ここに100人の中小企業の経営者がいるとして、約6割の人が、『経営理念って大事なのかな?』と思っているとします。その人達向けに理念の大切さを伝えたいんですが、平成5年の時点で経営理念と呼べるものはありましたか?

小板橋社長:もともとは持っていませんでした。

坂上:平成5年から10年の5年間で、どのようなことを学び、どのようなことに悩み、どういうふうに理念を作っていったのかということを、その6割の人達への1つの事例としてお話しされるとしたら?

小板橋社長:元々僕は一人で何でもできると思っていたのですが、全くできないことに気付いたのです。銀行で融資外交をしていた時も、何しにきたんだ、と言われることが圧倒的に多かったです。また、不動産業を本格的に実践するにあたって、名刺を3,000枚くらい刷って、1件1件歩いて色々提案したんです。そこで節税のアドバイスなどをして『知らなかった。ありがとな。』と言われたことがきっかけですね。ありがとうと言われたことがすごく嬉しかったんです。

坂上:つまり、普段言われない環境の中で、仕事を通じてお客様からありがとうと言ってもらえたことがご自身の嬉しさだったということですね。それを積み重ねて、この言葉に結実したのですか?

小板橋社長:本当にそこですね。私は人が好きだと言い切れるんです。結局、自分を好きになってくれた人が情報をくれるようになりました。だからツキはきっと人が持って来てくれるものだと思っています。だから、その人との「ありがとうの関係」を築けば、その人が持ってきてくれる。その人のために頑張ろうと。

坂上:実務から理念を作り上げる人、本や人との出会いから影響を受ける人などおられますが、ご自身の場合は?

小板橋社長:平成10年に社員を急激に増やしたんです。それまで勤めていた業界の常識が嫌だったので、自分の考えを素人に教えたいというのがありました。今もその主婦たちが残っているんですが、当時、彼女たちは仕事が面白いと言って非常に喜ぶんです。彼女たちは全く不動産というのを知らない中で、不動産ではなくて人間と話をすればいいんだから、ということで窓口をやってもらいました。人と話ができることを面白いと感じる子たちがたまたま採用できたということもあるでしょうが。

何かあると、『社長ありがとうございます。何だか楽しくて。』なんて言われると、乗っちゃうタイプなので、どんどん増やそうという気になっていきました。自分も楽しくなるので。僕、実は仕事で楽しいと思ったことがないんです。

坂上:いつの時代ですか?

小板橋社長:ずっとです。仕事が楽しい、明日仕事だって思ったことは未だに一度もないんです。今でもそうです。

坂上:先ほどのことも、仕事ですよね?

小板橋社長:いえ、戦略練りを前の日にやる中で、資料作りの時に「明日いけるぞ、楽しい。」ということはないですね。「よし、この方に納得していただくぞ。」というようにずっとやってきたので、銀行時代を含めても、「明日仕事だ、楽しい」っていう感覚はないです。要は、僕の中で今解釈してるのは「嬉しい」なんです。嬉しいを求めてるんだろうなと思います。楽しいではなく嬉しいを求めていて、お客様にありがとうって言ってもらうと「嬉しい」ですね。それがほしいからやってるんだと思います。それが最大のモチベーションです。

坂上:経営理念をつくる上での工夫は?

小板橋社長:実は3つ同時に平成10年につくったわけではなくて、理念の2番目として挙げたものが10年に作ったものです。

坂上:二番目というのは、『お客様第一主義を貫き地域社会の・・』というところですね?

小板橋社長:そうです。それが最初に作ったもので、1番目と3番目ができたのは平成17年です。途中で2つも考えていたんですが、わざわざ足す必要もないと思っていました。平成17年というのはM&Aした年なので、そこで足しました。

坂上:なるほど。推測するとM&Aっていうのは2つの会社が一緒になるということなので、それまでの経緯を知らない人がいるので、この言葉にしようと思ったということですね。つまり、経営理念をつくるひとつのきっかけというのは、M&Aをしたことで、事実としてはM&Aですが、集う人たちに考えを伝えようとした、という捉え方で合ってますか?

小板橋社長:そうです。既存の社員と融合させて、うちの会社の傘下に入ってもらったので、これの下でやるよっていうのを、元々3つの感覚があったので、最初の時はこの真ん中だけでいいっていう考えで、でも常に1番目と3番目の話はしてましたんで、そういう中でいよいよ正式に文字にしたというのが17年です。

坂上:経営理念は必要だと思いますか?

小板橋社長:なければならないものだと思っています。最初の頃は、必要な旗印、自分の思いを伝えるものと認識していたんですが、今はお客様に『うちの会社はこういう経営理念で、私もこれに感銘して仕事してます。』と言う社員もいます。自分の分身をつくっているイメージです。自分の凝縮した考えでやっていたのが、今ではそれを社員が喋ってくれる。会ったことのないお客様に、『すごい経営理念でやってらっしゃるんですね。』と言われた時に、こうやって変化していく事実が、経営理念がなくてはならないものと思った理由です。

坂上:その経営理念を作る根本として、ご自身の中に何があるのですか。

小板橋社長:私は基本的に、嫌いな人間とは仕事はできないと思っています。ですから、この経営理念が嫌いな人は会社にはいない方がいいと言っています。どんなに優秀でも嫌いな者同士を合わせたら、プロジェクトも絶対うまくいかないと思っています。多少能力が落ちても価値観が合う者同士の方が、楽しんで仕事ができます。

坂上:分身というのはその考え方に合っていますね。そして、社員が言うのは考え方が同じだから。

小板橋社長:そうです。例えば一日一生のところなんていうのは、数人の社員が、未だにそれを読むとしびれると言います。社員が僕を惚れてくれていなければ仕事はできないと思っています。というのは、私は銀行時代に嫌いな上司と仕事をするのは嫌でしたから、いいパフォーマンスを出せたかというと疑問です。でも惚れた人には、アホみたいにやっていたんです。絶対この人を業績優秀にさせるんだと。

坂上:ご自身が好きだったその人は、どのような人だったんですか。どのような価値観にご自分は共鳴したんですか?

小板橋社長:自分に厳しく、かつおおらかな方でした。人間的に惚れてしまって、おおらかさと仕事に対する厳しさ、細かさを持っていました。

坂上:経営理念と業績の関係は?

小板橋社長:確実に伸びています。

坂上:具体的にはご自身の会社ではどのようなことがありましたか?経営理念ができてから業績が伸びたという実例を一つ教えていただけますか?

小板橋社長:例えば部署を越えて協力しあえることです。一つの例でいうと、例えば賃貸の窓口にはハイシーズンというのがあり、この時はお客様が集中するんですが、それを賃貸の人間だけではなく会社全員でやってくれるんです。例えば建築の人間も、自分の業務を置いといて自然発生的に、忙しいシーズンは皆でそこの部分を助けてくれます。

坂上:会社の規模も変わっていると思うんですが、平成5年に5人程、平成10年で10人程、平成17年の時には何人になられたんですか?

小板橋社長:平成17年で、70人になっています。

坂上:部門は当時、いくつぐらいありましたか?

小板橋社長:賃貸、管理、営業、住宅建設、一般建設、経理の6部署ですね。

坂上:では各部署に10人ずつぐらいいると。すると、ある部署が忙しい時に、経営理念がなかったとしたら?

小板橋社長:たしかに手伝う人間はいました。私も毎日これを唱和していたということや、チーム活動であるということを常に言い続けたということもあります。例えば、それをやることによって、それまでは『俺は俺。』と言っていた人から手伝ってくれてありがとうと言われたんです。それがあってから、一番そういうことを考えてなかったような人が、自分から声をかけるようになっています。例えば土日になると、今度の土日大丈夫?という具合に。

坂上:理念は誰が作ったんですか?

小板橋社長:私一人です。

坂上:理念をつくるにあたって苦労はありましたか?

小板橋社長:自分なりに現場で体感したものをメモにとっていました。今もトイレと車の中と寝床に置いてあります、

坂上:仕事のメモですか、それとも理念に近いメモですか?

小板橋社長:決めてないです。何か考えたら書こうと。

坂上:その蓄積されたものが理念に集約されていったという感じですね。平成10年から17年までの7年間があるんですが、この間もメモをとりながら?

小板橋社長:気づいたことを書いていました。

坂上:理念をなぜ作ったかというと、ありがとうと言われた嬉しさや、自分で作ってみたいということでしたが、加えて一言でいうとどんな理由が大きかったですか?

小板橋社長:人数が大きくなったというところが大きいです。10人以下だったら毎日色々話しますから、なくていいとは言いませんけど。やはりまとめるには必要ですね。

坂上:拠点が別になるとか、人数が増えることによってということですね?

小板橋社長:それは確実にありますね。

坂上:経営理念を浸透させる工夫を具体的に言うと?

小板橋社長:M&Aする前から続けてやっているのが、毎月の社内レクレーションです。内容はスポーツと決めていて、例えば体育館でバドミントンを半日集まってやっていて、もう14,5年になります。窓口には『社内研修の為』というような張り紙をして、昼間に体育館で私も一緒に大騒ぎします。普段も声をかけるようにはしていますが、その時ほとんど全員に声をかけられますね。みんなアトランダムでチームになりますから、係も会社も超えてやるので初めて会う人もいるんです。普段は会社の場所も隣町にあったりするので、そこで会うことで非常に効果は高いです。

坂上:それは業務ですか?

小板橋社長:僕はこれを会社の仕事と言ってます。給料も出してます。

坂上:給料出してるというのは重大だと思いますね。意外とそういうものって大事なんですね。他には?

小板橋社長:毎朝朝礼時に理念を唱和しています。

坂上:何分間やるんですか?

小板橋社長:朝礼は月曜日は1時間程やります。月曜日は私の講話の時間と決めていて、半日する時もあります。これはもう15、6年続けています。講話をしながら、あとは質問や会話をして、こんな時どう考えるんだというのをひとりひとりに言わせます。そうするとみんな聞きますから。

坂上:何か会社の実例についてですか、それとも実務についてですか。

小板橋社長:決めてないです。そのために考えるのではなくて、前の週に自分が考えていたことや経験したこと。その内容の中でどういうことが考えられるか。俺はこう考えたんだと。

坂上:自分が思ったこと、価値観をそこで伝えているということですね?

小板橋社長:そうです。その時お前らだったらどう思うかとか。

坂上:拠点が3つとか4つになってきた時にはどうするんですか?全員が一旦集まるんですか?

小板橋社長:月曜と火曜に分けてます。内容は多少リンクしながら。建設の人間は現場を見るから、社長の代理的な人間なので、リーダーは何なのかという言い方をすることが火曜日は多いです。

坂上:理念を浸透させる時の苦労はありますか?

小板橋社長:同じことを一年間言い続けています。言葉のいい方が違うだけで、言っている内容はひとつのことだけです。

坂上:ご自身の中で、一年間にひとつテーマを決めるということですか?

小板橋社長:自分の中であるのは、どうやったら常にみんなが同じ方向を向いてられるのかということ。自分の生き様を喋っています。

坂上:週に1回、部門が2つということでしたが、1部門だとしても、年間52週あるので、年間に50時間ぐらいはそういった時間に使ってるということですね?

小板橋社長:確実に使っています。

坂上:この1年間で新卒何人、中途何人ですか?

小板橋社長:新卒は1人。中小企業なので、定期的にはとれないということと、どちらかといえば僕は、今は中途でいいと思っています。中途は4人です。

坂上:80人のうち、去年入った中途の方が3人か4人いらっしゃる中で、どのように理念を浸透させるのか教えていただけますか?

小板橋社長:月曜日にやる。それは全く変わりませんし、あとはその人たちの前では、いつもすれ違えば声をかけます。

坂上:関係性を作ろうとされているということですね。

小板橋社長:私との関係性は絶対必要だと思います。私が新入生の頃、支店長に声をかけられた時にすごく嬉しかった記憶があるんです。逆に、社長から声をかけられたのは初めてだと感動されたこともあります。

坂上:例えば中途で入ってきた人に、座学をさせるといったことは?

小板橋社長:あえてそれはしていません。座学はバランスをとって、いわゆる幹部と、真ん中ぐらいの社員と、新入生を集めた朝会というのをやっています。

坂上:どのくらいの頻度でされていますか?

小板橋社長:3カ月を1クールとして、毎週月曜日の朝7時から1時間。私が経営についてとか自分の生き様を、朝礼とは別に座学として勉強しようということでやっています。

坂上:個人の価値観と経営理念の関係は?

小板橋社長:経営理念をそれまで気にしてなかったようなタイプはいます。基本的には、そういう人間に重要な仕事をわざと渡します。確実に辛くなる瞬間までもっていくんです。一人じゃできないということを分からせたいので。だってお前自分でできるって言ったじゃないかと。そして、ちょっと飲み行くかと言って、飲みニケーションをとります。

坂上:そういうズレが度々起こる感じではないんですか?

小板橋社長:度々は起きないです。今、そういう人間は思いあたらないですね。

坂上:飲みニケーションっていうのは会社では定期的にやってらっしゃるんですか?

小板橋社長:ローテーション組んでというのはないですけど、例えば月に1回のレクレーションのあとは、みんなで行ったりします。

坂上:必ず月に1回はレクレーションプラス飲み会があるということですね。それ以外にはありますか?定期的に。

小板橋社長:あとは社員同士ではそこそこいってるんでしょうけど、私は必ず名前を呼んで連れ出しますね。

坂上:どれくらいの頻度ですか?

小板橋社長:思いつきもありますし、自分の中ではあいつは来週絶対誘うとかですね。あいつちょっと悩んでそうだから誘うぞ、というのは、日報を毎日読んで決めています。

坂上:日報と繋がってるんですね?

小板橋社長:はい。私は15年間毎日、日報は全員の分を必ず読んでいます。

坂上:何で来るんですか、メールですか?

小板橋社長:紙にしています。メールにしたこともあるんですけど、何かしっくりこなかったんです。遅くても翌日になりますけど、できる限り夜中に。

坂上:70名分ですか?

小板橋社長:そうです。そして、気づいた人間には夜中にメールを打つんです。何かこいつ悩んでるぞ、ということが、日報をずっとやってると確実にわかってきますね。

坂上:コミュニケーションとしてですね?

小板橋社長:文字の勢いとか、内容とか、量が違ってきますね。

坂上:これから続く経営者に何かメッセージをと言われたら?

小板橋社長:自分は、自分と同じ方向に向けるという意味では、経営理念の下で会社をやっています。中小企業の場合は、人が一人で何割も占めてしまうような仕事もあります。そういう中では、経営理念の下でやっているということは、確実にそれが浸透した時に、自分の分身になってくれますし、自分のフォロー役にもなってくれますし、お守りになると思います。

坂上:経営理念の満足度、浸透度は100点満点で何点でしょうか?

