ティーペック株式会社 経営理念

坂上:まず会社名とお名前、事業内容や会社の規模について伺わせてください。

砂原健市社長(以降「砂原社長」と表記):ティーペック株式会社・砂原健市です。
事業内容は、24時間年中無休の電話健康相談サービスの提供、メンタルヘルス従業員支援プログラム(EAP)、セカンドオピニオン手配紹介サービス、糖尿病専門医紹介サービス、軽度認知障害スクリーニングテストの販売などです。前年度の売り上げが約35億6200万円、経常利益が約3.13億円、利益率が約8.7%になります。現在スタッフ204名 相談スタッフ364名です。

坂上:次に社長様のプロフィールをお伺いします。お歳やこれまでの経歴をお聞かせ下さい。

砂原社長:東京都台東区浅草生まれで、代々個人事業を営む家庭に育ちました。大学時代に起業後、23歳で保険代理店業を成功させました。その経験を現在の事業に生かし10期連続増収増益しています。経営歴は25年です。

坂上:まず、誰に何を販売しているのかお聞きしていいですか?

砂原社長:私たちは、さまざまな企業や団体に対して、メイン商品ともいえる「24時間の電話健康相談」を提供しています。私たちはよく3本の柱と呼んでいるのですが、その最も重要な部分です。

坂上:メインとなる商品の中身を簡単にご説明していただけますか?

砂原社長:売上の半分となる「24時間の電話健康相談」なんですが、健康医療、介護、育児、メンタルヘルスなどの各種相談に、医師、保健師、助産師、看護師士、臨床心理士、精神保健福祉士といった経験とスキルを持つ専門家が24時間年中無休で電話対応をするというものです。

坂上:契約先の対象はどの様になっていますか?

砂原社長:契約の約半分が「企業・団体の福利厚生」で平たく言うと、健康保険組合、公務員向け共済組合や企業の人事部の契約です。「お客様サービス」の対象企業は、保険会社とカード会社です。日本の大手とか外資系を入れて保険会社は17社ぐらいです。

坂上:なかなか興味深いサービスですね。その商品の単価などはどのような設定なんでしょうか?

砂原社長:サービス対象企業に対してユニークな計算式があり、年間のその人数に対して、相談料、マンスリーの報告料というのが、その計算式によって算出した価格を設定して年間契約をしていただいています。

坂上:相談サービスの契約金などの価格はいかがですか?

砂原社長:年間契約で1社あたり2000万円から5億円までさまざまです。

坂上:御社の年商35億円は、三本柱の商品「ハロー健康相談24」と「ドクターオブ ドクターズネットワーク」と「こころのサポート」それぞれの売上分布はいかがでしょうか?

砂原社長:「ハロー健康相談」は12億円、「ドクターオブドクターズネットワーク」は13億円。そして「こころのサポート」は10億円を売り上げています。中でも収益の柱となるのが保険会社です。その他の企業を含めて合計1600社が契約しています。

坂上:例えばどのような企業ですか?

砂原社長:明治安田生命、AIG富士生命、住友生命、三井生命、大同生命、それから外資だとメットライフ生命とかAIU損害保険、プルデンシャル生命とかアクサ生命などです。

坂上:ティーペックと大手企業が年間の契約をして、その会社で働く従業員が御社の電話相談サービスの直接のユーザーですね。その利用価格はどの様にして決まるのでしょうか?

砂原社長:企業1社当たりのご利用人数、つまり社員数と業種などで決まります。

坂上:大学在学中に起業されたということですが、なぜ在学中に会社をやろうと思われたんですか?

砂原社長:大学は日本大学芸術学部に入学し、映画監督を目指していたんですが、大学に入って2年で、これは食える商売じゃないとわかったんです。すごく斜陽の匂いがしたんですね。その頃から「何とか実業家で生きていきたい」なみたいなことを考え始めたんです。

坂上:それはご両親の影響でなければ、どなたかの影響があるんでしょうか?お父さんもおじいさんも事業家で、サラリーマンではなかったわけですよね?

