経営の目的をハッキリさせると判断しやすくなる

経営の目的とは社員を幸せにすること、社会に貢献すること、そのために利益を出すことでした。これが経営の原理原則です。この原則から外れないように経営をすることが大切です。つまり、(1)社員を幸せにしない経営をしない、(2)社会に貢献しない経営をしない、(3)利益の出ない経営をしないと言い換えることができます。

これで、経営判断するときの基準がはっきりしてきます。ある上場企業の社長はこう言います。

「3期連続、赤字企業の社長はクビ!」
「やる資格がないよ!早く辞めたほうがいい!」
「誰にも言われないから居座っちゃうんだよ!」

厳しい言葉ですが、基準がはっきりしていますから、白黒つきます。

利益を出す目的は社員を幸せにするため

ここで、「『全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること』これ以外に企業の目的はない」という言葉を分解して考えてみましょう。

「物心両面の幸福」ということは「物と心の幸せ」です。まず、「物」の幸せがあります。これは「経済的豊かさ」と言い換えられます。つまり、(3)経済性の追求のことです。次に、「心」の幸せです。これは「この会社で働けてよかった」という満足感だと思います。それは、次のようなものです。

「この会社で成長できた」
「この会社の人たちと働けてよかった」
「給与も少しは多くもらえた」
「家が建てられた、子どもを学校に行かせられた」
「この会社を誇りに思う」

つまり、次のようなことの総和です。

「仕事を通じて仕事ができるようになった、人間的に成長したという成長感」
「いい人たちと働けた、温かい人間関係が持てたという所属感」
「家も持て豊かな生活ができたという満足感」
「子どもを学校に行かせることができたという達成感」
「会社を誇りに思える満足感」

そして、それを実現するために③経済性の追求が必要になるのです。社員の生活を守るために、給与をきちんと払い続けることができるために、会社は利益を上げ続けなければなりません。利益が出なければ社員の給与が払えないばかりか、会社自体が存続できなくなるからです。

また、利益とは会社がつくる「付加価値」です。その付加価値をつくるのは、「社員」なのです。設備投資をした機械だけが付加価値をつくるのではなく、社員が付加価値をつくります。したがって、社員は付加価値がつくれるように、「成長」し続けなればなりません。ずっと新入社員のレベルですべての仕事をしていたら、付加価値が上がらないからです。

人は仕事を通じて、成長し成長感を味わいます。仕事を通じて人と関わり、所属感を持ちます。仕事を通じて、できなかったことができるようになり達成感を味わいます。そして、仕事を通じてつくり上げた実績や、そのときに味わう喜びや感情が、その人の誇りとなるのです。このプロセスが人間性を向上させます。

つまり、経営の目的とは社員を幸せにすること、社会に貢献すること、そのために利益を出すことといえます。人間性を追求することが社会性を追求することになり、同時に経済性を追求することになる。この3つの要素を追求することが、経営をするうえで大切といえます。

経営理念の考え方・つくり方

経営の3つの目的

「経営の目的とは何なのか?」に対する答えをまとめると、こういえると思います。

(1)人間性の追求
(2)社会性の追求
(3)経済性の追求

前述のように、「『全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する』これ以外に、企業の目的はない」と稲盛和夫氏は言います。

これはつまり、(1)人間性の追求(社員の幸せの追求)と、(2)社会性の追求(社会への貢献)といえます。そして、この2つの目的を達成するために必要な手段として、(3)経済性の追求が必要になるのだと思います。

これをもう少しシンプルにいうと、経営の目的とは「社員を幸せにすること」と「社会に役立つこと」なのです。つまり、経営の一番の目的は「社員を幸せにすること」といえます。社員を幸せにすること以外に、経営の目的はないのです。逆の言い方をすると、「会社とは、社員を幸せにするための手段である」と言い換えることができます。また、社員を幸せにすることが経営の目的であれば、社員が幸せでないなら、会社をやめるべきということです。なぜなら、会社の本来の目的から外れているからです。

経営の一番の目的である「社員を幸せにすること」は「社会に役立つこと」で成り立ちます。経営を通じて社会に役立つことで、感謝され、お金がもらえます。そのことによって社員は幸せを感じられるのです。

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あなたは「お金のため」に仕事をしているのか?