小板橋社長:経営理念の満足度は85点。浸透度は75点ですね。

経営理念
~夢の実現と感動の共有~
一、私たちは住環境創造を通じて
社員一人ひとりの夢の実現と震えるような
感動を共有できる企業を築こう
一、私たちはお客様第一主義を貫き地域社会
の繁栄に貢献することで企業の社会的責任を果そう
一、私たちは3つのC(change、challenge、communication)
を実践することで一日一生の決心で生き抜こう

gCストーリー株式会社 経営理念

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

西坂勇人社長(以降「西坂社長」と表記)
gCストーリー株式会社・西坂勇人です。
事業内容は、全国チェーン本部様向けの看板の新規作成、メンテナンスやトータルソリューションサービス、コンプライアンス対策などです。前年度の売り上げが約30億円、経常利益が約3億円、利益率が約10%になります。現在従業員は約60人です。

坂上:次に社長様のプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

西坂社長:43歳、大学卒業後、看板業界の材料を販売する商社に勤めた後、2000年にインターネットベンチャーを仙台で創業し、経営者暦としては14年で、現在の会社を創業してからは9期目になります。

坂上:ご自身が創業経営者ということですが、経営理念をつくられてからどのくらいになりますか。

西坂社長:まず、会社の名前であるgCストーリー株式会社のgC、growth for Contributionとは、「成長と貢献」という弊社が最も大切にしている考え方です。「貢献のために成長することが生きている意味」という僕の基本的な考え方があって、その考えを持ち始めたのが32、33歳の時ですね。これが理念と言えば理念かな。その体現の場が会社であり、簡単にいうと利他主義に近いですね。そこを軸に10年あまりやってきました。2011年に盛和塾に入って、稲盛さんから利他主義、貢献という話を聞いた時に、言ってらっしゃることが僕と同じだなと思ったんですね。2011年4月入塾し、その半年後には理念を明文化しました。

坂上:成長と貢献という概念はどこから来たんですか?

西坂社長:「何のために生きるのか」というのは、学生の時からずっと悩んでいて、その答えが働いてからも出なくて、会社起こしてからもわからなくて、何のために生きるんだっけ?ということをずっと考え続けていたんです。ITベンチャーの頃、友人と話していて、その時なんとなく「成長と貢献」というキーワードが出て、思い立ったという感じです。

坂上:その時は自分の中で生きる意味を探してらっしゃる瞬間があったということですね?

西坂社長:そうです、15年くらいずっと探してました。

坂上:その中で影響を受けた本などはありましたか?

西坂社長:「7つの習慣」とかは影響受けてますね。学生時代はほとんど本を読まない人間で、社会に入ってその時の社長に勧められていろいろ読みましたけど、わかってなかったですね。7つの習慣を読んだのは20代前半で、気付いたのが33歳頃ですね。

坂上:そのあたり熟成する時間が必要だった訳ですね。

西坂社長:そうですね。

坂上:経営理念をつくるきっかけは?

西坂社長:内川さんという人の紹介で盛和塾に入ったことですね。僕が悩んでいたその答えを全部言ってくれる、稲盛塾長の話を初めて聞いて、それを何回も聞いているうちに、僕のためにしゃべってるんじゃないかなと思って。

坂上:印象に残ったキーワードは?

西坂社長:「何のために生きるのか」ですね。経営者の覚悟などを説き明かされて、「今までに起きた苦しかったことは、そういうことなんだな」という受け止め方をしました。話が完成されていて、全部つながっているというか、今まで疑問に思っていたことに対して、全部答えてもらえるような印象を持ちました。

坂上:経営理念をつくる期間はどれくらいでしたか?

西坂社長:理念だけで言うならば、ここだけなので(冊子を見て)

坂上:会社が存在する目的―全従業員が幸福で調和し、取引パートナー・顧客に感謝される存在であり、人類、社会の調和に貢献すること。その次にビジョン、将来こうありたいという姿があり、組織ビジョン・事業ビジョンとあり、事業に関わる定量的な目標というものがあり...こんな感じですか。

西坂社長:そうですね。

坂上:理念を作る中で気づかれたことはありますか?

西坂社長:成長と貢献というのは僕の中のイメージとして、貢献の範囲を広げていくということだったので、会社をつくったら、そこに集まる従業員を守り、それが取引先に広がって、できれば人類社会に広げていきたいということはイメージとして持っていました。

坂上:経営理念をつくる上での工夫、苦労は?

西坂社長:理念までのところは自分が思っていたことなので、特にはありません。

坂上:冊子になる状態まではどのくらい時間、何人でつくられたんですか?

西坂社長:1人でつくりました。1年くらいです。

坂上:京セラフィロソフィの項目に沿いながらつくられてるところはあると思うんですが、どんなつくり方だったんですか?

西坂社長:入塾してすぐ理念をつくり、社員には最初、京セラフィロソフィを渡しましたが、社員からすると社長の言葉が聞きたいということもあると思うし、自社でつくらなければいけないなと思って。1年間ぐらいは、出勤時にCDを聞いて考えて、自分にとってすごく大切だと思うことと僕のオリジナルを接合させたりして取りまとめました。結局、塾長が書いてることが7、8割ぐらいで、僕の思うことをちょっと加えた感じですね。

坂上:これをやっていくのに1年かかったというイメージですか?

西坂社長:最初は、理解も浅い段階でフィロソフィを語るおこがましさがあって、自分なりの全貌が見えてきてからペンをとりました。4月に入塾して1年後のゴールデンウィークに書き上げた感じです。

坂上:その1年で、CDはどのくらいの頻度でどのくらいの時間聞きました?

西坂社長:毎朝1~2時間の移動時間と、土日も含めて家で暇な時間があったら聞いてました。

坂上:フィロソフィのシンボルに出会うステージが1、毎日聴いて吸収していくのが2、まとめていくのが3ですね。そしていざ発表しようとすると、自分が言っていいのか、という瞬間があるということですね。そこからはどうやって抜けたんですか?

西坂社長:塾長とお会いして、教えていただいていることへの恩返しの気持ちと、社員は僕を信じて入ってくれてるので、思っていることをちゃんと発表して伝えようと思いました。

坂上:理念をつくるにあたって苦労はありましたか?

西坂社長:ないです。楽しかったですね。

坂上:経営理念は必要だと思いますか?

西坂社長:生きる目的の話と同じで「何のために会社をやるのか」ということだと思います。経営理念とは存在目的だと思うので、目的がないということはありえないと思います。

坂上:目的があって行動があると思えない人もいますよね?

西坂社長:それは新卒学生の説明会の時によく話します。例えば「何のために大学に行っているか」と聞くと、目的を持ってない人が大半なんです。暇つぶしにゲームをし、ゲームが目的化して大学を留年しましたという、くだらない事例があるんだけど、それについてはどう思う?みたいな質問をします。

坂上:やはり目的をしっかり持つことが大事だということですね。

西坂社長:そうですね。

坂上:経営理念と業績の関係は。

西坂社長:うちの場合は、盛和塾に入って理念をつくったことによって急に良くなったので、決して実力がついたわけじゃないですが、ボーナスポイントみたいな、神さまがいるとしたら「その方向だよ」って言ってもらった感じがすごくしましたね。

坂上:ちなみに業績の数字はどんな感じですか?

西坂社長:ここ3年間ほど30億円で横ばいですが、それ以前は9億くらいだったのが9億、15億、30億になりました。フィロソフィ手帳をつくった半年後に、プログラムを組んでアメーバ経営を入れました。人数も30人くらいなので。フィロソフィ手帳は自分でつくって、アメーバは、アメーバゼミナールに行きました。塾長のおっしゃることは心の問題なので、ここをちゃんと考えれば自分でもできるなと思ったんですが、浸透するには5年はかかるだろうと思い、それをショートカットするために入れました。3年前は、ただラッキーが起きた感じだったんですけど、今は組織に自信があるというか、安心感が全然違います。

坂上:今アメーバはどのくらいの数あるんですか?人数は?

西坂社長:アメーバは12です。人数は5人×12で60人ぐらいです。

坂上:リーダーは育ってますか?

西坂社長:新卒6、7年目ぐらいで10億とか20億とか見てますからね。中途で入った優秀な社員は、今まで上のほうにいたんですけど、そこを全部新規事業にして、新卒の子たちはフィロソフィとアメーバだけで育っています。

坂上:アメーバ入れてらっしゃるから、理念がより効くわけですね。

西坂社長:そうです。完全にセットですね。

坂上:理念をいつ作ったかということでいくと、盛和塾に入ったのをきっかけに4年前、創業6年目につくられたということですが、以前から作りたいという思いはあったわけですね。

西坂社長:そうです。

坂上:どこでつくったかというのは、基本的には自分自身であり、だれがつくったかというと?

西坂社長:100%自分です。

坂上:これから来るベンチャーの若い子にアドバイスするとしたら、全部自分でつくったほうがいいか、メンバーを入れた方がいいかどちらでしょう。

西坂社長:僕は100%自分でつくるべきだと思いました。自分の信念や、こうしていきたい思いが強くて会社をやっているのなら、その思いを皆に伝えるために100%になると思うんです。僕の場合は、自分の信念を世の中に問いたいからこの会社をつくったので、そこの思いは誰かが言うのではなくて、自分がこういうものをつくりたい、というメッセージとして出すべきだと思いました。それを皆が共有して、議論の余地があればあとから追加していく。バージョンアップをする時は社員を入れようと思いますが、最初の土台は自分でつくるべきだと思います。

坂上:1つは創業経営者であるということと、もう一点は塾長の言葉を模倣した部分があると思いますが、まったくゼロから自分でつくった方がいいか、誰かをモデルケースにしたほうがいいかというのはどうでしょう。

西坂社長:それは自分が学ばなくてはいけないと思います。

坂上:もう1つには、作成する上で、自分の生まれ育ちや、自分自身を振り返った方がいいと言われますが、そのあたりについてはいかがでしょう。

西坂社長:うちの会社の特徴は、全員がパーソナルミッションをもっているということと、四魂という考え方があるんですが、この四魂という考え方を出口光さんから学びました。出口さんは、慶応義塾で心理学、アメリカで応用行動分析学を学び、帰ってきてからは心理学の教授をやっていた人です。その彼の考えが四魂というもので、簡単にいうと、人間の魂は愛、勇、親、智の4種類に分かれているといいます。

例えば、看護師は愛をベースに人を助けたい、勇の人は成し遂げて行くことで大義を果たしたい、親の人はみんなが仲良くできるよう場を和ませたい、智の人は新たな発見をすることで世の中を良くしたいというようなことです。結局、みんなが世の中を良くしたいと思っていても、お互いの魂の事を分かっていないとうまくいかなくなるという話で、会社の中で、お互いの四魂を知り合うことで、こういうふうに世の中を良くしたいと思っている人だなと尊重していくこと。そしてそれぞれに、四魂に基づいたパーソナルミッションがあって、そのベクトルが会社全体の使命と合っていくイメージを僕は持っています。

坂上:結局、個人のミッション、あなたは何のために生まれたの?ということと、この会社は何のためにあるの?という、会社と個人のベクトルが合わないと、いてもつまらないですもんね。

西坂社長:そうです。

坂上:経営理念を作るのにいくらかかりました?

西坂社長:お金はかけてないですね。

坂上:経営理念を浸透させる工夫、苦労を具体的に言うと?

西坂社長:懇親会(以降、コンパ)とこのgC guide(以降、ガイド)、それと評価制度です。うちの評価はこの360度評価だけにしています。

坂上:業績を問わないんですか?

西坂社長:問わないです。360度全人格多面評価、という言い方をしてるんですけど、心を高める経営のために、スタッフの心が高まっていければいい話なので。心を、入門者、錬士、範士、師範代、最高師範と5段階のグレードに分けて、最高師範になると人類社会すべてを良くしようと考える。さっき言ったように成長と貢献に広がっていく。それに当てはまるガイド、フィロソフィを決めています。

坂上:冊子の状態にして、何部ぐらいつくられたんですか。

西坂社長:最初は京セラフィロソフィを渡して、コンパをやっていました。

坂上:フィロソフィを渡したのは盛和塾に入ってどのくらいですか?

西坂社長:ほぼ直後です。買ってどんどん渡しました。

坂上:なんて言って渡したんですか?

西坂社長:そもそも成長と貢献ということは言っていたので、気付いたよ、すごいのあったよ、という感じで。

坂上:社員さんは読みました?

西坂社長:読んでる子もいるし、そうじゃない子もいましたけど、7割位読んでるんじゃないですか。「成長と貢献」というのが手前にあったので、うちは比率高いと思いますよ。

坂上:何もない状態で渡しても、大半の企業だと1割読むか読まないかですが、最初の土壌が進んでましたよね。

西坂社長:そうだと思います。

坂上:コンパはどのくらいの頻度で、どういうふうにされたんですか?

西坂社長:試行錯誤でいろいろやりましたけど、全社コンパで当時は約30人で月2、3回でしょうか。平日の夜に酒飲みながら、19時から22時くらいまで。

坂上:コンパは今はどんな感じですか。

西坂社長:僕がやっているものでは、入門者にフィロソフィを教える役目の錬士に対して、教えられない、どう伝えたらいいか分からないフィロソフィの部分を話させて、そこに僕がフィードバックしていく研修があります。アメーバだとガイドの中に、メンバーを幸せにする責任がある、というのがあります。幸せにするとは、フィロソフィとアメーバをきちんと伝えることだという、すごく重要なミッションがあるので、今だとアメーバごとに自分たちでコンパをしていますね。そこでフィロソフィを使ったり使わなかったりしてると思いますけど、結局、評価制度に入ってるので行き着くんですよ。行き着かないとダメです。

あと、朝礼でガイドをベースに所感をやったりとか。範士、師範代になってくるともう、フィロソフィ教育というよりも、人間関係のしがらみで、どうしても言えないようなことを言ってもらう。それをみんなで共有し、自分だったらどうするかとか、意見を言い合う。フェーズに合わせてやり方は変えています。

坂上:例えば、入門者の方1人に対して、月に何回くらいコンパをやっていますか?

西坂社長:入門者は、部署で月に1回は必ずやっています。僕との研修は、1年目はガイドのような内容で、毎月4時間やっています。

坂上:部のリーダー、例えばアメーバリーダーとのやりとりはどのくらいですか?

西坂社長:月1回4時間ぐらいです。

坂上:その他にはあるんですか?

