経営理念をつくってみよう 経営理念(例)

経営理念のポイントにあわせて、いちど経営理念をマネしてつくってみよう
「言葉」は自社に合わせて決める

ここまで、経営理念の言葉の理解をし、自分自身を振り返り、自分自身を理解してきました。ここから、具体的に経営理念をつくるステージに入りたいと思います。参考までに、ここで一つの形をご紹介します。あくまでも参考ですのでご自分の会社の内容や状態に合わせて変化させていってください。

経営理念(例)【○○社経営理念】
全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する。

(1)人間性の追求=仕事を通じて人格を向上させ、己を磨く
(2)社会性の追求=人を幸せにする、人の役に立ち、喜ばれ、感謝されること
(3)経済性の追求=公明正大に利益を追求する、利益は継続のための費用である

■三大主義
(1)お客様第一主義=お客様の要望に合わせ自社を変える、常に改良改善する
(2)自立主義=自分の人生の責任を自分でとる、他責しない、全員参加で経営する
(3)重点主義=重要なものに時間と労力を集中する、強みを伸ばす、やらない勇気

■信条
・世界の人々のために最高水準の医療を提供すること
・地域の人々のために食のライフラインを提供すること
・人間の心を大切にした、明るく活気のある会社を創りたい

・お客様、取引先との強く、長い信頼関係を保てる会社でありたい
・質素倹約して社員の生活を守り続ける会社でありたい
・人として正しいことをする人間の集まりでありたい

・努力することを貴ぶ会社でありたい
・本業に特化し、浮利を追わない経営をする

・どんな小さなところでもいいから、いつでもNo.1を目指すしたい
・業界最先端の技術を追求し続けたい

■社是
自立・成長・貢献

経営理念をつくるヒント もし、すべて自分で決めてきていたとしたら?

いまの人生をもし、「すべて、自分が決めて生まれてきた」と考えたらどうでしょうか?突然そう言われても、考えることは少しむずかしいかと思います。しかし、いったん想像するだけでもいいのでそう考えてみましょう。「いまの人生は、すべて、自分が決めて生まれてきた」実はこう考えることで、人生のすべてが自分の責任となるのです。多くの人は出来事を他人のせいにします。

自責ではなく他責です。他人に責任があると考えるのです。「郵便ポストが赤いのも、電信柱が高いのも、すべて社長の責任」この言葉は、経営コンサルタント一倉定氏の言葉です。初めて聞いたときに意味がわかりませんでした。

「郵便ポストが赤いのは社長の責任じゃあないでしょう......」と思ったものです。直接お会いして話を聞いたわけではないので、これが絶対一倉氏の本意だとはいえませんが、つまりは、「他責するな」「人のせいにするな」ということではないでしょうか?「起ったことをすべて自分の責任ととらえよ」「会社の経営の最終責任者は社長である、逃げるな」というメッセージなのかと思います。

社長は経営をするうえで、すべての結果に対して責任があります。一切の言い訳ができません。その責任感に対する覚悟を求めた言葉が、この「郵便ポストが赤いのも、電信柱が高いのも、すべて社長の責任」というものです。この考え方は、社長だけではなく誰の人生にも当てはまることなのだと思います。「自分と未来は変えられるが、他人と過去は変えられない」という言葉があります。

自分が自分の両親を選んで生まれてきたことをいったん、自分が選んだと思ってみる。そして、その後、いまの仕事に就くことになったこと、今日現在、社長であること、などはすべて自分で選んだわけです。「~だったから仕方なく」などと言い訳をしないことです。

2代目経営者であれば、自分が採用したわけでもない社員がいて、やりたくもない業種のやりたくもない仕事をしているのかもしれません。しかし、プラスもマイナスも含めていまの会社の社長になったということを受け入れてみる、いまの状態の責任はすべて私にあると思ってみることです。もちろん、思えと言われてもむずかしいことはわかっていますしかし、そう思ってみることで新しい視点ができると思うのです。

現状をいったん受け入れるところに未来ができる。経営理念とは、過去を思い浮かべるだけのものではありません。「これからこの会社をどうしてゆきたいのか」のほうが何倍も重要です。「世間は道場である、人間錬成の道場である」と思い、いまこの状況にある会社をどうやってゆけばよくなるのか?このことを考えることが経営理念をつくることでもあるのです。

戦略、戦術だけを考えるのではなく、その根本となる経営理念、経営の原理原則を深く考えることが大切なのです。

経営理念をつくるヒント 人には役割がある

世に生を得るは事を成すにあり。(坂本竜馬)

人間には生まれながらにしてその人固有の「役割」がある。自分の命は何かを成し遂げるために使われるべきである。それが「使命」である。食べるため、お金を稼ぐためだけに命があるのではない。この言葉にはこういった価値観が表われているのかと思います。

「自分の人生は自分の人生なのだから、好きに生きたらいい、別に誰にも文句を言われる筋合いはない」という人もいると思います。そのとおりです。ですが、もう少し、長い時間、広い視野で見ると、自分個人とは小さな存在ではあるが、何か役割があるのではないかと考えることも可能です。

100年以上続く老舗のある経営者は、「私にはこの長く続いている会社(老舗)を後に続ける「役割」がある」と話してくれました。「たすき」を渡すように、「次の世代にこの老舗をつなぐ責任がある、つぶしてはいけない」というのです。また、老舗に養子で入ることは「誇り」であると話してくれました。自分の好きな人生だけを歩くのではなく、歴史ある老舗の「たすき」をつなげることに「誇り」を感じ、親に「しっかりやってこい!」と送り出されたそうです。

やりたいことをやる人生もありますが、人から必要とされる人生もあるのだと思います。「役割」という考え方があれば、人から必要とされる人生に誇りや意義を感じることができるのだと思います。野球にも攻撃の役割や守備の役割があるように、映画や舞台でそれぞれの俳優に役割があるように、それぞれの人生に役割があるのでしょう。そして、自分の人生においては、自分が主人公となるのです。

経営理念をつくるヒント なぜ、私は社長なのか?と自問してみる

【質問】なぜ、あなたは社長なのでしょう?