「何のために経営をしているのか?」と聞かれると、いくつか答えが分かれます。

(1)よくわからない
(2)お金のため
(3)この仕事がやりたいから
(4)社会貢献(利他)

このようなものがあります。もちろん、回答が重複していることもあるでしょう。

一般的に、一番多い答えは(2)お金のためです。お金を稼ぐために経営をするというと何か汚いことをしているように聞こえるところがありますが、決してすべて悪いわけではないと思います。人はやはりお金を稼ぎたい、いい暮らしをしたいという欲望があります。その欲望が原動力となって大きな仕事ができることも確かです。しかし、お金のためだけに経営をしているのか?と聞かれると、「そうでもない」のではないでしょうか。

人の心には誰でも良心があり、お金のためだけに経営をしていると言いきると、どこか後ろめたい感じがするものです。とくに日本人はそうだと思います。

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「利他」とは何か?

経営理念を考えるうえで、この「利他」というキーワードは大切です。自分だけよければいいという「利己」ではなく、人のために役立つという「利他」です。「『利他』の心とは、仏教でいう『他に善かれかし』という慈悲の心、キリスト教でいう愛のことです。もっとシンプルに表現するなら『世のため、人のために尽くす』ということ。人生を歩んでいくうえで、また私のような企業人であれば会社を経営していくうえで欠かすことのできないキーワードであると私は思っています」(稲盛和夫/『生き方』サンマーク出版より)

人に良かれと思い、「貢献」する、「利他」をすると、人に喜ばれ、感謝され、自らがうれしい。与えたのに与えられている状態です。人に良くしたことが自分にとってもいい状態。体が喜べば心も喜ぶという「心身相即」のような状態。コインの裏表のような一体化したものです。

「生き馬の目を抜くような競争社会において、『利他』などという甘いことを言っていられるか!」と思われるかもしれません。たしかにそのとおりなのです。私も「やられた」「損をした」と思ったことが何度もあります。しかし、それでも「利他」の気持ちを持っていきたいと思っています。人と人が行なう仕事の中で、自分だけ良ければいいという考え方ばかりでは、長く気持ちのいい付き合いをしていきたいと思うからです。

「人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして、己を尽くし人を咎めず、我が誠の足らざるを尋(たず)ぬべし」(西郷隆盛)という言葉があるように、目の前の人との駆け引きばかりに目を向けず、天を相手にして人に良かれという利他の気持ちを持っていたいと思うのです。

私の孫が誰かに会ったとき、「君のおじいさんには本当にお世話になった。感謝している」と言ってもらえる人生でありたいのです。「おまえのじいさんには、ひどい目にあわされた」と言われる人生でありたくないのです。この二つの人生は雲泥の差です。利他の思いや行動はその瞬間には答えが出ないかもしれません。しかし、ある時間が経てばわかることもあります。また、もし、人にわかってもらえなくても天が見ていると思いたいのです。

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経営の目的を考える

経営者の心が変わる、社員のモチベーションが変わる

経営の目的を考えると、2つの側面から大きな変化があるといえます。
(1)経営者の心が変わる
(2)社員のモチベーションが変わる

経営者の心が変わるとは、経営者の心が「利己」から「利他」へ変わるということです。自分だけよければいいという「利己」の経営から、人のためによかれという「利他」の経営になるのです。

具体的には、経営の目的が「自分の技術を世に問うため」だと、あくまでも自分中心の考え方の「利己」です。自分のモチベーションは高く、いい製品がたくさんできたかもしれません。しかし、社員にしてみると「社長の財産を増やすために自分は働かされている」となり、モチベーションは上がりません。この点が経営者と社員の決して埋まることのない溝となるのです。社長の方なら必ず経験したことがある思いではないでしょうか。

しかし、経営の目的を「全従業員の物心両面の幸福を追求する」にすると、全員の幸せのためという「利他」になります。言葉にすると「利己」と「利他」という簡単な言葉の違いですが、現実は180度、まったく違ってきます。

自分の財産を増やすために「働け!」といっても、言うほうに迫力がないのです。「利己」だからです。自分のためという「利己」だと、どこか後ろめたさが残るのです。社員の方でも、表面上は「はい!」といっても心の中では「また、社長が怒鳴ってら」としか思っていません。人がついてこないのです。社員は面従腹背です。

一方、「みなが幸せになるために頑張って働こう!」となると、言うほうの迫力が違います。「みなががんばっているのに、なぜ君だけ働かない!」と言えるのです。もちろん、社長自身もがんばっていないとダメです。夜遊びばかりではいけません。「私もがんばっているのだから、君もがんばってくれ!」と強く言えるのは「利己」ではなく「利他」という思い、根本の「目的」があるからなのです。