西坂社長:他にはないです。ガイドをどうこうよりも、色々悩んでいることの答えがガイドなわけじゃないですか。僕の社長研修でも、今何をどう考えてますか。ガイドはこういうふうに書いてあるよ、みたいなフィードバックの仕方で、基本的な考え方は統一されているので。僕もあるし、部署もあるんだけども、それ以外に、あいつ最近心配だっていうと、集中的にみんなが、飲みに行くぞ、とかそういうことが起きますね。

坂上:全然知らない人が御社のことを知りたい時には、どれになりますか?パートナー研修、リーダー寺子屋研修とか。

西坂社長:一番は評価制度ですよね。

坂上:社長の時間でいくと、1年間では何時間ぐらい研修してる感じですか?

西坂社長:月に4×4時間、週1回は誰かと半日研修をやっています。

坂上:1年目の子だとどうですか?

西坂社長:各アメーバによって違うんですが、よくあるのは、1チーム5人くらいで順番に発表していくものです。これは朝礼でも同じことをやっているので、そこもフィロソフィ教育ですね。出欠確認の後に担当が出てきて、ガイドに沿って日常の事例を話すんです。

坂上:自分の事例とここにあるフィロソフィを組み合わせてくるんですね。それが何分ぐらい?

西坂社長:2、3分ですね。あと盛和塾の体験発表を真似して、体験発表をやってます。毎週木曜に1人7~10分、全員に回してお互いに知り、コメントし合うという。僕は、一番弱いところこそさらけ出せ、という文化をつくっているので、7分ぐらいのときに、「実はもう会社をやめたいと半年前に思ってました」「あの人が憎かったんです」という話を、コーチと原稿のやり取りをして発表します。

坂上:じゃあ原稿を書くんですね?

西坂社長:もちろんです。そろそろ冊子ができると思います。

坂上:7分だとどんなもんですか?

西坂社長:原稿用紙10枚くらいですね。

坂上:それを、師範代に近い何年目かの人が、下の年次の人を見てあげて、どれくらいの期間でできるんですか。

西坂社長:結構えぐるんで時間かかるんですよ。順番が回ってくると、この機会があって向き合いましたみたいな。それが週1回、社員が60人くらいなので、1年間で1回ずつまわってくる感じです。

あとは、目標設定シートみたいな物があって、うちの場合は360度評価になるんです。上の格に上がるために、君は(gC guideの項目である)「燃える闘魂」ができてないとか、「常に明るく」ができてないとなると、メンバーと上長がフィロソフィに関して、君はここが大切だと思うよ、というのを紙に残して集めてきて、ちゃんと面談するのがルールになっているんです。面談してきたものを上長が、役員や僕がいるところで、彼の足りない所はこうだからこういう話をした、ということをみんなでディスカッションをするのを半年に1回やっています。

あとアテンダー制度。これは新入社員が入ったら、リーダーじゃなく錬士の子たちに、初めてマネジメントさせるんです。新入社員が10人いれば、アテンダー10人が月に1回集まって、彼がいまどんな状況なのかを話させるんですよ。僕が1年目、2年目研修をやった直後に、アテンダーミーティングをするので、何日か前に会った彼の状況がだいたい分かってるんですね。アテンダーが、彼はこうですと言うのを、いや本質的にはそうじゃなくて、こういうことだから、こういうふうに導いてあげるんだよ、という話をするようにしています。

坂上:その上の1個リーダーの子にですね。

西坂社長:そうです。アテンダーとMBOをつなげていくことと、コンパ、研修という制度ですね。

坂上:つまり、それがすべてこのフィロソフィ、gCguideと呼ばれる、フィロソフィ手帳とも言えるかも知れないですが、これを元にすべてが行なわれてるということですね。

西坂社長:そうですね。

坂上:ここに軸があるので、ここから外に出ないし、単語がここに集約されてるということですよね。

西坂社長:そうです。

坂上:360度って具体的にはどうやるんですか?

西坂社長:イメージとしては上の2人、同期の2人、下の2人が、「に明るく」は何点、と点数つけて、この合計の平均で格が上がったり下がったりして、それで給料が決まります。

坂上:業績に対するコミットがないということなんですが、業績はアメーバで見てるからですよね。でもそれは何でコメントするというか、どういうフィードバックをするんですか?

西坂社長:そんな人いないです。アメーバ会議はすごく厳しくいきます。例えば、お前の会社が赤字ということは、普通の会社だったら従業員を守れないということだけど、それについてはどう思うんだ、ということですよね。だからアメーバ会議では泣いたりする人もいます。

坂上:アメーバリーダーは平均何歳ですか?

西坂社長:20代後半だと思います。

坂上:理念を浸透させる時の苦労はありますか?

西坂社長:試行錯誤しましたよ。反対派みたいな社員がいるので、そこは手を変え品を変え、いろんなことをやってきました。

坂上:それは無視をしたわけでもなく、その仕組みであなたも参加してね、というものをつくりあげてきた感じですか?

西坂社長:そうですね。

坂上:個人の価値観と経営理念の関係は?

西坂社長:パーソナルミッションです。

坂上:これから続く経営者の人に何かメッセージをと言われたら?

西坂社長:従業員は社長に人生をかけてここに集まってるんで、そこにちゃんと応えないといけない。社長になることが目的じゃないということです。

坂上:社長になることが目的ではなくて、社員を幸せにすることが目的だということですね。ありがとうございます。

【経営理念】
全従業員が幸福で調和し、取引パートナー・顧客に感謝される存在であり、人類社会の調和に貢献すること。
【大切にしている考え方】
成長と貢献(growth for Contribution:貢献のための成長)

株式会社オロ

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

川田社長:株式会社・オロの川田です。
事業内容は、大企業を対象に、インターネットを中心としたマーケティングの戦略立案、構築、運用支援。もうひとつは、中小の成長企業を中心に、クラウドでのERP、統合業務システムを提供しています。前期の売上が24億、経常利益が2億4,000万で、利益率が10%です。毎年20%の継続的な成長を目指しています。従業員数は海外の拠点合わせて300名ほどです。

坂上:次に社長様のプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

川田社長:41歳、現在の会社を創業して15年になります。キャリアというか勤めた経験はないので、この会社1社です。

坂上:ご自身が創業社長だということですが、起業しようと思われた経緯をお聞かせください。

川田社長:経営者が多い家系で育ったので、幼少期から「将来的には会社経営をやっていきたい」というのをすり込まれていました。縁あってソニーの創業者である、盛田昭夫さんと井深大さんの本を読ませていただいて、創業の立派な経営者の方々に感銘を受けたことが大きかったと思います。

坂上:一番影響を受けた本は?

川田社長:大学時代に影響を受けたのは、ソニーの社内で配られた、お二方の創業について書かれた二冊の本です。それに一番感銘を受け、起業のきっかけになりました。その後も立派な創業経営者の本でずいぶん勉強させていただきました。

坂上:ご親族のことについて教えてください。

川田社長:父は創業した会社の二代目をやっておりまして、親族には、建設メーカーや部品製造業などの経営をしていたり、個人で開業していたりという方が多かったです。建設業で比較的中堅の会社には、親族同士で一緒に同族経営のようなことをやっている会社もありました。

坂上:事業としては建設業ですか?

川田社長:父は小売りです。

坂上:物をつくる事業をされている方を身近に感じていたということですね?

川田社長:そうですね。

坂上:経営理念をつくるきっかけは?

川田社長:本質的に、経営理念をつくるべきだというのは成功した経営者の方々の書籍から学び、気付いてはいました。私は友人と会社を始めていますので、将来仲違いしないようにするために、会社の目標・目的をしっかり定めて、個人の都合ではなく、その目標・目的に合意してがんばろうと思ったことが、経営理念をつくるきっかけになりました。

坂上:それは過去に読まれた本、会われた方の中で、仲が良くて二人ではじめたとしても、うまくいかない会社などを知ったり見たりした、というきっかけがあったということですね?

川田社長:そうですね。

坂上:理念をつくる中で気づいたことはありますか?

川田社長:人それぞれ目指しているものや目標は大きく違うので、それを創業初期のメンバーですり合わせてつくりました。「世界に誇れるような製品やサービスをつくりたい」「自分たちの生み出したものをより多くの人に使ってもらいたい」ということを、大半の技術者は志として持っていますね。

私としてはこの志を通して、「世の中をより良くしたい」「社員や関連する人々、幸せにしてあげられる人の絶対数を増やしていきたい」という思いがありました。技術者からすると、従業員を増やすことは目的ではないですが、私の目標と彼ら技術者の目標とが二つあって、それをお互いに理解することができ、どちらも正しいと感じていますので、いいんじゃないかと思っています。

坂上:そこからより多くの人に考え方が動いていったんですか?

川田社長:もともと創業初期から「より多くの人を幸せにしたい」と思っていました。個人で得られる幸せは有限で達成しやすいという印象があり、自分の人生目標をそのような有限なところに設定したくはないという気持ちもありました。

坂上:それは限られた人生の中でより高い目標を目指していきたいという気持ちが強かったということなんでしょうか?

川田社長:そうですね。単純にいい暮らしをしたいなら、大企業に勤めてもよかったですし、親の事業を継いでもよかったでしょう。それを選ばずに自分でゼロからスタートしていくことは、その選択肢以上の達成目標がないと見いだせないですね。

坂上:経営理念をつくる工夫は?経営理念は必要だと思いますか?

川田社長:理念を作ることはそんなに大変ではありませんでした。20~30人の会社だったら経営理念はなくてもいいと思います。マンツーマンでコミュニケーションが取れていれば、社長の思いが伝わりやすいですからね。人数が増えるとコミュニケーションの時間も減ってきますし、会社とのベクトルと合っているのかを理解するために、経営理念は必要だと思います。経営理念という明確な言葉になっていなくても、社長の思いは身近な人には伝わると思います。社員が20~30人でも、そういった経営理念に近いことを話す機会は必要ですよね。自分達は何を目指しているのか、どうしてこういう判断をしているのかを、ちゃんと理解した上で仕事をすることが大切だと考えています。

坂上:人数が多くなってくると意思が伝わらないのが怖いとか、伝えていきたいという感じですか?

川田社長:実際はちゃんと明文化することによって、自分が誤ったミスジャッジをしそうになった時に現場の社員メンバーから、「経営理念を軸に考えたら、その判断はおかしいんじゃないか」と、時には言ってもらえるような、そういうツールとして使えたらいいなと思っています。

坂上:経営理念をつくったときの苦労は?

川田社長:あまり苦労はないですね。例えば起業の時に「貧しい暮らしから脱却したい」という欲で起業した人たちは経営理念がなく、がむしゃらに走って気づいて経営理念に行きつくのだと思います。もしくは、すごいアイディアで製品やサービスをスタートして、急激に伸びた人たちが経営理念を作るとしたら、苦労すると思いますが、私はそのどちらでもありませんので、作る上であまり苦労はなかったです。自分の中の思いを単純に整理して言葉にしたという感覚です。もちろん、世界的な会社にしていきたいということは思っていましたし、言葉でも伝えていましたから、経営理念を明文化する時にはそういったことをちゃんと入れていこうと思いました。

坂上:経営理念ができあがったのは創業して何年目ぐらいですか?

川田社長:3年目ぐらいです。その間はがむしゃらに働くしかなかったので、経営理念やかっこいい目標なんて言っていられませんでした。ちょっとゆとりが出てきて、考えられる余裕ができたからかもしれません。

坂上:最終的にできあがった日が仮に3年目だとすると、作成期間はどのくらいですか?

川田社長:1~2日で書き出し、作成しました。

坂上:経営理念といわれる判断基準とか目指すものは必要でしょうか?

川田社長:私たちには必要ですね。

坂上:経営理念と業績の関係は?

川田社長:経営理念があれば業績が伸びるわけではないですが、ないと伸びないと思います。あるだけでは伸びないですね。必要だけど十分ではないです。

坂上:経営理念を作ったのは、創業の頃から思いがあって、3年後ぐらい。少し仕事が落ち着いた頃に作り上げた感じですね。どこで作ったかというのは、外部ではなく自分の中ですか?

川田社長:そうです、もちろん。

坂上:誰がというと、外部を使ってとか社内の誰かとかあるんですか?

川田社長:当時6~8人の社員がおり、その中のコアメンバー4、5人でお互いに話を聞いて、私がまとめて作りました。

坂上:社長がつくる部分と、社員が関わる部分の比率はどうでしたか?

川田社長:単純に、「将来どういうことをやりたいのか」、「この会社で何が達成できれば人生として悔いがないのか」をメンバーに聞いて、それがうまくまとまるように組み合わせて作りました。言葉自体は私が作りましたが、意味はそれぞれのメンバーの意向を汲んでいます。

坂上:何を入れたのかというところで、価値観、これだけは譲れなかったキーワードはありましたか?

川田社長:3つ要素があります。「世界的なグローバルカンパニーをつくることを目標に掲げよう」、「悪いことはやらないように、人が喜ぶような方向でいいことをやろう」、そして、「社員全員の自己実現を達成しよう」、この3つを単純に入れただけなのですが、この3つがすべてです。

坂上:作成に苦労した方の場合は、時間がかかったりがあるんですけど、ご自身の場合は、ほぼ1日という感じですよね?

川田社長:はい、1~2日程度で完成しました。

坂上:なぜつくったのかというと、判断基準や思い、方向性などを伝えたいということになりますか?

川田社長:せっかく友人と一緒に始めた会社なので、将来もずっと一緒にやっていきたいという思いがきっかけになったと思います。

坂上:作成に要した費用は?

川田社長:タダです。

オロの目標
社員全員が世界に誇れる物(組織・製品・サービス)を創造し、より多くの人々(同僚・家族・取引先・株主・社会)に対してより多くの「幸せ・喜び」を提供する企業となる。
そのための努力を通じて社員全員の自己実現を達成する。

坂上:基本活動指針が12あるんですが、この部分までもう3年目には全部できあがっていたんですか?

川田社長:違います。3年目はゴールの部分だけですね。

坂上:ここから先に進化したのは何年目?

川田社長:正確な記憶はないですが、これは当時流行っていたリッツカールトンのクレドに影響を受けて、「こういう行動指針を作ろう」ということでまとまりました。

坂上:3年目のものから、今手元にあるものまで1、2回ですか?

川田社長:少なくとも4回は細かくマイナーバージョンアップをしており、経営理念も若干改定されています。作成当時、例えばカッコ内の「製品・サービス...」という部分は「技術的製品」となっていて、ザ・エンジニアという目線の表現でした。

坂上:そこから視野が広がったというか?

