ユメ(ノ)ソラホールディングス株式会社 経営理念

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

吉田博高代表取締役CEO(以降「吉田CEO」と表記)
ユメ(ノ)ソラホールディングス株式会社・代表取締役CEO・吉田博高です。
事業内容は、漫画、玩具、個人出版物、キャラクターグッズの販売・通信販売を主事業にするほか、漫画の企画・編集・キャラクターグッズ制作を手掛けています。売上高200億円、経常利益5億円、経常利益率2.5%、従業員約1,000名です。

坂上:次に吉田CEOのプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

吉田CEO:44歳、東京都世田谷区出身、法政大学キャリアデザイン学部卒業、法政大学大学院イノベーション・マネジメント専攻卒業、1988年に工業高校卒業後ソフマップ秋葉原店に勤務。94年虎の穴創業、96年法人化、03年株式会社化、13年ホールディングス化し、今年で虎の穴創業20年になります。

坂上:今会社の経営者になられてるわけですが、ご家族の影響はありますか?

吉田CEO:あったと思いますね。父は兄と二人で、従業員5人くらいの電気工事業を経営していました。孫請けのさらに下請けで、仕事内容もテレビの回線やLAN回線を家庭に引っ張ってくることぐらいだったので、利益率も悪いから、あまりあの職業につきたくないなと思ってました。

坂上:面白くない感じがしてたんですね。その時から自分で何かをやってみようとか、そういう方向に思いが向いたんですか?

吉田CEO:僕はパソコンが好きで小学生の時からやっていて、中学校に上がるころ、父に「勉強するからパソコンを買わしてください」といって、本当はゲームやりかった。中学から高校までひたすらゲームやってましたね。

坂上:中学、高校から起業に至るまでは?

吉田CEO:中学生のころにはパソコンに燃えて、あまり勉強をやる気がなかったんですね。漠然とそれでも生きられると思ってました。当時の、記憶して物事に答えるという教育を僕はあまり面白いと思ってなかった。創造性がないじゃないですか。高校卒業したら独立しようと思ってましたので、卒業の半年前くらいから、コンピューターのゲーム会社や、サポートをするビジネスのモデルを10個くらい考えていました。

坂上:でも結局独立しなかったわけですよね?

吉田CEO:そうです。うちの父に独立して事業をやっていきたいから「1000万お金を出してくれないか」と頼んだのですが、親子で金の貸し借りはしないということで出してもらえませんでした。そこから3年半ぐらい秋葉原のソフマップでアルバイトをしました。一番やりたいビジネスがソフマップのようなモデル、中古パソコンの買い取りとかソフトウエアの開発だったので。そこで学んで同じビジネスを立ち上げようかなという思いはありました。

坂上:今の経営理念を作ろうと思ったきっかけは何だったんですか?

吉田CEO:98年の5月に池袋のお店をオープンした時に、当時は売り上げが30億くらいで、会社案内を作る時に、「お客様からのイメージもあるから、理念も作らなくちゃいけないだろう」と、そういうレベルでしたね。社員数はアルバイトを入れても100人に満たなかったころです。

坂上:今お手元にいただいている「仕事を通じてクリエイターのファミリーになる。ビジョンに向けて実現するには理念に共感共有できる人だけと仕事を行うことを決め、経営理念を新たに作成した」とありますが、これはいつごろのことですか?

吉田CEO:今から3、4年前のことですね。今から7年前に赤字決算を出して千葉に移転した時に、56人ぐらいが2、3カ月のうちに退職していきました。

坂上:当時で何人ぐらいいらっしゃったんですか?

吉田CEO:164名程度です。その時に「だれとやるか」というのがやはり改めて必要だと感じました。当時は今から考えてみると、前例主義の考え方が強くて「そういうことは前例にないから」という状況で、経営理念は社員のためにも重要なことで、これは作らなくてはいけないと、ひしひしと感じていたんです。それでちゃんと作ろうと思いました。

坂上:経営理念を作って気付いたのは、クリエイターに支えられている実態を改めて痛感したということですか?

黒田COO:年間収益の中では同人誌の売上高比率が大きいんですが、それらを作られているのはいわゆるクリエイターさんで、そういった方々に長年の取引を通じて支えられているところが我々の強みであると改めて認識をしました。もっとクリエイターさんに寄り添う会社として全社を挙げて努力すべきということに気付きました。

坂上:経営理念は時間的にはどれくらいでつくったんですか?

吉田CEO:1年くらいかかりましたね。素案をつくるのは時間かからなかったんですが、文章をどういうふうにするかとか、表現方法だけがちょっと時間がかかりました。

坂上:それはご自身が全部作られたんですか?