つまり、経営の目的を自分だけよければいいという「利己」から、人のためにという「利他」に変えることで、社長の考え方を変えざるをえないのです。しかし、そのことによって社長に強さが出ます。社長の話に説得力が出るのです。そして、そのためには社長自身が「自分だけのため」という考え方を捨てて、「社員のため」という思いを持つことが大切です。ある意味、自分自身の我を捨てる「無私」の境地です。「自分自身の身を経営に捧げる、社員のために捧げる」という決意が必要になってきます。このことが、経営者にとって非常にむずかしいことなのです。

そしてこの考え、経営理念ができ上がったことで、社員のモチベーションが大きく上がります。社長の財産を増やすために仕事をしていると思って働くのと、みんなのために良い会社にしようと思って働くのとでは、働き方がまったく違ってきます。生産性が何割も違ってくると容易に想像できます。

これが、経営理念が会社の業績に大きな影響を与える理由の一つです。経営理念とは人の心を動かす大きな力を持っています。そして、こういったことによって会社が急成長を遂げてゆくのです。経営理念を変えれば、会社は大きく変わります。そして、経営の目的を変えるということが、最も大きく経営を変える第一歩となります。

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経営の目的を変える勇気

稲盛氏は創業3年目に、入社間もない社員による、給与やボーナスを保証してくれという反乱事件に出会います。「つくったばかりの会社でそんなことが約束できるはずがない」という稲盛氏と社員たちは三日三晩話し合ったといいます。

会社経営をすれば、自分の家族への仕送りもままならないというのに、赤の他人の面倒を一生涯保証しなければならなくなるという現実に経営者として直面したのです。「なんとバカらしい、こんなことなら会社をつくらなければよかった」と思ったそうです。なぜなら、京セラの創業の目的は「稲盛和夫の技術を世に問うため」だからでした。

自分の技術を世に問うなら、サラリーマンをしてもできたわけです。しかし、会社をつくったがゆえに、社員の生活を守らなければならなくなったのです。そこで自分の技術者としての理想を捨て、「考えを変えて」、経営の目的を「全従業員の物心両面の幸福を追求する」とし、公器としての責任を果たすために「人類、社会の進歩発展に貢献すること」を加えたといいます。

ここに稲盛氏の"悟り"を感じるのです。「経営の目的を変える勇気」を感じるのです。自分自身の考え方、経営理念が一段上に昇華されることで会社が大きく育つ土壌ができた瞬間なのかもしれません。

経営の目的を考えることは大切です。なぜなら、それによって会社のあり方が大きく違ってくるからです。経営の目的を「自分の技術を世に問うために」から、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」に変えた瞬間に、大きな変化が現われたといえます。

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企業は社会の公器である

「企業は社会の公器である」と、松下幸之助氏もドラッカーも述べています。つまり、企業とは社長の私物ではなく、公の器(うつわ)であるということです。企業は社会に存在させてもらっているものである。

企業は単独で存在するものではない。顧客、に取引先、に地域があってはじめて存在が可能なのです。企業の集合体が社会をつくり上げると考えれば、企業は社会の一部であり、公器といえます。したがって、自社の利益だけを追求するのではなく、社会に対しても貢献する責任が出てきます。

昔、「経営理念が大切だ!」と説くある経営者が、「私は取引をするときに絶対に損をしないようにしている」と話したときにちょっとがっかりしました。なぜなら、私がその経営者とつき合うと必ず「私が損をする」ことになるからです。そして、若くて未熟だった私はたしかにそうなりました。

表面上はきれいなことを言っている経営者が、実際につき合ってみると、えげつない人だったということがあります。しかし、「企業は社会の公器である」ということを考えれば、自分だけよければいいという考え方を抑える必要もあります。

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会社は手段である

会社とは(1)社員を幸せにし、(2)社会に貢献するための手段なのです。

会社とは社長の理念=考えを実現するための手段です。経営理念を実現するための手段として会社があり、その会社を継続するための手段として利益が必要になるのです。会社を経営する目的は(1)社員を幸せにし、(2)社会に貢献することです。そのための手段として利益が必要になります。

また、経営理念の実現のために会社という手段が必要なのです。この関係をしっかり押さえておくことが重要です。

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