川田社長:メンバーが増えていますので、少しずつ変化していきました。

坂上:経営理念を浸透させる工夫をお聞かせ下さい。

川田社長:基本的にミーティングの冒頭には、必ず私の口からゴールの部分について話をしています。

坂上:時間的には?

川田社長:ミーティング全体の中でいうと短い時間ですが、私が作る資料の1ページ目は毎回必ず経営理念からスタートします。全社員に話すミーティングは年に2、3回ありますが、幹部研修であっても必ず私の資料の最初にそれを入れています。また、経営理念や基本行動指針などを載せたツールをつくって、全社員に配布し携帯させるようにしています。

坂上:朝礼とか、定期的な勉強会とか、会社ごとにいろいろありますが、そのあたりはどんな感じですか?

川田社長:朝礼では、ゴールよりは基本活動指針の中から1項目を選び、交替で読み上げるということをしています。

坂上:全員でやるんですか、それともグループごとにやるんですか?

川田社長:朝礼は拠点ごとに行っており、東京本社だと100人を超えるメンバーが集まって行います。毎朝1人が1項目を読み上げて、それに関わることをコメントするだけです。1人3分といったところではないでしょうか。

坂上:それは海外でもやってらっしゃる?

川田社長:海外でも行っています。

坂上:他に何か定期的な勉強会とか?

川田社長:あとはそんなにないですね。最近は教育研修の一環として、たくさんカリキュラムがある中の1つに、「オロの理念」というプログラムを入れています。

坂上:カリキュラムというのはどのようなものですか?

川田社長:他には、例えばライティングやロジカルシンキングなどがあります。そういったものの中の1つです。

坂上:項目数としてはどのくらいあるんですか?

川田社長:15から20の間ですね。

坂上:年間どのくらいの時間数でやるんでしょう?

川田社長:十数種類あるプログラムのうち、年間で1人1つ選びます。今年、「オロの理念」に参加しているメンバーに関しては、2か月に1回、約2時間ずつなので、年間で約12時間ですね。

坂上:経営理念の完成度合、満足度の点数と浸透度の点数は?

川田社長:満足はしているので、90点は超えているんじゃないかと思います。浸透度という意味でも90点を超えていると感じています。それが守られているかは別として、ミーティングで話をすることで耳にする機会が増え、意識を向けるきっかけにもなっていると思います。とはいっても、中途採用も含めて、新しく入ってくるメンバーがたくさんいますので、浸透にはたぶん時間がかかりますね。個人の勤続年数に比例して浸透度が上がっているとは思います。長くいれば浸透していくので焦ってはいません。

坂上:いま新卒は何人くらい?

川田社長:二十数名です。

坂上:新卒だと入ってきた会社がオロさんなので、中途の方だと考え方のところで難しさも一部ありますよね。そのあたりどうでしょうか。

川田社長:毎日、朝礼で話をするということに一瞬違和感があるかもしれないですが、一カ月もいたら違和感はなくなるんじゃないかなと思っています。クセのない経営理念なので、基本的に反対する要素はないですからね。

坂上:反対する要素がないというのは、言い換えるとどういう感じですか?

川田社長:「それ違うんじゃないですか」という項目がないんですよね。信頼関係の構築、感謝の気持ち、プラス思考、あきらめない、反省と改善、成長の幸せ、謙虚に行動、批判ではなく改善提案、利害のベクトルを合わせる、利益報酬について、常にナンバーワンを目指す、といった項目に、反対要素は見当たりません。

坂上:人生の大事なエッセンスを自分の言葉で心の中に落としていったというイメージですか?

川田社長:経営者だけではなくて、世の中の成功されている方々は、たいてい同じことをおっしゃっています。日々過ごしているとそういったことを忘れがちなので、それを忘れないようにしているだけです。特別なすごいものを考えたわけではないですから。

坂上:個人の価値観と経営理念の関係は?

川田社長:変わったことは書いてないのでズレようがないですし、どちらかというと忘れそうになることばかりです。日々、普通に一日を生きてしまうと、うっかり頭から離れてしまうようなことが多いですよね。すごくできている人もたくさんいます。感謝の気持ちを常に持っている人もたくさんいますが、中にはうっかり忘れてしまう人もいますので、そういったところではないでしょうか。

坂上:人それぞれの価値観や考え方、例えば純粋さ、謙虚さ、努力とか、いろんなキーワードがあって、優先順位をつけていくと思うんですが、ここの中にあるもの以外にも、社員が、「もっとこっちが大事じゃないか」という人がいるかもしれないですが?

川田社長:けっこう大雑把に書いてありますが、どれも優先順位は高いと思います。この12項目の基本活動指針のうち、どれがもっとも大切ですかと言われると難しい質問ですが、ここに網羅されていない価値観があって、いいものであれば項目を変更したり、追加したりして組み込むべきだと思っています。

坂上:経済観、社会観、人間観、倫理観に分けると、大事にしていきたいところはどのあたりですか?

川田社長:その辺りはバランスが大切ですので、特に何かを追求して、何かをおろそかにしてはいけないものだと思います。

坂上:これから先目指すものや、仮に100人くらいの経営者がいるとして「何かメッセージを」と言われたらどんな感じでしょう?

川田社長:その中に書かれていない項目ではありますが、「思いは実現する」という思いの強さでしょうか。それがすごく大事だと思います。経営者にとって「自分達の会社をどうしたいのか」を考えることは一番大切で、思い続けるからこそ本当にその通りになる確率が高くなるのだと考えています。私はこれからも、直立に継続成長を続けていきたいと強く思っていますし、そのための努力を一生懸命しようと強く思っています。それをちゃんと思っていられる間はきっと継続成長できるでしょう。

成長が続かなくなった時は、私がそれを思わなくなった時。万一、そんな時がくるようであれば、私が退任しなきゃいけないタイミングなのでしょう。経営理念を達成するためにはそれも必要、ということですね。私が経営理念の達成を考えなくなった瞬間に、それを目標として掲げている会社で、私が代表をしていてはいけないんですよね。とても高い意識をもって、ちゃんと考えて一生懸命やってくれている社員が出てきてくれているので、そういった社員たちの方が私よりよっぽどふさわしいということにならないように、自分がリードできる側にいなきゃいけないと感じています。

坂上:社員の方が自律性というか、そういうふうになってきてくれたなと実感したのは、何年目ぐらいからでしたか?

川田社長:そのような自然性の人は、100人に1人ずつ入って来るような感覚で、そんなに多くはいないです。でも、そういった人はパワーを持って周りの人を巻き込んで変えていき、そこで変われた人がまた引っ張っていくという連鎖反応が一番いいと思いますので、時間はかかるかもしれません。経営理念を掲げて、「こういうことをやっている」という意思統一ができると、ある程度の規模になっても引っ張っていきやすいですよね。皆それを求めていても、苦労するのはその部分ではないでしょうか。

坂上:「人間は魂なんだ」という思想がありますが、「人ってなんだろう」と考えるところはありますか?

川田社長:まだ勉強中という感じです。塾長がおっしゃっていることに、私は非常に感銘を受けますし、過去の偉大な方々は皆同じようなことを唱えていらっしゃるので、それはきっと正しいことなのだと思います。どの宗教もすばらしい考えを持っていると思いますし、例えば「生きるとは何なのか」ということに、まだ自分の確立した答えとしては固まりきっていないですが、向こう10年ぐらいで固まってくるといいなと思います。

坂上:魂という表現についてはどうでしょうか?

川田社長:私も元々理系で、非常にロジカルな考えを持っていますので、物理的な話と精神世界の話が、すごく密接で表裏一体の関係であるということも、なんとなく理解しはじめています。ロジカルに説明のつくことが多いと思います。例えば、運が良い人というのはそれまでの行動の中で、運の良くなる要素をつくっていますし、一瞬一瞬の行動一つをとっても、結果がよくなる判断ができる能力をもっているので、それをもって運が良いと言うこともできます。ポジティブに物事を考えられたり、周りの人たちに対して常に提供側に回っていたりすると、何か困ったことがあっても手を差し伸べてくれる人が多いですよね。

自分のなりたい方向性や思いを周りに話しておけば、手伝ってくれる人やきっかけに出会えます。「あいつはついている」というのは、ついている理由になる行動や考え方があるのだと思います。

坂上:原因と結果ですよね?

川田社長:そうですね。そういう意味でいうとロジカルですけれど、それを含めて運の良し悪しはありますよね。

坂上:物理的な領域と精神的な領域という因果の法則があるんじゃないかということですよね?

川田社長:そうだと思います。

坂上:ありがとうございました。

経営理念
社員全員が世界に誇れる物(組織・製品・サービス)を創造し、より多くの人々(同僚・家族・取引先・株主・社会)に対してより多くの「幸せ・喜び」を提供する企業となる。
そのための努力を通じて社員全員の自己実現を達成する。

ティーペック株式会社 経営理念

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

砂原健市社長(以降「砂原社長」と表記):ティーペック株式会社・砂原健市です。
事業内容は、24時間年中無休の電話健康相談サービスの提供、メンタルヘルス従業員支援プログラム(EAP)、セカンドオピニオン手配紹介サービス、糖尿病専門医紹介サービス、軽度認知障害スクリーニングテストの販売などです。前年度の売り上げが約35億6200万円、経常利益が約3.13億円、利益率が約8.7%になります。現在スタッフ204名 相談スタッフ364名です。

坂上:次に社長様のプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

砂原社長:東京都台東区浅草生まれで、代々個人事業を営む家庭に育ちました。大学時代に起業後、23歳で保険代理店業を成功させました。その経験を現在の事業に生かし10期連続増収増益しています。経営歴は25年です。

坂上:まず、誰に何を販売しているのかお聞きしていいですか?

砂原社長:私たちは、さまざまな企業や団体に対して、メイン商品ともいえる「24時間の電話健康相談」を提供しています。私たちはよく3本の柱と呼んでいるのですが、その最も重要な部分です。

坂上:メインとなる商品の中身を簡単にご説明していただけますか?

砂原社長:売上の半分となる「24時間の電話健康相談」なんですが、健康医療、介護、育児、メンタルヘルスなどの各種相談に、医師、保健師、助産師、看護師士、臨床心理士、精神保健福祉士といった経験とスキルを持つ専門家が24時間年中無休で電話対応をするというものです。

坂上:契約先の対象はどの様になっていますか?

砂原社長:契約の約半分が「企業・団体の福利厚生」で平たく言うと、健康保険組合、公務員向け共済組合や企業の人事部の契約です。「お客様サービス」の対象企業は、保険会社とカード会社です。日本の大手とか外資系を入れて保険会社は17社ぐらいです。

坂上:なかなか興味深いサービスですね。その商品の単価などはどのような設定なんでしょうか?

砂原社長:サービス対象企業に対してユニークな計算式があり、年間のその人数に対して、相談料、マンスリーの報告料というのが、その計算式によって算出した価格を設定して年間契約をしていただいています。

坂上:相談サービスの契約金などの価格はいかがですか?

砂原社長:年間契約で1社あたり2000万円から5億円までさまざまです。

坂上:御社の年商35億円は、三本柱の商品「ハロー健康相談24」と「ドクターオブ ドクターズネットワーク」と「こころのサポート」それぞれの売上分布はいかがでしょうか?

砂原社長:「ハロー健康相談」は12億円、「ドクターオブドクターズネットワーク」は13億円。そして「こころのサポート」は10億円を売り上げています。中でも収益の柱となるのが保険会社です。その他の企業を含めて合計1600社が契約しています。

坂上:例えばどのような企業ですか?

砂原社長:明治安田生命、AIG富士生命、住友生命、三井生命、大同生命、それから外資だとメットライフ生命とかAIU損害保険、プルデンシャル生命とかアクサ生命などです。

坂上:ティーペックと大手企業が年間の契約をして、その会社で働く従業員が御社の電話相談サービスの直接のユーザーですね。その利用価格はどの様にして決まるのでしょうか?

砂原社長:企業1社当たりのご利用人数、つまり社員数と業種などで決まります。

坂上:大学在学中に起業されたということですが、なぜ在学中に会社をやろうと思われたんですか?

砂原社長:大学は日本大学芸術学部に入学し、映画監督を目指していたんですが、大学に入って2年で、これは食える商売じゃないとわかったんです。すごく斜陽の匂いがしたんですね。その頃から「何とか実業家で生きていきたい」なみたいなことを考え始めたんです。

坂上:それはご両親の影響でなければ、どなたかの影響があるんでしょうか?お父さんもおじいさんも事業家で、サラリーマンではなかったわけですよね?

砂原社長:中学高校ぐらいから感覚的には持っていたのかもしれません。でも中学高校ぐらいのときには映画監督イチオシでした。大学に入ってからそれが具体化されて、ビジネスを自分で立ち上げて起業をするんだと思うようになったんです。経済的にも豊かになりたかったし、何よりも自分の可能性を試したかった。

坂上:在学時代に立ち上げた1社目の時、経営理念について考えたことはありましたか?

砂原社長:ないです。ただビジネスでもうけてみたかったんですね。大学3年になって商売をしようと考えて、営業的な面での自分の可能性を試すつもりで自動車部品の並行輸入の会社を作りましたが、1人で2年ぐらいやって借金を残しました。

坂上:2回目に起業した動機は何ですか?

砂原社長:かなりの金額の税金を滞納していて、それを返すために保険会社の代理店を始めたんです。

坂上:なるほど、それで資本がなくてもできる保険代理店をされたんですね?

砂原社長:はい、1973年に、吉祥寺で代理店経営を23歳のときに始めました。大学を卒業した年ぐらいに結婚したんです。できちゃった結婚だったんですね。生まれた子どもを養わなければならない。借金も返さなくちゃなんないし、生活もしていかなくちゃなんないしっていう。三鷹に住んで吉祥寺に通いました。

坂上:その2社目を作られたときは、経営理念はありましたか?

砂原社長:いや、これはもう借金を返すだけなんです。とりあえず借金があるぐらいだから資本もないですし。

坂上:1973年から何年ぐらい保険代理店経営をされたんですか?

砂原社長:15年間やりました。このティーペックをやりたかったんで辞めました。保険の代理店はすごくうまくいって、本社のあった吉祥寺はもちろん、主に多摩地区と、埼玉、あとは神奈川ぐらいが一つの営業エリアで、もちろん地域でナンバー1、最後は12の保険会社の代理店になっていたんです。

坂上:それでナンバー1になったってことは、もう収入的には十分豊かな状況にそのときはなっていたのに辞められたんですね?