砂原社長:中学高校ぐらいから感覚的には持っていたのかもしれません。でも中学高校ぐらいのときには映画監督イチオシでした。大学に入ってからそれが具体化されて、ビジネスを自分で立ち上げて起業をするんだと思うようになったんです。経済的にも豊かになりたかったし、何よりも自分の可能性を試したかった。

坂上:在学時代に立ち上げた1社目の時、経営理念について考えたことはありましたか?

砂原社長:ないです。ただビジネスでもうけてみたかったんですね。大学3年になって商売をしようと考えて、営業的な面での自分の可能性を試すつもりで自動車部品の並行輸入の会社を作りましたが、1人で2年ぐらいやって借金を残しました。

坂上:2回目に起業した動機は何ですか?

砂原社長:かなりの金額の税金を滞納していて、それを返すために保険会社の代理店を始めたんです。

坂上:なるほど、それで資本がなくてもできる保険代理店をされたんですね?

砂原社長:はい、1973年に、吉祥寺で代理店経営を23歳のときに始めました。大学を卒業した年ぐらいに結婚したんです。できちゃった結婚だったんですね。生まれた子どもを養わなければならない。借金も返さなくちゃなんないし、生活もしていかなくちゃなんないしっていう。三鷹に住んで吉祥寺に通いました。

坂上:その2社目を作られたときは、経営理念はありましたか?

砂原社長:いや、これはもう借金を返すだけなんです。とりあえず借金があるぐらいだから資本もないですし。

坂上:1973年から何年ぐらい保険代理店経営をされたんですか?

砂原社長:15年間やりました。このティーペックをやりたかったんで辞めました。保険の代理店はすごくうまくいって、本社のあった吉祥寺はもちろん、主に多摩地区と、埼玉、あとは神奈川ぐらいが一つの営業エリアで、もちろん地域でナンバー1、最後は12の保険会社の代理店になっていたんです。

坂上:それでナンバー1になったってことは、もう収入的には十分豊かな状況にそのときはなっていたのに辞められたんですね?

砂原社長:ええ、年商で6億、年間手数料収入で1億3000万。もう、いろんな保険会社から講師の依頼がいっぱい来ました。新聞にも取材されてました。僕はやっぱり新しい保険を考えて売ることが結構得意だったので、メモリアルアート大野屋の社長から頼まれて、ある保険プランをやったのが日経新聞に取り上げられました。また水道工事業者を一手にまとめた第三者賠償保険を初めて作りました。こうした商品開発は大好きでした。

坂上:新たに始められた会社、ティーペックの始まりに付いてはいかがでしょうか?その会社をやろうと思った1番の理由も含めてお願いします。

砂原社長:父親を亡くして三鷹に住んでいた頃、32歳のときに、今度は母親がくも膜下出血になりました。それで府中に家を買い替えて看病生活となりました。6年の間、救急病院、総合病院、リハビリ病院、在宅ケア、あまりにも患者の立場に立ってない救急体制とか医療機関の体制を肌で経験しました。それらに強い憤りを感じていましたから、なんとかそういう医療機関とコンシューマーをつなぐ行政サービスの補完的な事業を民間でできないだろうかと考えるようになり、ついに38歳のときに、ティーペックを始めることにしました。

当初、資本金3億ぐらいの事業計画を立てました。それで保険会社にいろいろ声をかけて社長を招いて出資を募りました。創業時の社名は「東京民間救急センター株式会社」それを英語に変えてTokyo Private Emergency Centerと読みますので、頭文字をとって「T-PEC」としました。「民間救急」とは行政の医療制度や救急サービスを民間が補完するもので、資本金4000万円で始まった会社は、たった1カ月で8000万増資することができ、1億2000万の資本金になりました。また、「ハロー健康相談24」は、24時間の電話相談ですから、資格あるドクターも24時間常勤体制でした。ですから会社の業績は当時の状況とも相まってうなぎ上りでした。

坂上:経営理念を作ったきっかけは何だったんですか?