吉田CEO:一番最初に社是である利他道精神というのをつくりました。

坂上:それはご自身の頭の中にもある程度昔からあったんですか?

吉田CEO:それまでは「売上高を上げればいい、売れる作品があればいい」という考えでしたが、「なんで俺たちは飯が食えてたんだろうか」とか「どうしてお客様がうちに来ていただいてるんだろうか」ということを考えたときに、他人の喜ぶ顔を増やしていくビジネスをしていかないとだめだろうなと。当時もやってはいたんですが、それを表だって言ってなかったので、「他人のために働こう」という言葉を出していこうと思ったんです。

坂上:この利他という言葉はどこから来たんですか?

吉田CEO:稲盛さんの本を読んだ際、取り入れました。

坂上:この利他に対して「利他道」と、「道」が入ってるところも特徴的ですね?

吉田CEO:僕は武士道の精神が非常に大事だと思っているんです。武士道って毎日死を意識するから一生懸命生きるということですよね。どちらかというと僕等精進だろうなということで、道を付けました。必要部分の要素だけ取り出して、行動理念の中には生きています。

坂上:理念をつくる時に、どこかの瞬間で「理念って大事だなあ」と自分の中で意識が変わっていくのはどういうイメージだったんでしょうか?

吉田CEO:意識を変えていかないといけないなと思ったのは、赤字決算を出して人がいなくなった時に、「こんなに簡単に人が辞めていくんだ」ということに対してでしたね。その時に、共通の意識を持った集団を作っていかなければと心底思いました。

坂上:ご自身が、後に続く若い経営者に経営理念のことについて伝えるとしたらどんな感じですか?

吉田CEO:理念が必要かどうかは会社の規模によると思いますね。社員が少ないうちはひとりひとりと話ができるじゃないですか。だから「お客様のために行動してるのか」ということは常に問いかけていたので、面接は私が全部アルバイトまで実施してました。そういう点では人の内面を見て「こいつだったら大丈夫」という判断をしていたので、特に理念を作ってなかったというのはありました。

でも、お金がなくて理念だけだったらやっていけないから、理念と売り上げとで50対50ぐらいは必要なんじゃないですか。理念って結局、社会に対して良き金をいただくことじゃないですか。良き金をいただき良き行動をしていく集団が、良き会社を作り上げていきますよね。ですからやはり理念の重要性の比率は5割くらいはあると思いますね。

坂上:経営理念をつくる苦労はありましたか?

吉田CEO:つくる苦労ではないのですが、強いて言えばまだそんなに浸透していないということですかね。

坂上:浸透の部分ですね。これは最後に聞こうと思ってたんですけど、経営理念の点数と浸透の点数は何点ぐらいですか?

吉田CEO:浸透度は30点ぐらい、赤点ですね、まだちょっと。

坂上:理念の点数は?

吉田CEO:理念の完成度は70点ですね。今の私たちの成長のラインだと、もうちょっと上があると思います。

社是:利他道精神
ビジョン:クリエイターのファミリーになる
ミッション:この星に生きる全ての人に、創造と発信の場を提供し、人類の幸せに貢献する
大切にする価値観:
自分の良心に従って行動しよう―誠実
成功におごらず、失敗から学べる人になろう―謙虚
思うだけでなく「ありがとう」と声に出そう―感謝
上下関係なく困っている仲間に手を差し出そう―愛情
逆境をチャンスととらえ、挑戦を楽しもう―胆力
立場にとらわれず、まず自分から行動しよう―責任感
物事の良い面に目を向けて、笑って生きよう―積極性

坂上:今の経営理念はこの社是「利他道精神」および、「大切にする価値観」、それとビジョンとミッションがあり、これ全体で経営理念と呼ばれているんですね。完成度が70点で、あと足りない30点はどんな部分ですか?

吉田CEO:やはり大切にする価値観はちょっと長いので、もっと覚えやすくする工夫もありますが、根本は行動に移せてないことですね。利他道精神は結構いい表現だと思います。短いし、わかりやすいじゃないですか。

坂上:個人の価値観と経営理念の関係はどうですか?

吉田CEO:ずれてる感じはしないですね。基本的に悪いことは書いてないですからね。これに反発してたらかなりおもしろいタイプだろうと思います。

坂上:経営理念と業績の関係ということもお聞きしてまして、経営理念があると業績は良くなりますか?