砂原社長:ええ、年商で6億、年間手数料収入で1億3000万。もう、いろんな保険会社から講師の依頼がいっぱい来ました。新聞にも取材されてました。僕はやっぱり新しい保険を考えて売ることが結構得意だったので、メモリアルアート大野屋の社長から頼まれて、ある保険プランをやったのが日経新聞に取り上げられました。また水道工事業者を一手にまとめた第三者賠償保険を初めて作りました。こうした商品開発は大好きでした。

坂上:新たに始められた会社、ティーペックの始まりに付いてはいかがでしょうか?その会社をやろうと思った1番の理由も含めてお願いします。

砂原社長:父親を亡くして三鷹に住んでいた頃、32歳のときに、今度は母親がくも膜下出血になりました。それで府中に家を買い替えて看病生活となりました。6年の間、救急病院、総合病院、リハビリ病院、在宅ケア、あまりにも患者の立場に立ってない救急体制とか医療機関の体制を肌で経験しました。それらに強い憤りを感じていましたから、なんとかそういう医療機関とコンシューマーをつなぐ行政サービスの補完的な事業を民間でできないだろうかと考えるようになり、ついに38歳のときに、ティーペックを始めることにしました。

当初、資本金3億ぐらいの事業計画を立てました。それで保険会社にいろいろ声をかけて社長を招いて出資を募りました。創業時の社名は「東京民間救急センター株式会社」それを英語に変えてTokyo Private Emergency Centerと読みますので、頭文字をとって「T-PEC」としました。「民間救急」とは行政の医療制度や救急サービスを民間が補完するもので、資本金4000万円で始まった会社は、たった1カ月で8000万増資することができ、1億2000万の資本金になりました。また、「ハロー健康相談24」は、24時間の電話相談ですから、資格あるドクターも24時間常勤体制でした。ですから会社の業績は当時の状況とも相まってうなぎ上りでした。

坂上:経営理念を作ったきっかけは何だったんですか?

砂原社長:創業10年ぐらいで18億円ぐらいまで売上が伸びたんですが。しかし第11期から第15期までの5年間は18億円の売上のまま成長しなくなってしまいました。それまでは保険会社の経理の専門家が社長として就任し、僕は副社長で営業や商品開発をやっていましたが、平成16年に僕が社長になってバトンタッチしたら、創業からの延びが停滞してしまったんです。

その業績が停滞したときに、それ以上の目標を持ってないってことに気づいたんです。それがで経営理念の大切さに目ざめたきっかけでした。そこから、ティーペックはどこを目指しているんだ。何を目指しているんだ。何をやるための会社なのかっていうことを自分で整理し、自分自身も含めて社員全員の目標を再構築しました。おかげで社長に就任して1年間は大変な勉強の機会となりました。現在の経営理念はその成果です。

坂上:『「誠の幸福とは、心身ともに健康な生涯を送ることにある。」と考え、その生涯づくりに貢献いたします。』この理念の方向性とは具体的に何ですか?

砂原社長:「心身」というのは身体の相談、心の相談ですので、まずティーペックはこれを目指すんだと。それは、多くの人をその24時間の健康相談、またそれに派生するいろいろなサービスでしあわせになってもらうっていうことです。それで僕自身も何のためにこの会社をやっているんだっていうことも整理できました。全社員がはじめてこの経営理念をもって、ティーペックは、経営理念を理想としてそれに到達するという目標をもった会社であり、経営理念はティーペックそのものであり、理念をその営業活動にしっかり反映すべきことを悟ったんです。そしてその理念に向かって全員の考えと心、そして目標を一つにできたんです。

坂上:会社の創業時は経営理念そのものは作っていなかったんですか?

砂原社長:はい。あくまで母の件がありましたのでそれどころではなかったのかもしれません。民間救急というものはこれから必ず必要になる。今後の日本は、21世紀の人類史上経験したことのない超高齢化社会、少子高齢社会が来るから医療制度も当然変わるし、新たに介護の問題が出てくることはティーペックをつくるときすでにわかっていました。それで民間救急というのを日本で初めてやろうというのが創業の時の強い思いだったんですね。そうしたビジネスモデルに夢中でしたから本物の経営理念というものには無頓着だったかもしれませんね。

坂上:先ほど何のために会社を経営するんだろうと1年ぐらい考え悩んだということでしたが、経営理念は具体的にどうやって作られたんですか?

砂原社長:そのとき私は信念の下に経営理念を立て、それを中心に四つのスタイルを立てて、それで中期計画を立ててみたんです。これは独断で自分が情報収集し、この経営理念、四つのスタイルでいくと決めたものです。

坂上:理念と計画を立てられたということですね。ここで、このスタイルをご紹介します。まず、スタイル1、「公平な評価のティーペック」。スタイル2、「風通しのよいティーペック」。スタイル3、「前向きで建設的なティーペック」。スタイル4、「社員は宝だティーペック」とあります。そして、それぞれのスタイルの属性の下に項目が設けられていますね。例えばスタイル1の「公平な評価のティーペック」の下に4つ、人事考課制度、目標管理制度、退職金制度、各種データと、それぞれブレイクダウンしたものを作られたということですね。これを全部その1年ぐらいかけて全部ご自身で作られたんですか?

砂原社長:そうですね。この経営理念と4つのスタイルで中期経営5年計画を立てて、以降10期連続増収増益なんです。今まで動かなかったものが、動き始めたんです。今は専門家を入れて目標再構築のブランディングに取り組みつつ創業50周年に向けたことを考えています。

坂上:よく『論語とソロバン』と言うんですが、理念の論語の領域と、ソロバンの領域は社長にとって比率はどれぐらいなんですか?

砂原社長:5:5ですね。理念と実際の経営戦略、公的な欲求と私的な欲求、建前と本音、営利と非営利などバランスが必要ということでしょうか。企業も実際は営利活動なんですけど、やはり理念というのはすごく重要で、それは公的な欲求です。だから、金もうけだけという主義だったら経営は長く続かないということですね。

坂上:経営理念と業績の関係は?

砂原社長:一言で言えば「経営理念がない企業は成長することはない」と思います。正しい経営理念は正しい目標に企業とその経営者を導きます。あとは実務的な努力をすれば目標は達成されることになります。

坂上:なるほど。ではここで5W2Hで整理させていただきます。[いつ]作ったのかというと、第1ステージの経営理念に似たものが、すでに創業の時に思いの中にあったということ。10年後、売上18億になり5年間延びなかったので、15年経ってから次のステージの経営理念を作ったということですね。それは商品開発とか年間予算を立てることなど実務的なことはしましたが、第1ステージの経営理念はそのままであったため、横ばい現象に至った反省からでした。

[どこで]作ったのかっていうのは、外部ではなくご自身で作られた。[誰が]作ったのかも、100%ご自身でした。[何]を入れたのかというと、最初は民間の救急という考え方があり、それが第1ステージの経営理念で、15年後に新たに『「誠の幸福とは、心身ともに健康な生涯を送ることにある。」と考え、その生涯づくりに貢献いたします。』を経営理念に掲げられた。[どう]作ったのかを時間ややり方で考えると、最初の第1ステージは必然的に思いがあったので作ったのに対して、第2ステージは時間をかけて外部の経営者にも話を聞いて自分で作られた。[いくらで]は外部などに依頼せず、全部ご自分で作られたので0円。こんな感じでしょうか?

砂原社長:はい、おっしゃるとおりですね。

坂上:次に、経営理念を浸透させるための工夫や努力なんですが、浸透のための取り組みには何がありますか?

砂原社長:経営理念は全て社員が見えるところに書いて貼りだして銘記するよう促しています。また、月1回全体朝礼や部門の朝礼の時を用いて経営理念について言及して浸透を図っています。会社の経営理念は社員みんなが大好きで気に入っています。ティーペックが目指しているところがすごく理解できるし、共感できるっていうのが社員の素直な感想としてフィードバックされている。一つになれる共通の目標がみんなで共有できたっていうところが強いのでしょうね。

坂上:理念を浸透させる工夫として具体的に何をされているのでしょうか?

砂原社長:カードを全員に持たせているんです。「ティーペックスタンダード」カードですね。そこには経営理念から始まって、4つのスタイルが載せられています。クレド、常に携帯してもっているカードですね。

坂上:それは全員が持ってらっしゃるのですね。では、新入社員や中途採用の社員が入ってくると、何か特別に勉強会をされるんですか?

砂原社長:オリエンテーションではっきり経営理念や4つのスタイルをカードを使用して説明します。その際このクレドの使用法が提案されます。全部門月例で開催する部門会議の最後に、このクレドを使用して、毎月今月のテーマを決めています。テーマを決めて月に1つずつ、例えば1月は「私は感謝の言葉、ありがとうを惜しみません。」と決まれば今月はこの言葉、全社員がこの言葉に重点をおいて行動するんですよ。それで、社内イントラには今月のこの言葉が載せられており、会議のときにもこの言葉についての意見を必ず言ってもらいます。

坂上:個人の価値観と経営理念の関係は?

砂原社長:個人の価値観と会社の価値観、つまり経営理念とのずれを正すことは、人数が増えるとともに難しくなってくるんで、経営理念や4つのスタイル、中期経営計画や年次計画を立てて、どこを目指しているかをはっきりさせる努力をしています。

ティーペックは9月が新年度なんですが、例年9月の第1金曜日には社内の3本部合同で丸一日をかけ、管理本部長、営業本部長、サービス業務本部長が中心となり、各本部の1年間の計画と基本方針、全体の中期経営計画についてなどの発表会をやっています。個人の価値観と会社の価値観のずれは、どうしても最終的な壁になると思いますし、会社の成長は、人の成長でもあります。会社全体としての離職率は他社に比べると比較的に低いんです。しかし営業現場では数字的目標も大切です。結局は価値観を共有できる社員だけが次のステージに残るんだろうなと感じています。

坂上:経営理念の満足度、浸透度は100点満点で何点でしょうか?

砂原社長:私たちティーペックはお客様とともにこれからも成長します。ですから、現時点の経営理念の完成度は85点です。そして浸透度は100点、100%だとの自信を持っています。

【経営理念】
ティーペックは
「誠の幸福とは心身ともに健康な生涯を送ることにある。」
と考え、その生涯づくりに貢献いたします」

アークフィール株式会社

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

﨑元則也社長(以降「﨑元社長」と表記)
アークフィール株式会社代表取締役社長・﨑元則也です。
事業内容は、店舗出店の支援、集客支援のウェブマーケティング、コンストラクション事業です。売り上げが約14億円になります。現在、従業員数は19名です。

坂上:次に社長様のプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

﨑元社長:50歳、福井県生まれ、一級建築士の資格を取り、大手ゼネコンで原子力発電所などの大型プロジェクトを中心に建築を学びながら、多数の商業施設、マンション、オフィスを手掛けました。2005年アークフィール株式会社を設立し、現在にいたります。

坂上:御社の顧客は誰になるんですか?

﨑元社長:大きく分けて3つありまして、1つ目が店舗出店支援事業部で、店舗を出店する人のために、総合的に商業施設の中に入っている会社に貢献していこうということで、そこのデザインや工事をするという形です。次に、ウェブマーケティング事業部というのがあって、それは自社内の集客と、同業者に対してウェブサイトを作ったり、コンサルティングしたりというサービスをやっています。もう一つは、昔からやっていた、ビルのリニューアルとかそういった部門があり、この3つの事業をやっています。

坂上:御社の成長率はどのようになっていますか?

﨑元社長:成長率は、だいたい5年前、ドラッカーマネージメントを始める前に9億8千万くらいだったのが、2010年くらいにいったん3億くらいになりまして、そこから年々ドラッカーマネジメントを導入していって、去年の段階で14億くらいです。

坂上:創業されるまではどんなお仕事をされてたんですか?

﨑元社長:建設会社に就職して、最初は現場監督とかもやっていて、だんだん役職も上がっていき、その所長というか現場を管理する管理部みたいな部署と、資材の調達でお金周りの業務をやってました。だから営業とかはやってないんです。そういうところがウェブマーケティングにつながっています。

坂上:現在の会社を創業されたきっかけをお聞かせください。

﨑元社長:前の会社はただ人間関係がいやになって辞めたんですが、それから一番最初に考えたのは、建設会社+アルファで何かできないかということでした。以前勤めていた会社では、自衛隊基地のジェット格納庫とか、市の体育館とか大きなものをやってたんですが、大きなビルを建てた後に、いろんなテナント工事とか入るじゃないですか。最後までビルと関わることがなかったので、今までやってきたことよりも、その延長線上の部分がいいと思って、店舗の出店やテナントの方に行ってみようかなと思ったのと、実際に資金繰りのこともあったんで、小さな所から始めていった感じですね。

坂上:経営理念はいつごろつくられたんでしょうか?

﨑元社長:創業してからしばらくはなかったですね。1年、2年たってからだと思います。

坂上:その時の社員は何人くらいですか?

﨑元社長:5,6人ですね。実際に経営理念というのが会社にあるんだというのが分かるようになったのは、ドラッカー・マネジメントを学ぶようになってからですね。

坂上:ドラッカー・マネジメントを学び始められたのは5年目くらいですね。そのときはドラッカーマネジメントを学んでから作ったんですか?

﨑元社長:学びながらですね。本当に経営理念というのは必要なんだなということが理解できたので。そのドラッカー塾の中で、経営理念をつくっていくプロセスというのも学ぶんです。

例えば、「この質問に社内で答えて下さい」というのがあって、まずは経営チームを作りましょうという話だったんですね。それで社内に経営チームを4名で作りました。「我々の使命は何だ」とか「我々の強みはなんだ」とかいろんな質問があるわけですね。それに全部答えを出していくまで 1年半くらいかかって、とりかかってから、自分たちの納得のいく答えを出すのに、やはり1年くらいかかりました。それを毎週土曜日の朝から集まって、時には夜までやったりということを毎週繰り返して、ようやく1年くらいかけて使命や顧客、顧客の価値、自分たちの計画、成果とはなんだ、ということの答えを出していって、やっと経営計画書みたいなものが一つ出来上がったという感じでした。

それと同時進行で、クレド的なものと、今年は何をやるのとかといったマーケティング目標やイノベーション目標、人的目標や資材目標も決めていきました。そこで1クールのドラッカー塾が終わったんですが、それで「ここはもうちょっと学ばないと本当に会社に落しこめないかな」と思って、次の2年目にまた行って、それでだんだんブラッシュアップしてきています。そういう経営計画を毎年10月の終わりぐらいから11、12、1月と3カ月かけてつくっていくという作業をしていて、今ちょうどま最中です。

坂上:この経営理念という形ですが、ドラッカー塾の全体像の中ではこの理念があり、マーケティング目標とか、イノベーション目標とかがありますよね。これはどちらかというと戦略側という位置付けなんですか?