砂原社長:創業10年ぐらいで18億円ぐらいまで売上が伸びたんですが。しかし第11期から第15期までの5年間は18億円の売上のまま成長しなくなってしまいました。それまでは保険会社の経理の専門家が社長として就任し、僕は副社長で営業や商品開発をやっていましたが、平成16年に僕が社長になってバトンタッチしたら、創業からの延びが停滞してしまったんです。

その業績が停滞したときに、それ以上の目標を持ってないってことに気づいたんです。それがで経営理念の大切さに目ざめたきっかけでした。そこから、ティーペックはどこを目指しているんだ。何を目指しているんだ。何をやるための会社なのかっていうことを自分で整理し、自分自身も含めて社員全員の目標を再構築しました。おかげで社長に就任して1年間は大変な勉強の機会となりました。現在の経営理念はその成果です。

坂上:『「誠の幸福とは、心身ともに健康な生涯を送ることにある。」と考え、その生涯づくりに貢献いたします。』この理念の方向性とは具体的に何ですか?

砂原社長:「心身」というのは身体の相談、心の相談ですので、まずティーペックはこれを目指すんだと。それは、多くの人をその24時間の健康相談、またそれに派生するいろいろなサービスでしあわせになってもらうっていうことです。それで僕自身も何のためにこの会社をやっているんだっていうことも整理できました。全社員がはじめてこの経営理念をもって、ティーペックは、経営理念を理想としてそれに到達するという目標をもった会社であり、経営理念はティーペックそのものであり、理念をその営業活動にしっかり反映すべきことを悟ったんです。そしてその理念に向かって全員の考えと心、そして目標を一つにできたんです。

坂上:会社の創業時は経営理念そのものは作っていなかったんですか?

砂原社長:はい。あくまで母の件がありましたのでそれどころではなかったのかもしれません。民間救急というものはこれから必ず必要になる。今後の日本は、21世紀の人類史上経験したことのない超高齢化社会、少子高齢社会が来るから医療制度も当然変わるし、新たに介護の問題が出てくることはティーペックをつくるときすでにわかっていました。それで民間救急というのを日本で初めてやろうというのが創業の時の強い思いだったんですね。そうしたビジネスモデルに夢中でしたから本物の経営理念というものには無頓着だったかもしれませんね。

坂上:先ほど何のために会社を経営するんだろうと1年ぐらい考え悩んだということでしたが、経営理念は具体的にどうやって作られたんですか?

砂原社長:そのとき私は信念の下に経営理念を立て、それを中心に四つのスタイルを立てて、それで中期計画を立ててみたんです。これは独断で自分が情報収集し、この経営理念、四つのスタイルでいくと決めたものです。

坂上:理念と計画を立てられたということですね。ここで、このスタイルをご紹介します。まず、スタイル1、「公平な評価のティーペック」。スタイル2、「風通しのよいティーペック」。スタイル3、「前向きで建設的なティーペック」。スタイル4、「社員は宝だティーペック」とあります。そして、それぞれのスタイルの属性の下に項目が設けられていますね。例えばスタイル1の「公平な評価のティーペック」の下に4つ、人事考課制度、目標管理制度、退職金制度、各種データと、それぞれブレイクダウンしたものを作られたということですね。これを全部その1年ぐらいかけて全部ご自身で作られたんですか?

砂原社長:そうですね。この経営理念と4つのスタイルで中期経営5年計画を立てて、以降10期連続増収増益なんです。今まで動かなかったものが、動き始めたんです。今は専門家を入れて目標再構築のブランディングに取り組みつつ創業50周年に向けたことを考えています。

坂上:よく『論語とソロバン』と言うんですが、理念の論語の領域と、ソロバンの領域は社長にとって比率はどれぐらいなんですか?

砂原社長:5:5ですね。理念と実際の経営戦略、公的な欲求と私的な欲求、建前と本音、営利と非営利などバランスが必要ということでしょうか。企業も実際は営利活動なんですけど、やはり理念というのはすごく重要で、それは公的な欲求です。だから、金もうけだけという主義だったら経営は長く続かないということですね。

坂上:経営理念と業績の関係は?