吉田CEO:僕の経験からすると、成長戦略をとっていくときに、いずれかは大企業病になったりする例が多いですが、その時にやはり、理念というものがあると引っ張ってくれそうな感じがしますね。人が同じ方向向いてるからバラバラにはならないというか。そういう意味合いとしてとらえてます。

ビジネスはビジネスでじゃんじゃん稼ぐというのも大切な視点なんじゃないかと思います。理念は業績にとって土台のようなものですね。稼ぐことは稼ぐんですけど稼ぎ方ってあるじゃないですか。そこに亀裂が入ったり考え方がずれていくと、やがて崩壊したりとか、何か問題が出てきたりしますよね。

坂上:人として正しいことというか、間違ったことをしないということをお互いに持つという感じですね。先ほどのお話で160人くらいの時に人が辞めるといったことがありましたが、理念を持った方がいい人数の線みたいなものはりますか?

吉田CEO:振り返ってみると、創業時から作るべきではないかと思います。人って自分勝手に期待をしたり、思想をもってるのは当たり前のことで、自分が一番と思ってる人たちと仕事をしていくことはあまりいい結果を生み出さないですね。やはり考えていることは次第にずれてくるので、仲たがいすることもあります。理念という方向性を打ち立て、その方向性に共感できると言ってくれる人と立ち上げていった方がいいと思いますね。

坂上:理念を浸透させるにあたりどのように価値観を共有していったんですか?

吉田CEO:最初はほぼできていなかったと思います。理念を作ってからは、自分自身が理念に沿った行動をこころがけていました。でも、当時はどちらかというと行動理念のようなものはなかったです。ビジョンもどちらかというと企業の事業領域みたいなもので「世界中のお客様にご満足いただける高い作品と最上のサービスを提供する」素晴らしい漫画文化を世界へ未来へはばたかせるというのがこのころの最大のビジョンだったんですが、じゃあ具体的な行動って何だろうと明確にできなかったってことが浸透しない理由の一つでしたね。

坂上:浸透させる工夫や具体的な行動はどんなふうにされてるんでしょうか?

黒田COO:昼朝礼で、パートナーも含めて全員で唱和しています。1日1回で3分くらいですね。ビジョン、ミッション、社是、大切にする価値観を唱和しています。あとはミーティングであったり何かしらの判断をするときに、みんなが意識して「それって利他道精神に反するんじゃないか」とか理念を基に判断するようにしています。一部には今ようやく浸透し始めていますね。あと社員全員に理念を書いたカードを配っています。

坂上:新卒と中途で比率はどうですか?

吉田CEO:50対50ぐらいです。

坂上:仮に中途で50人入ってきて、その人たちはカードをもらって入社の後に理念の勉強会とかそういうのはあるんですか?

吉田CEO:特にそこまではやってないですね。

坂上:ということは、とにかくカードをもらい、これを読んでおいてねと言われて朝礼で唱和するという感じですか?

吉田CEO:そうですね。ただ、こういうことが大切だってことに対して、仕事の中で説明するようにはしてますね。

坂上:それはだれがやるんですか?直接の上司ですか?

吉田CEO:まだ11人の幹部の人間しかできないですね。

坂上:浸透させるうえでこの辺に苦労してるということは何かありますか?

黒田COO:自己の利を考えるよりは他人の利を優先するということを、行動や判断でやっていけるかどうかということがなかなか難しいですね。

吉田CEO:サラリーマンっぽい人だとちょっと厳しいし、上司になっていきなり官僚みたいになる人も困るし。

坂上:経営理念を作ってこれを浸透させていくのにあたってトップとしてご自身が気をつけてることって何ですか?それ社長やってないじゃんって言われたりもしますよね?

吉田CEO:僕はこういう理念を持った人たちと仕事をできるようにしていくという人物像をまずとらえますね。行動理念に照らし合わせて、これに即してない行動をしてる人たちには、うちの会社にいてもらいたくないってこともあえて言ってますね。

坂上:例えば大切にする価値観を一つ二つおっしゃってもらってもいいですか?

黒田COO:自分の良心に従って行動しようというのが「誠実」。人それぞれ良心があるので。あとわかりやすいのは「胆力」というのがあって、逆境をチャンスにとらえ、挑戦を楽しむと。物事の良い面に目を向けて笑って生きようというのが「積極性」だったりとか。

坂上:そういうものを一つ一つみんなで決めたんですか?

吉田CEO:この前の項目の3項目くらいは実はそんなに難しくないですよ。どちらかというと後半がちょっと難しくなってるというか。「誠実」というのは実は君に託されてるよ、というのを言ってるだけなんです。

坂上:大切にする価値観という表現で「誠実、謙虚、価値観」それが自分の良心に従って行動するのが誠実であるということですね。いい言葉ですね。

黒田COO:浸透させる取り組みの一つとして人事評価制度の中に入れてます。

坂上:それはどのくらいの比率ですか?