﨑元社長:でも使命の中にあるものなので、使命ありきですよね。我々の存在意義は何かというところから、一つ一つのマーケット目標、イノベーション目標ができて、さらに事業ごとに目標があって、個人の目標があって、その個人の目標の日々の業務が、使命に結び付いてる状態というのが理想の姿かなと思いまして、そこにつなげられるように毎日のルーティンに、どう落としこめるかということを重要視しています。

坂上:経営理念をつくって気づいたことってありますか?

﨑元社長:そもそもこの経営理念なくして企業運営というのはないなというのが気づいたことですね。

坂上:経営理念を作った最初のきっかけは、業績のことがあったからですか?

﨑元社長:違います。経営者として仕事を初めてから、本も読んで勉強しなきゃいけないなと、いろんなセミナーとかに行きながら、毎年300冊くらいは本を読むように努力しようというふうに始めたんですが、マネージメントにしてもマーケティングにしてもイノベーションにしても点でしかわからなくて、そういったマネージメントを体系的に学ぶところはどこかなとずっと悩んでいるところがありました。それらを何とか一つの箱に収めたいというか、整理する箱がほしいと思ってドラッカー塾に行ったら、そこがまさにその箱でして、マネージメントを体系的に学ぶことができたので、それがすごく良かったというのが気づいた点ですね。

坂上:ドラッカー塾に会うきっかけは何だったんですか?

﨑元社長:それは鮒谷さんのご紹介です。それまではドラッカー塾っていう存在さえ知らなかったので。

坂上:聞いても行かないという選択もあったと思いますが、行こうと思った一番の理由は何ですか?

﨑元社長:それは勧められて、自分で言うのも変ですけど素直ですから、「いいよ」って言われたら「じゃ行きます」と言っちゃう方なので。

坂上:経営理念をつくる工夫とか苦労はありましたか?

﨑元社長:作るのに1年間くらいかけたんですが、ドラッカー塾の設問って、一つ一つは本当に1行の質問なんですね。たった1行の質問に対して、何週間もかけてああだこうだとみんなで意見交換してやっとできるわけです。だから本当に深いものが出来てくるというか、言葉とか表現とかは、ちょっとずつ変わってきたりするんですけど、根本的な部分は変わってないんじゃないかなと思ってます。

坂上:毎週土曜日10:00から13:00までの3時間を50回続けたイメージですか?

﨑元社長:10:00から初めて14:00になったり15:00になったりでしたけど、気付いたら夜暗くなってたということがありました。

坂上:それを5人でされたんですか?その時で社員数は何人だったんですか?

﨑元社長:12、3人ぐらいだと思います。

坂上:ということは役員+部長職という感じですか?

﨑元社長:そうですね。経営チームという言い方で今はやってますね。

坂上:それはご自身が当時は45歳ぐらいで、そのメンバーの方はおいくつくらいだったんでしょうか?

﨑元社長:20代30代で半々くらいです。

坂上:例えば「我々の使命は何か」というところから、どういうふうに広がって6時間使ってる感じだったんでしょうか?

﨑元社長:それぞれ個人が意見を出す時に、ストップをかけないというか、自由闊達にいろんな意見を混ぜ合わせながら、みんなが出しきった時に言葉をまとめていくという形をとりました。とにかく言ったことは否定しないでずっと発散していくミーティングというのを中心にやっていきました。

坂上:振り返るとそのやり方でよかったですか?

﨑元社長:時間はかかったんですが、浸透するには早いんじゃないかと思います。運用ベースでは楽になるイメージですね。短くやっても言葉としてはまとまるかもしれませんけど、本当に日常のルーティンにどこまで落としこめるかというと疑問だと思います。

坂上:例えば使命といった時に、こちらの言葉、「空間」「情報」「作る」とかそういうものを付箋に張っていったイメージですか?

﨑元社長:大きなモニターに、エクセルを使って言いたいことを打ち込んでいって、最後に見直して、「じゃあこれだよな」と、そういうやり方ですね。会議もそれでやっています。

坂上:経営理念は必要だと思いますか?

﨑元社長:経営理念がないと何をやってる会社かわからないんじゃないでしょうか。「とりあえず儲ければいいんだ」というふうに始めるのはいいと思うんですが、何年かある程度仕事をしてくると、自分で気づくんじゃないかと思うんです。自分は何のためにやってるのかと。なので、とりあえずでもいいので、やはり何か持ってもらいたいと思います。心の中ではみんな持ってるんじゃないかなと思いますけどね。それが言葉になってなかったりとか、こういうふうに形になってなかったりするだけで、実は何かあるんじゃないかと思いますけど。

坂上:イメージとしてここに100人の経営者がいて、2:6:2で経営理念が大事だという人と、まあ、必要なのかなという人と、そんなものいらないという人がいるとします。すると、ご自身は創業当時、どの辺に入ってましたか?

﨑元社長:当時は、いろんな本読んでたんで、あった方がいいんだろうなと言うのは間違いなくありました。

坂上:10年前の自分がここに座ってて、今の自分と話をするとしたら、今は非常に強い理念や思いがあると思うんですが、「経営理念なんか必要なんですか」と聞かれたらその自分に何と答えますか?

﨑元社長:本当に必要なのかどうかは経験してみないと分からないと思うんですよね。その時に「絶対作った方がいいよ」と言っても多分聞かないんじゃないかと思います。例えば、今の理念、このクレドがあることによって、だれも指示しなくても会社というのは運用していきますし、みんながそれぞれ自分で考えて自分で行動して、自分で結果に責任をとる、これが真の自由じゃないかなと思っています。そして、そうやって会社の運用をしていくと、皆が生き生きと仕事ができると思いますし、自分も楽ですし、「あいつちゃんとやってるのかな」とかは心配しなくていいようになってくるんです。

坂上:真の自由という言葉はどんなイメージで使われてるんですか?

﨑元社長:ドラッカー勉強会で社内の若手に集まってもらって、月に一回本を読み合わせしたりするんですけど、その時にも真の自由とはというふうに話すんですが、「じゃあ不自由な状態って何」って聞くんですよ。自分達の毎日の仕事で不自由を感じる時は何かと考えた時に、新入社員で入った時、右も左も分からない状態というのは不自由じゃないかなと思うんです。慣れない場所に行ったり、慣れない仕事を始めた時というのは自由じゃないなと思うんで、だからこそ、自由になるためにも学ばなきゃいけないんですよ、という話をします。仕事も、業務内容も学ばなきゃできないし、学んで初めて、自分で決めて自分で行動ができると。だからこそ僕たちはマネジメントを学んでるんですよと、よく話をしていて、そういうことが大事なんじゃないかなと思っています。

坂上:業積が良くなって、何のために働いてるんだろうと考える人と、業績が悪くなってしまって、どうにもならなくなってしまって考える人といると思いますが、ご自身はどういう感じだったんでしょう?

﨑元社長:どちらかというと僕はアカデミック好きな方なので、いろんな本を読んで覚えたつもりになっていても、実践に生かしているかというと、何かもうひとつだったんですね。実際に自分はどういう行動をとってるんだというと、そんなにとってないってことが多くて、それは本当の意味でのちゃんとした箱ができてなくて、どの引き出しを開けていいのかわからないような状態になってたのかなと思います。

坂上:経営理念に何を入れたかというと、大事なこととしては何だったんですか?

﨑元社長:これをつくるのに本当にいろんなことがあったんです。これはなぜこういう順番にしてるかというと、我々の仕事は、使命は何かというと、社会は何を求めているか、求めていることに対して、我々が卓越性を持って貢献できることは何か。そしてそれはわくわくするか、ということが使命の概念じゃないかなと自分は思ってます。

坂上:ドラッカーの言葉を引用しながら、自分で咀嚼してる感じですね?

﨑元社長:そうですね。それを考えたときに、自分たちが卓越性を持って貢献できることは何かなと考えたら「空間をつくること」というのがあって、インターネットでは何をやってるのかなと思ったら「情報をつなぐこと」なんだろうなと思ってます。その二つを僕たちは仕事にしてるんですけど、その前に一番思わなくちゃいけないのは、人と人を結びつけたり、空間を作ることによって、そこを使う人やそこに来て楽しむ人や、そういう人たちの思いを大切にしないと仕事というのはもともと進まないと思って、「人を思うこと」を一番に持ってきて、こういう三つの順序になりました。

本当は前のやつとかはもうちょっと長くて、暗記しているかといったら言えない人もいて、ちょっと短くしようという話になりました。ドラッカーさんも「使命はTシャツに書けるくらいの短さじゃないといけない」と言ってましたので。

坂上:ミッションは1行ですが、この下にはたくさんの思いが存在してるわけですね?

﨑元社長:本当にシンプルにしていきました。その作業が非常に時間かかるんですけど、ああだこうだ言って、「 1行で言うと何だ」みたいな感じですね。ちょっとコピーライティング的な要素で、氷山の一角というか、水面下にいろんな思いがあってその中で1個だけ上に出てる感じです。

坂上:その水面下の部分をつくるというか、大きな価値観をみんなで議論するとかそういうところが大事なんですね?

﨑元社長:そこから積み上げたものが一番最後にちょっとだけ出ているといった感じじゃないでしょうか。

坂上:そのプロセスの方がよほど大事だよということなんでしょうか?

﨑元社長:そのプロセスがあるからこそ、それが本当の経営、使命とかミッションになって、本当に浸透していくということになるのかなと思います。

坂上:経営理念を作るときに、経営チームの4人は毎週のように話してますが、その1年半の間は他のメンバーの方は内容を知ってらっしゃったんですか?

﨑元社長:こういうことをやってるというのは順次伝えてましたけど、こういう言葉になったというのはまだ伝えられなかったという感じですね。

坂上:1年半かかってこういうカードやアウトプットができてから浸透させていったんですね。それをやる時はどんな感じでした?

﨑元社長:1日1人が1行ずつ順番に、これに対してのエピソードや、昨日こんなことがあったとか、この「スピード」をもってやったらこういうふうにうまく行きましたよとか、そういうことをシェアしてもらって、それで誰かがそれに対してのフィードバックをコメントするという仕組みにしています。

坂上:それは何時から何時で何分ぐらいでされるんですか?

﨑元社長:朝一で9:00に集まって、10分から15分かけてみんなで社内の掃除をして、そのあとに集まって、こういうクレドミーティングみたいなことをやって、それから仕事を始めます。

坂上:クレドミーティングは10分ぐらいですか?

﨑元社長:話の内容によっても変わりますが10分かからないです。

坂上:それをほぼ毎日やるわけですね?

﨑元社長:毎日やります。

坂上:その時は何人いらっしゃるんですか?

﨑元社長:現場の仕事をしてるので、直行する人もいたり、いなかったりするので本当にいる人だけでやってる感じですね。いつもだと7、8人くらいで交代で回ってる感じです。それを今後、外に出てる人に対して、どういうふうにシェアしたらいんだろうかというのが自分の課題です。週に一回とか、下手すると月に2、3回しか出られない人もいるので。

それを解決する一つの手段として、全体ミーティングを週に一回必ずやってて、来週の予定はこんな感じですとか、今こういうところがポイントですとか、今の機会はこういうチャンスがありますよとか、そういうのをシェアする会をするんですね。その時に、使命のことについて語ったりもしています。あとは年に一回、経営計画発表会をやってて、来年こういうことやりますよとか、みんなこういうふうにやるんでとか、そういうことを言ってもらってます。あとは中間で4半期に一度、経営計画確認会みたいなものをやっています。

坂上:それぞれの時間はどのくらいですか?

﨑元社長:週に一回のミーティングが1時間ぐらいかかります。

坂上:経営計画発表会はどのくらいの時間ですか?

﨑元社長:4時間くらいです。

坂上:その中では経営理念の話はどのくらいの比率を占めるんですか?

﨑元社長:経営理念というか一つのまとめてるシートがあって、経営理念と使命、ビジョン、懇親があり、長期事業構想「5年後こんなことになっていたい」というのがあって、クレドはそんなに変わってないんですけど。次に「顧客はだれか」というのを事業ごとに考えて、次に「顧客の価値」を事業ごとに考えて「事業の成果」何に今年は集中していくんだというところを事業部で考えつつ、「市場地位の決定」「卓越性を追求する」ということもやっています。

坂上:「我々の追及すべき卓越性は何か」ということですね?例えばイノベーション目標といった時にはどういう表現なんですか?数字でいく感じですか?

﨑元社長:文章で行く感じですね。あとは人材の目標、経営資源ですよね。生産性、社会性、利益目標というのをやっていますので、数字の話は最後の最後です。

坂上:人事評価との関連というか、利益が出ないと困りますよね。利益のために働いてるんじゃないけども、継続するためには必要があると。そういうところでいくと、利益の目標とか売り上げの目標は特に強く設定しているというわけではないんですか?

﨑元社長:1年間の売り上げ目標もありますし、各部門ごとのの利益目標もすべてあります。

坂上:ほかには特別に経営理念の勉強会みたいな事はされたりしているんですか?

﨑元社長:ドラッカー勉強会というのを月に一回やってます。

坂上:それは若手の方だけというイメージですか?

﨑元社長:いる人はみんな参加してくれるんですけど、基本は若手です。

坂上:それは時間的にはどのくらいですか?

﨑元社長:1時間ぐらいですね。

坂上:今、経常利益の目標といのはどのくらいにされてるんですか?

﨑元社長:今年とかじゃなくて、5年後にこういう風になりたいというのは、経常3億を目指しています。

坂上:利益率とかいうものじゃないんですね?

﨑元社長:経常額ですね。事業方針で、「規模を求めない経営」というところで、売上は関係なく、経常3億を達成する状態というのを目指しています。

坂上:それをもう少しブレイクダウンすると、今年の目標になってきますよね?

﨑元社長:それがこの5年計画の方になりますね。

坂上:それがいま何年目ですか?

﨑元社長:今年からスタートしました。今まで5年間の数字の細かい目標はなかったので、やはり数字を具体的に細かく設定しないと達成できないなという反省があって、数値目標もしっかり描くようになりました。

坂上:今の時点で経営理念の完成度と浸透度は 100点満点で何点ですか?