砂原社長:一言で言えば「経営理念がない企業は成長することはない」と思います。正しい経営理念は正しい目標に企業とその経営者を導きます。あとは実務的な努力をすれば目標は達成されることになります。

坂上:なるほど。ではここで5W2Hで整理させていただきます。[いつ]作ったのかというと、第1ステージの経営理念に似たものが、すでに創業の時に思いの中にあったということ。10年後、売上18億になり5年間延びなかったので、15年経ってから次のステージの経営理念を作ったということですね。それは商品開発とか年間予算を立てることなど実務的なことはしましたが、第1ステージの経営理念はそのままであったため、横ばい現象に至った反省からでした。

[どこで]作ったのかっていうのは、外部ではなくご自身で作られた。[誰が]作ったのかも、100%ご自身でした。[何]を入れたのかというと、最初は民間の救急という考え方があり、それが第1ステージの経営理念で、15年後に新たに『「誠の幸福とは、心身ともに健康な生涯を送ることにある。」と考え、その生涯づくりに貢献いたします。』を経営理念に掲げられた。[どう]作ったのかを時間ややり方で考えると、最初の第1ステージは必然的に思いがあったので作ったのに対して、第2ステージは時間をかけて外部の経営者にも話を聞いて自分で作られた。[いくらで]は外部などに依頼せず、全部ご自分で作られたので0円。こんな感じでしょうか?

砂原社長:はい、おっしゃるとおりですね。

坂上:次に、経営理念を浸透させるための工夫や努力なんですが、浸透のための取り組みには何がありますか?

砂原社長:経営理念は全て社員が見えるところに書いて貼りだして銘記するよう促しています。また、月1回全体朝礼や部門の朝礼の時を用いて経営理念について言及して浸透を図っています。会社の経営理念は社員みんなが大好きで気に入っています。ティーペックが目指しているところがすごく理解できるし、共感できるっていうのが社員の素直な感想としてフィードバックされている。一つになれる共通の目標がみんなで共有できたっていうところが強いのでしょうね。

坂上:理念を浸透させる工夫として具体的に何をされているのでしょうか?

砂原社長:カードを全員に持たせているんです。「ティーペックスタンダード」カードですね。そこには経営理念から始まって、4つのスタイルが載せられています。クレド、常に携帯してもっているカードですね。

坂上:それは全員が持ってらっしゃるのですね。では、新入社員や中途採用の社員が入ってくると、何か特別に勉強会をされるんですか?

砂原社長:オリエンテーションではっきり経営理念や4つのスタイルをカードを使用して説明します。その際このクレドの使用法が提案されます。全部門月例で開催する部門会議の最後に、このクレドを使用して、毎月今月のテーマを決めています。テーマを決めて月に1つずつ、例えば1月は「私は感謝の言葉、ありがとうを惜しみません。」と決まれば今月はこの言葉、全社員がこの言葉に重点をおいて行動するんですよ。それで、社内イントラには今月のこの言葉が載せられており、会議のときにもこの言葉についての意見を必ず言ってもらいます。

坂上:個人の価値観と経営理念の関係は?

砂原社長:個人の価値観と会社の価値観、つまり経営理念とのずれを正すことは、人数が増えるとともに難しくなってくるんで、経営理念や4つのスタイル、中期経営計画や年次計画を立てて、どこを目指しているかをはっきりさせる努力をしています。

ティーペックは9月が新年度なんですが、例年9月の第1金曜日には社内の3本部合同で丸一日をかけ、管理本部長、営業本部長、サービス業務本部長が中心となり、各本部の1年間の計画と基本方針、全体の中期経営計画についてなどの発表会をやっています。個人の価値観と会社の価値観のずれは、どうしても最終的な壁になると思いますし、会社の成長は、人の成長でもあります。会社全体としての離職率は他社に比べると比較的に低いんです。しかし営業現場では数字的目標も大切です。結局は価値観を共有できる社員だけが次のステージに残るんだろうなと感じています。

坂上:経営理念の満足度、浸透度は100点満点で何点でしょうか?

砂原社長:私たちティーペックはお客様とともにこれからも成長します。ですから、現時点の経営理念の完成度は85点です。そして浸透度は100点、100%だとの自信を持っています。

【経営理念】
ティーペックは
「誠の幸福とは心身ともに健康な生涯を送ることにある。」
と考え、その生涯づくりに貢献いたします」

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