黒田COO:行動評価の方にはすべて入れてます。

坂上:全体で100点のうちの何点くらい入れてますか?

黒田COO:もちろん管理職と一般職で変わるので一概には言えませんが、管理職の場合は業績が7割で3割が行動評価。逆に一般職の場合は業績は3割で7割が行動評価。より一般職に近い層に浸透させていきたいということですね。

坂上:そこも考え方の表れですよね。まさに価値観、理念ですよね。

吉田CEO:比較的これは日本人が好きな行動だと思いますね。

坂上:これはご自身が7、8割これだと思って、8割方作って皆で並べ替えたりとかそういう感じだったんですか?

黒田COO:吉田CEOと経営メンバーを集めて、コンサルの方にも入ってもらって抜き出して決めて行ったんです。

坂上:それはある程度時間をかけて?

黒田COO:外部の会場を借りて、当時通算4時間をかけて行いました。

坂上:さあやろうといって決まるまでは1カ月くらいですか?

吉田CEO:項目出しが結構大変でしたね。

黒田COO:何を大切にするかというのをまず抜き出し、吉田の方はそれを「そうじゃないんじゃないか」とか「どう思ってるんだとか」話を聞いたりして。

坂上:それはそのコンサルの方が、ご自身と黒田さんにインタビューして?

黒田COO:吉田と経営メンバー7人くらいです。全員集めてブレストみたいな形で抜き出し、付箋をはって言葉を抜き出してという感じですね。

坂上:それを3、4時間を3回ぐらいやったんですか?

吉田CEO:もっとやっていたと思います。1日当たりだとそんなに長くないんですが、あとでそれを繰り返し、それでいいのかとか最終的には合宿をして作りました。

坂上:ミーティングした回数的には10回ぐらいですか?月4回としても3カ月くらい?

吉田CEO:当時は、これ以上は出ないだろうなというぐらいには作りこみましたね。今から考えてみると、直したくなる部分もありますが。わかりやすいようにと変えていったんでどうしても長くなってしまったんです。

坂上:ご自身で何割くらい作られた感じですか?

吉田CEO:今回の経営理念は人選していく中で結構絞り込んでましたので、私が作った感じからすると、だいぶ話も早くまとまった気がします。特に後半の部分ですね。最初に作った方は自分だけで作ったのですが、後半は5割ぐらい手伝ってもらった感じです。

坂上:仮に言葉がここに100語あるとすると、最初の時点でご自身が出した言葉というのは何割くらいですか?

吉田CEO:最初の頭の部分とか「クリエイターのファミリーになる」とか、「利他道精神」とかは私が、あとの部分はみんなで出していって意見を合わせました。

黒田COO:ミッションが一番大変でしたね。最初は「地球上に」くらいだったんですが吉田的には「この星」とか「宇宙」くらいなイメージになっていたので。

坂上:この7項目はご自身がどれくらい作られたんですか?

吉田CEO:これはみんなで話していく中で作ったので、僕の考えた部分の方が少ないと思いますね。最初のこの大切にする価値観、「誠実」は、ノードストロームの経営理念の項目の第一条を見た時にこれは重要だなと思い取り入れました。

坂上:本でご自身が接して、いいなと思われたわけですね?

吉田CEO:経営に関する本はだいぶ読んでるので。その中でゴミから拾ってきたようなタイヤを返しても、ちゃんと返品のお金を払ったとか、そういう事例を通して、小売業の行動理念については学べた気がします。その他は足りない部分を補足した感じでしたね。

坂上:最後に若い方へのメッセージを一言お願いします。

吉田CEO:理念は人を一人雇う時点で作っておくと、自分達がなんのために仕事をしてるのかということが理解でき、そこで働く人たちがより「お金だけじゃない対価」を理解して育っていくと思います。ぜひ経営理念を、行動理念含め作っていくのがいいんじゃないかと思います。


経営理念
【社是】利他道精神
【ビジョン】クリエイターのファミリーになる
【ミッション】この星に生きる全ての人に、創造と発信の場を提供し、人類の幸せに貢献する
【大切にする価値観】
自分の良心に従って行動しよう―誠実
成功におごらず、失敗から学べる人になろう―謙虚
思うだけでなく「ありがとう」と声に出そう―感謝
上下関係なく困っている仲間に手を差し出そう―愛情
逆境をチャンスととらえ、挑戦を楽しもう―胆力
立場にとらわれず、まず自分から行動しよう―責任感
物事の良い面に目を向けて、笑って生きよう―積極性

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