﨑元社長:完成度は70点くらいじゃないですかね。例えば「我々はこの圧倒的な真摯さとスピードをもって」という言葉がありますが、日常会話の中に「真摯というのはこういうことだよね」という言葉が聞こえるかどうかというのを自分の評価の対象にしていました。日常の言葉で「ああ、こいつMr.真摯だ」とかそういう言葉が出るようになったんで、それはやはり日常会話に浸透してるんじゃないかなと思います。今はこのクレドをもうちょっと浸透させる方法を考えていて、外に出ている人にどうやって浸透させようかと思って、そのためのアプリを今作成中です。

坂上:浸透の点数は何点ですか?

﨑元社長:70点ですね。

坂上:残りの30点、30点はどんな感じですか?

﨑元社長:5年後の数値計画や、5年後どうなっていたいかを考えたときに、もっとバージョンアップしなきゃいけないというか、やはりもっと目標を高くもってやっていかなきゃいけないと思うので、その分30点ぐらい上げなきゃいけないんじゃないかなと思ってます。

坂上:これ自体ができたのが4年前で、そこからは内容が何%か変わりましたか?

﨑元社長:マイナーチェンジという感じで、5%くらいですね。

坂上:個人の価値観と経営理念の関係でずれが生じることはないですか?

﨑元社長:個人の価値観というよりも、その人がなりたい姿というのがもしあるとすると、それが会社の仕事と合ってないといけないと思います。その個人がなりたい姿に向かう方向と会社の仕事が、同じ方向に向いてないと個人の成長もないと思うので、我々がどれだけ、その人が成長できる仕事を提供できるかがとても大事なことだと思います。わが社に入っていただく前に、こういう事を僕たちは強調して、大事にしてるんですよ、というのは説明しています。あとは仕事を通して理解してもらってる部分もあるんでしょうね。

西精工株式会社

会社名 西精工株式会社
代表 西泰宏 社長
本社 徳島県徳島市
事業内容 ナットや精密機械のパーツの製造、販売
売上高 45億3,000万円、経常利益:4億6000万円、経常利益率10.2%
従業員数 240人
社長略歴 1988年3月 神奈川大学経済学部卒業後、東京の広告代理店に就職
1998年 西精工株式会社入社
2008年5月、関西ねじ協同組合副理事に就任
2008年8月、同社代表取締役社長に就任
2012年7月、徳島県教育委員会委員に就任。今期で17期目。
徳島市出身。51歳。

経営理念<私たちのミッション>
私たちは、「高品質・高機能のパーツ・ナットの創造事業」を通じて、ものづくりを支え、人々の豊かな生活と幸福・社会の発展に貢献します

<私たちのビジョン>
私たちは、人づくりを基点に「徳島から世界へ ファインパーツの極みを発信する」創造力・技術力ナンバーワン企業を目指します

<私たちの行動指針>
1.私たちは、人と人とのふれあいと絆を大切にして、自己の人間力を高めます
2.私たちは、改善・改革に努め、革新の技術で安全安心の製品を提供します
3.私たちは、お客様や協力会社、地域の人々、働いている仲間に感謝して、お互いにとってなくてはならない関係を築き上げます
4.私たちは、社会人としての真摯さ・倫理観を大切にし、関連する法令・規範を順守します
5.会社は、積極的に人間的成長の場と機会を与え、社員とその家族の物心共に豊かで幸せな生活を支援します

創業の精神人間尊重の精神
○人間尊重の経営で、人と人とのふれあいと絆を大切にした、明るく活気のある会社を創りたい。

お役立ちの精神
○独自の技術開発力とサービスで、カスタマイズされた製品を提供し、お客様の価値を創造したい。

相互信頼関係の精神
○お客様とお取引先との信頼関係を丁寧に築きあげて、相互繁栄をはかりたい。

堅実経営の精神
○身の丈に合った堅実経営で、会社を末長く存続・発展させて、地域社会に貢献したい。

家族愛の精神
○社員は一番大事な家族と一緒、大家族主義で社員の幸せを追求したい。

フィロソフィーができるまで1.メールで対話する
私は毎朝6時~6時半の間に社員さんに向けてメールを発信します。テーマは例えば「これが西精工の大家族主義だけど、どう思う?」といったものです。すると、パソコンを持っている7、80人の社員さんが帰る17時までに「こう思います」、「こう感じます」、「これで合っていますか?」と返してくれます。

それを次の日に見て「山田さんが言っていることはとても素敵だね、すごい気づきだね」とか「加藤さんが言っていることは、こう考えてみたらもっと深く考えられると思うけどどうだろう?」というふうに返事をしていきます。そうやって1つのテーマに沿って1週間ぐらい対話が続いていきます。

2.業務の中で感じたことがわが社のフィロソフィー
みんながそのテーマをよく理解して、実際に行動に移していけるなと思ったら、次のテーマについて考える、というふうにやっていきました。これはおそらく2、3年続けたと思います。それが今の西精工フィロソフィーの基になっているので、社員さんはみんな納得感があるのです。いきなり「うちの理念はこういったものだよ」とか、「稲盛塾長が言っているだろうとか言っても腑に落ちないですよね。やはり、自分たちの仕事の中で自分たちが感じたことをフィロソフィーにしないとダメだと思います。自分達で作り上げたものだから納得できるんですね。

朝礼で大事にしていること1.社員さんとの対話が中心
わが社の朝礼は社員同士の対話が中心で進んで行きます。例えば一方的に社長やリーダーが社員に対して講話をして、「ほら、これが西精工のフィロソフィーだよ」と言ったところで、きっとみんなは腑に落ちないなと思ったので、そういう形を取っています。

2.創業の精神、経営理念を唱和し、噛みしめる
創業の精神や経営理念(ミッション、ビジョン、行動指針)について、対象を思い浮かべながら唱和しています。お客さんの部分はお客さんのことを思いながら、協力会社の部分は協力会社のことを思いながら、仲間の部分は仲間のことを思いながら、噛みしめながら唱和しています。これは営業でもどこでも、全部署でやっています。

3.笑顔の絶えない朝礼
うちの朝礼では特に「笑いなさい」とは言ってないのにみんなが笑っています。なにも「昨日のドラマおもしろかったな」と言って笑っているわけではなく、フィロソフィーのことを考え、話し合いながら笑っているのです。「徳島県民は恥ずかしがり屋」と言う人もいますが、あの輪の中に入ってきたら自然としゃべれるようになるんです。

4.障害があってもコミュニケーションスキルは向上する
うちは知的障害者の社員さんがいますが、今日の朝礼でも周りと同じように普通にしゃべっていました。外部から視察に来られた方に聞いても「区別がつかない」と言われます。ちゃんと発表もしていますし、みんなと一緒にできるんです。知的障害の社員さん以外に今年の新入社員にもいますし、入ってまだ2カ月の中途社員もいますが、なかなか言葉の出ない子でもだんだんとしゃべれるようになります。

5.具体的な目標のある朝礼
それはなぜかというと、今日の朝礼テーマでもありましたが、目標があるからです。その目標を達成するためにはしゃべった方が良いし、聞いた方が良いからだと思うんです。ミッションやビジョンに向かって社員さんみんながベクトルを合わせるには、思っていることや本音を話さない限り、なかなか合わないです。お互いに言いたい事が言える雰囲気が大事だということです。

6.ファシリテーターを順番で務める
対話をスムーズに進めるうえで欠かせないのはファシリテーターの存在です。総括的な進行を務めるファシリテーターと、それをフォローするファシリテーターの二人います。フォローする方がリーダーで、係長です。そしてもう一方のファシリテーターは順番に回しています。

みんなビクビクしながら「当たっちゃったー!」とか言いながら務めていて、あらかじめ用意されたファシリテーターではありませんが、それをやっているうちに上手く伝えられるようになります。これもコミュニケーションスキルの向上に役立っていると思います。自分の思いを伝えるとか人の話を聞く力というのは、やはり毎日朝礼を4、50分やっているうちに身についていくんだと思います。

7.朝礼を優先しても生産性を落とさない
僕は「理念は勝手には浸透しない。ベクトルは普段の仕事をやっているだけでは合わない。」という考えを持っています。やはり時間をとって毎日、毎朝やっていくことによって理念が浸透して、ベクトルが合うと思っています。そのためにどれだけ時間を割けるかという覚悟が必要だと思います。うちはアメーバ経営をやっていますので、時間当たりの生産性を見ていますが、生産管理をやっている課長に「長い時間かけて朝礼をやって、生産性は落ちた?」と聞くと「いえ、むしろ上がっています」と言っていました。

8.朝礼が社員さんの主体性を引き出す
朝礼が第一優先なので、機械の稼働は次です。つまり理念が一番で、その次に生産性なのです。だから社員さんたちは、なんとかして自動化できていないものを自動化したりして、朝礼が長い分、昼休みに生産性を取り戻そうとします。そこに主体的な創意工夫が生まれます。お客さんの満足も大切ですから納期は遅れてはいけない。でも、朝礼が一番大切なのだと思ったら、彼らが主体性を発揮して自分たちでなんとかしようとする。それが一番大切なことだと思います。

誰も「朝礼やってたらできないよ」とは言いません。朝礼でフィロソフィーをしっかり頭に入れ、行動に移すことが第一優先だからです。かといってトップダウンで「創意工夫しなさい」とかは言ったことないですし、何よりも自分達で創意工夫することを彼らは楽しんでいると思うのです。

9.自分の言葉で話して初めて「聞いた」ことになる
「朝礼で社長は何もしゃべらないのですか?」とたまに聞かれます。たしかに社長や常務がしゃべっていた時期はありますが、一方的に話を聞かされても、だんだん聞くふりが上手くなっていくだけだと思います。ニコニコしながら頷いて聞いているので「わかった?」と聞くと「わかりません」「じゃあなんで頷いているんだ」ということが起こります。やはり、自分の言葉でしゃべって初めて「聞いた」ということだと思うのです。

今のレベルの朝礼になるまで5年ぐらいはかかっています。最初はリーダーがしゃべっていましたが、きっと聞いていなかったんだなと思います。でもそういう時期も必要だったのではないかとも思います。

朝礼の実際(この3項目は坂上社長のメモより抜粋)1.小グループ制での対話
5、6人の小さなグループで、一つの経営理念、たとえば「人間尊重の会社でありたい」をテーマにして1人が話し、残りの5人が聞き、それを順番に回してメンバーみんなで対話をしていくという、話す、聞くというプロセスをとっています。

2.アウトプットし、インプットする
そして手元にはテキストがあり、そこにメモをとることを大切にしています。つまり、聞くだけという受け身の45分間ではなく、あくまで能動的に話し、聞き、書く、考える、そして質問し、もう一度聞く、話すという行動をとることによって脳が活性化されていると思います。

3.具体的な行動につなげる
さらに、自分が話をする場合に「がんばります」という漠然とした内容ではなく、具体的に今日何をするのか、仕事の中で具体的にどう活かすのかということを必ず話しています。つまり経営理念が空理空論ではなく、今日一日の本人の決意を喚起し、具体的な行動に活かされているのです。

リーダーシップ勉強会1.自分自身が自分のリーダー
もう一つ、今日も午後からやるんですが、月に4回、リーダーシップ勉強会というのをやっています。これは「自分自身が自分のリーダー」だという考えに基づいて開催しているので、リーダーだけが参加するのではなくて、全社員が対象です。「月に4回やっているので、どこかには参加してくださいね」と言っています。

2.7つの習慣をもとに
どういう勉強会かというと「働く楽しさ、生きる楽しさ、人の役に立つ楽しさ」といった、生きがいや働きがいを作りだせるような勉強会にしています。お手本にしているのは、スティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」です。これは朝礼でも唱和しています。

色々な本やビデオを教材に使います。例えばアドラーの「嫌われる勇気」の中の、3つの幸せの条件、自己受容、他者信頼、他者貢献について、などです。その中の例えば自己受容だったら、自分のことを好きになる。自分のことを認めている。じゃあどうしたら認められるのだろう?自分が何かの役に立っている実感があれば認められる。そのためには実際にどういう行動をするべきか。そういうことを必死になって毎月勉強しています。

3.自分のミッションステートメントを作る
こういうことをして何につながるかというと"成長している感"です。中でも一番時間をかけてやったのは"ミッションステートメントを作ること"です。これは「はい作りましょうか」と言ったところでできません。その際の項目としては"どんなときに幸せを感じますか"という「私の幸福感について」だったり、ドラッカーの言葉にある"あなたは何をもって覚えられたいですか"という「自分が死んだときにお墓にどのように書いて欲しいか」というものだったりします。その為に自分の行動規範をどう持つのかをクロストークによって考えます。

4.生きる目的が経営理念とリンクする
このあたりのことって生きる目的や目標に近いので明確にした方がいいですよね。そこで"死ぬまでにやりたい30のこと"というテーマで、これには半年かけて勉強会を開きました。こういうことをやり始めてから、国家資格とかを取り始める社員さんが一気に増えました。自分のミッションステートメントと会社の経営理念が重なるんですね。だから会社の経営理念が自分の心に収まりやすい。でもすぐには出来ないですね。朝礼や勉強会を今のような状態にするのに5年かかりました。

西精工の大家族主義1.社員とその家族
社員だけじゃなく、社員とその家族が大事なんですね。うちの会社は創業以来一度の赤字もありません。社員さんが定年退職をされる時、こういう風におっしゃいます。「おかげさまで一軒家を建てました」「おかげさまで子供を2人大学に行かせられました。ありがとうございました。」と。

わが社では年中イベントをしています。バザーやクリスマス会に、社員さんが家族を連れて来るようになりました。時々、お客さんから注文が入って休日出勤をしている人がいます。すると他の社員さんが子供と一緒に来て差し入れをするんです。そのときに子供が「お父さんの工場ここなんだ!」って言うんですね。

整理整頓は誰の為にするのかというと、お客様の為かもしれないけど、でも自分たちの家族の為であってもいいですよね。家族に見せられる現場。きっと家族に見せられる現場というのはお客様が喜んでいますよね。なによりも障害者が安全。何よりも家族が来て安全。きっと一番安全じゃないかなと思います。だから僕たちは価値を変えていきました。一番大切なのは社員とその家族だよと。

2.ビジネスパートナーとその家族
うちの会社にはビジネスパートナーがたくさんいらっしゃいます。例えば給食のお姉さん、トラックの運転手さん、修理をしてくれる機械屋さんたちです。この方たちとも家族のような関係でありたいと思います。

うちの会社では年に1回社員表彰があります。そして社員表彰の最後は社長賞です。MVPです。今年は67、8才の人が社長賞をもらいました。いいでしょ?実はこれがメインではないのです。この後がメインです。それがベストビジネスパートナー賞です。会社ではなくて社外社員の個人を表彰します。このときは給食のお姉さんを表彰しました。これがいいんですよ。何がいいかと言うと、社員表彰は勤続表彰以外はサプライズなんです。誰が選ばれるかわからないんです。

でもビジネスパートナー賞だけは1週間ぐらい前に社員に知らせるんです。すると、表彰の時にズラっと列が出来ている。社員さんが自分たちのポケットマネーで、たとえばこの給食のお姉さんだったら韓国のドラマのDVDやお菓子や花を渡すのです。お互いに関心があるからです。普段のコミュニケーションの中でこういうものが好きだと分かっているから、それをプレゼントしたりするんですね。なによりもこのお姉さんは僕たちに関心があります。僕たちのことが好きなんですよ。

誰々さんはカニとエビのアレルギーだ。誰々さんはダイエット中だからごはん少な目にする。とかうちの社員さんのことを全部知ってくれています。給食会社からはそんなことは関係なしに、例えばカニクリームコロッケがメインだったら、そのカニクリームは置いといて自分でメンチカツを買いに行くんです、南さんという人の為に。これは嬉しいじゃないですか。だから大好きなんです。でも1年半前にこの給食会社は廃業したので、そのお姉さんは元気がなくなっちゃったんです。大好きなうちの会社に来れなくなったから。うちの社員さんも彼女が大好きなんです。ものすごく元気がなくなったけど、簡単な話です。

次の給食会社に対してうちの会社の出す条件は「彼女を雇ってください」ということです。うまくいきました。その後「社長ありがとうございました」って来てくれました。嬉しかったです。社員さんが一番ですから、給食のお姉さんが代わるのは嫌ですよね。ここまで僕たちのことに関心がある給食のお姉さんなら、代わるのはお互い嫌ですよね。だから今日も楽しく働いてくれていると思います。大切です、ベストビジネスパートナー賞。お客様より大切なんです。

日本で一番大切にしたい会社の条件1.人員整理、会社都合による解雇をしていない
これは昔からやっていなかったです。それとリーマンショックの時に誰も辞めさせません、うちは解雇しませんと言いました。僕はすぐにさぼるので自ら自分を厳しくするというのが僕のやり方です。言ったからにはやらないといけないということです。

2.ビジネスパートナーにコストダウンを強制していない
この間、お付き合いのある運送会社が「ここまで石油が上がったら赤字だ」と値上げの要求をしてきました。僕は、そのトラックの運ちゃんと仕事をしているうちの製品係のリーダーに「40万円の月値上げが来ているけどどうする?」と聞きました。そうすると「やります」と言われました。「自ら40万円のコストダウンの案を出すからこの40万円の値上げを認めてあげてください」と言われました。

理念は大切ですが、理念の中の何が大切かと言えば"この人の為に頑張る"ということですね。うちの会社の人達は理念が入っているからすごいですね。会社の為じゃないです。このトラックの運ちゃんの為に頑張ろうと思ったんです。40万円の中で35万円のコストダウン案が出てきました。「こういう風にしますから、この運送会社のコストアップを認めてあげてください。残り5万円足りませんが僕たちもっともっと頑張りますから」と言っていました。

泣きそうになりますよね、すごいなと。でも核心です。人は自分の為に頑張りきれないです。横にいる仲間とか横にいるビジネスパートナーの為だったら本気に知恵を出すのです。私は即答でOKでした。

だから僕たちは日々、経営理念や創業精神の中で誰の為に頑張るのだ、何のために頑張るのだということを入れていくわけです。一緒に働くトラックの運ちゃんのために頑張ればいいじゃないですか。そしたら知恵も出ます。これが理念です。ただの理念じゃなくて、理念の中のもっと深い部分です。この人の為になら頑張れる、あきらめないぞというところです。僕はそういう風にして仕掛けます。それでみんな動くのでやっぱりすごいなと思います。まさに創業の精神そのものです。

3.障害者雇用率は2.0%以上
うちの目標は4.0%です。いま2.7%です。障害者雇用率は大切です。でももっと大切なものがあります。それは障害者幸福率です。そこで働く障害者が幸せ、だけではなくてその障害者の周りの人も幸せである。そうでなければおもしろくない、楽しくない。当社の障害者に聞いてもらえばわかりますけど、「幸せ?」と聞いてもらえれば100%幸せと言うと思います。そのとなりで一緒に仕事をしている人も幸せと言うと思います。障害者雇用率を守っているだけなら意味がないですよね。つまらないですよね。

ある知的障害を持つ高校生が3年間インターンシップに来ました。高校1年生のときには、検査の仕事を2週間しました。私は「せっかく製造現場なんだからモノ作りの現場で働くことってムリかな~?」と主体性をもった社員さんに言いました。するとある部署が「やりましょう!」って手を上げてくれました。現場は創意工夫をして受け入れをしました。2年生の時は半分検査の仕事をして、半分現場に行きました。そして今年の3年生のときは4週間かけて現場で仕事をしました。付き添いの支援学校の先生が毎日来ます。でも時々離れるんです。なぜならば、ひょっとしたら本気でここで働けるかもしれないと思うからです。だから時々いなくなって負荷をかけるんです。

6月にやり始めて出た答えが"いけるかもしれない"でした。西精工の製造現場で彼は働けるかもしれないと。そしてこの9月に、また1ヶ月ぐらいかけて最後の見極めをしました。今日の午後はその子がここで働けるかどうかの会議をします。きっと現場と総務の答えはイエスだと思っています。

でもこの障害者は素晴らしいのですよ。ブレないです。ごはんだよと言うまでずっと作業をしています。朝の挨拶と帰りの挨拶も全部元気のよさは同じです。社長室にいても彼が来たら聞こえるし、帰りも「お世話になりましたー!!!」という声が聞こえるので彼が帰ったことがわかります。

それとこの会議室でお昼を2回ほど食べたのですが、挨拶がぶれないです。そして僕たちには勉強になるんですよ。集中度とあいさつのブレなさ。僕たちは相手をみて挨拶していませんか?お客さんの挨拶とジュースを入れに来てくれる人の挨拶を変えていませんか?同じような調子で家族に言っていますか?リーダーに対しては大きめの挨拶、後輩に対しては小さめの挨拶になっていませんか?彼は相手を選ばないからそうはならないんです。

最後の日にお昼ご飯を一緒に食べたんです。そして部屋を出る時に、彼は誰もいない部屋に向かって「お世話になりました!!」って言ったんです。すごい、やっていることがブレない。だからなにより僕らが気付いて成長させてもらっています。

4.きれいごとをやりながらも黒字経営である。
おそらく7月決算で9.5~10%出ると思います。やっぱり経常は13%なかったらダメだと思っています。ほとんど10%以上でこの何十年か決算してきました。リーマンショックの時だけ2%になりました。

僕が思うには、これだけ綺麗ごとを言っていますけど、綺麗ごとを綺麗ごととしてやり抜いて利益を出し続けていきたいですね。そして答えが出るのが20年後です。経営理念を策定してから今まで8年間答えが出ています。理念を実践しても一回も赤字になっていません。僕は今50歳です。20年後の70歳の時に「ここまで関わる人達の幸せを追求しながら28年間1回の赤字もなかった、ほら間違えていなかったでしょ」と言いたいですよね。

5.仕事と子育て、介護を両立するための環境を整備する
うちの会社は結婚、出産を理由に辞める社員さんはいません。3人産んでもきます。先月、子供が2歳、4歳、6歳のお母さんを採用しました。子育てをやっている女性というのは時間の使い方が上手いですよね。それから命を預かっているからものすごく生命力がありますよね。男性にはない生命力が女性にはあります。でもそれを活かしきれていないのではないのですかね?

これからは障害者を活かすことと、女性を活かすことと、60歳以上の人を活かすこと。活かすことって言うと上から目線ですね。一緒に輝くことですね。そうするともっと会社はいきいきするのではないかと思っています。

子供を2人産んでわが社に帰ってきた、ある女性社員の机の上。「土井よしみさんお帰りなさい、これからもご機嫌な笑顔で私達にハピネスをくださいね」とうちの社員が彼女に宛てて書いたメッセージです。そのチームの名前の一番上に僕の名前が入っています。前日に「社長、こういう風にしておきましたけど、何かアドバイスはありますか?」と聞いてきました。「君たちすごいね!最高だね」と答えました。

これなにがすごいかわかりますか?"これからもご機嫌な笑顔で私達にハピネスをください"ですよ。僕たちが支えてあげますじゃないんです。あなたが必要だってことを言っているんですよ。あなたが来たらこの現場が明るくなるって。あなたによって僕たちは幸せにされているって、必要だって言ってるのです。だからすごいんです。

こんな言葉は普通出てこないです。これが主体性です。この主体性には僕は感動しました。
その女性は「帰ってきましたー!こんな言葉くれてありがとうございます!」って喜んでいましたよ。

理念教育

理念教育とは何か?
理念教育とは経営理念を全社員に浸透させることです
理念教育とはつまり、社長の思い=経営理念を全社員に理解してもらい共感してもらうこと
理念教育があれば、問題が起こったときに全社員が理念を持っているので判断を間違えない
こういった問題があったときにどう判断していいのか?に対処するための方法が理念教育です

理念教育は必要か?と問われれば理念教育は必要です、と答えます
なぜなら、会社とは社長の思いの実現です理念の共有なくして会社は機能しません
経営理念=思想・判断基準の共有がなければ会社はまとまらない
ただの金をもらうためだけの集団になり下がります

ウチの会社はまとまりがなくて・・・という社長に最も欠けているのが理念教育です

理念教育、理念の共有なくしていい会社はできないのではないでしょうか?
理念教育とは実は、毎日、仕事の中で行われているものです

理念教育に興味があればこちらへ

企業は何のために存在するのか?

企業は利益を追求します。なぜなら企業が存続し続けるために利益が必要だからです。企業にとっての利益は、人間にとっての食事、車にとってのガソリンと同じです。

「企業は利益を出すために存在する」、は人に例えると、人は食べるために存在するとなります。でも、それはおかしい。人はパンのみに生きるのではありません。では、人は何のために存在するのか?その答えは、その人の人生観、価値観の中にあります。

企業も同じ。企業も初めは生き延びるためだけに利益を追求します。しかし、会社としてのステージが上がれば、利益のためだけに存在するのではないと気づくはずです。ここで、社長の人生観(死生観)、社会観、価値観が問われます。

この会社は何のためにやっているのか?
なぜこの仕事、この会社をやり始めようとしたのか?
なぜ、われわれは今日、ここに集まって仕事をしているのか?
何のために?そこに答えを出さなくてはならないのです。

人生観とは、社長・社員がどんな人生を送ろうとしているのか?です人は死ぬまで生きる。当たり前なんですが、死ぬまで生きるのです。つまり、毎日命を使っている。今日という日を命を削って生きている。その命を何に使うのか?何にかけても惜しくないと思えるのか?何に命をかけるのか?という問いに対する答えが必要なのです。

だから、死生観が必要となる。人はどう生まれ、どう生き、どう死ぬか?を考えざるを得ない。そして、会社を経営するなら、お客様が必ず存在する。つまり、社会とのかかわりの中で生きることとなる。自分の都合だけで生きるのではなく、他者との関係性にい気付かざるを得ない。

お客様から見てどうなのか?自分はいいと思うが、お客様は欲しいと思っているのか?と「自分」と「他人」「社会」との関係をわからなければ会社は続かない。そしてさらに、どんな考え方で、経営をするのかという価値観。ずるをしても儲ければいいのか。正々堂々と利益を追求するのか?というベースとなる価値観。そして、どんなお客様と付き合うのか?どこまでを営業範囲とするのか?何を売るのか?どう売るのか?という戦略部分も、実は社長の価値観から出てくるわけです。

それに気づいていない人も多いのですが、実はこの、考え方、価値観がとても大切でなのです。では、企業目的とは?

企業理念 経営理念
企業理念 経営理念2

経営理念は必要か?

経営理念なんてなくても大丈夫?経営理念なんてなくても大丈夫だよという中小企業の経営者の方は多いです

実際に全国1万社以上の企業を対象に行われたアンケートでは
経営理念がある=53% 経営理念がない=43% 無回答=3%

経営理念はいつ作ったか?
創業時=40% 5年以内=19% 10年以内=12% ほか=29%

つまり、経営理念がある会社と経営理念がない会社は約半分半分です
そして、創業5年以内に理念を作った会社が約60%
だから、経営理念がない会社の方が多く感じるわけです

企業経営において理念がないとすれば社員が何のためにここで働いているのかがわからない(存在意義の喪失)
この会社がどうなっていくのかがわからない(将来性、夢の喪失)
何を判断の基準としていいのかがわからない(判断基準の喪失)
ということが起こります

そして、経営理念がなければ社内でベクトルがあわず、コミュニケーションが滞り
社内に不調和や不正がおき、それが顧客に伝わり
業績が低迷します
そこで、理念と業績はつながっていると言っていいのかもしれません

100年以上続く老舗を30社ほど取材してわかったことがあります100年以上続く老舗を30社ほど取材してわかったことがあります
そこには明確な理念があった!
そういえるとよかったのですが実際はそうでもありません
が、しかし、家訓や言い伝えのような紙になっているもの
なっていないもので伝えられているようでした

特に、業績を伸ばし、素晴らしい経営をしている会社の有名な例では下記が経営理念の参考になります

花王の基本理念 「よきものつくり」
ジョンソン&ジョンソン クレド(我が信条)

理念の中には
自利利他、積善、陰徳、孝行、祖先崇拝
正直、勤勉、努力、本業特化、質素倹約、忍耐
などの儒教に根ざした倫理規範と経済規範があるといわれています

中小企業が経営理念を作る場合はまず大義名分、つまり何のために仕事をするのか?

そして、これからどうしたいのかという将来の夢を語り
毎日の行動をする際に、何を基準にして判断したらいいのか
具体的にどうしたらいいのか?という毎日の行動指針を
理念として示してゆく必要があります

理念の中にあるこれらの項目がないために
中小企業の社長の悩みはつきません

何でいったことがわからないんだ
こんなことも判断できないのか

うちの会社は、いちいち指示しなければできないバカばかりだ
と思うようになるのです

気をつけてください
人ごとじゃない、自分のこと

理念は外にあるものではなく社長の心の中にあるものです

経営理念は社長が作らなければ誰も作れません
今はまだ、会社が小さいからいいや・・・
としておくとずっとそのままです

経営理念
今日からまず、すこしでも作り始めてください
いい経営をして、会社を大きくしてゆく時には
経営理念は「絶対に必要」なものです

いい会社をつくりましょう!
世のため人のため

経営理念のある誇りある
いい会社をつくりましょう

経営理念のつくり方1
経営理念のつくり方2

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