社長であるあなたにお聞きしたい質問です。多くの社長が思っていることの一つに「なぜ、自分が社長になったのだろう?」というものがあります。「別に、自分が社長にならなくてもよかったのに......」「自分が社長になった理由がわからない」というものです。

もちろん、父親が社長で子どもの頃から「将来は社長になる!」と決めていた人も多いのです。しかし、私は次男だし跡を継ぐ気もなかったという人が、親が倒れて仕方なく戻ってきたケースや、結婚した奥さんの実家が会社をやっていたというケースもあります。そういった場合は、なにもあなたでなくてもよかったわけです。「たまたま、そうなった」といったほうがいいようなことがあります。

「では、いったいなぜ、自分がなったのか?」と考えると、理路整然とした答えが見つからないのです。すると、そこはもう「そういう役割だった」としか言いようがない気もします。実はこういった偶然の産物のような出来事が世の中にはたくさんあるのです。 たまたま経営者になった、たまたま野球選手になった、たまたま芸術家になった、たまたま能楽師の家に生まれて能楽師になった、という人もいます。小さい頃から野球選手になりたかったと、ノートに書いていた人は、珍しいからテレビで紹介されるのであって、実は少数派なのです。

100人いれば90人以上の子どもは「将来どうなりたい?」と聞かれても、「ん~、よくわからない......」というのが現状ではないでしょうか?しかし、人はみな、何かに導かれるようにして何かの道に進みます。そして、生きてゆき、仕事をしてゆくのです。その中で、たまたま経営者に選ばれたのがあなただったということかもしれません。

世界には人口の数と同じ72億個のジグソーパズルがあり、その一つひとつには役割があって、どこかに当てはまるようにできている、と考えることもできます。その一つ、「経営者」と書かれたパズルがあなただったということです。

経営理念を考えるヒント 自分の役割を知る

あなたには、あなたにしかできない、あなただけの役割があるはず

つらいときに支えとなるものが経営理念経営理念を深く、深く考えていくと、『経営の目的は何か?』『仕事とは何か?』『人生の目的は何か?』といった事柄に思いが至ります。「私たち人間が生きている意味、人生の目的はどこにあるのでしょうか。もっとも根源的ともいえるその問いかけに、私はやはり真正面から、それは心を高めること、魂を磨くことにあると答えたいのです。

ですから、「この世へ何をしにきたのか」と問われたら、私は迷いもてらいもなく、生まれたときより少しでもましな人間になる、すなわちわずかなりとも美しく崇高な魂をもって死んでいくためだと答えます」
(稲盛和夫/『生き方』サンマーク出版)

「世間は道場である、人間錬成の道場である。私はそう思います」
(松下幸之助/『社長稼業』PHPビジネス新書)

「こんなに苦しい思いをしてまで、なぜ経営をしているのだろう?」
「なぜ、わたしだけがこんな目にあわなければいけないんだろう?」

そう思いたくなるような大変な出来事に出合ったときに、自分自身を支えるものが経営理念となります。経営をすればいいこともあれば、悪いこともあります。

とくに企業規模が大きくなればなるほど、いろいろなことが起こります。人が増えれば問題がある社員がいたり、不正が起こったり、裏切りがあったりもします。事故があったり、病気があったり、工場が火事になったりすることもあります。こんな不条理なことがあっていいものかと思えるような様々な 負の事象が起こったときに人生に対する確固たる信念があると、その出来事を乗り越えることができるのです 。

「経営理念」とは「遺言」か?

【質問】あなたはいま、何歳でしょうか?

20代ならまだ独身かもしれません。
30代なら結婚をして子どもができた頃でしょうか?
40代なら子どもが小学生か中学生くらいでしょうか?

50代なら子どもはもう大学生かも知れません。
60代なら子どもは社会人になり、結婚しているかもしれません。
70代ならもう孫がいるかもしれません。

たとえば、あなたがいま、43歳で10歳の子どもがいるなら、10年後にはあなたは53歳になり、子どもは20歳になります。当たり前のことですが、43歳の時には想像がつきづらいのです。同じように50歳のあなたは、10年後に60歳となり、いわゆる還暦を迎えます。でも、たぶん、まったくそんなことを考えていないのではないかと思います。

つまり、人は未来に対して思いがいきづらいのです。なかなか想像ができない。しかし、「経営理念」とは会社の未来のことを考えることになるのです。仮にあなたが、半年後に「死ぬ」ことになったとしたら、あなたはどんな「遺言」を残すのでしょうか?

個人の「遺言」を奥さんや子どもに残すこともありますが、社長として会社に残す「遺言」が「経営理念」ともいえます。仮に自分の体がこの世から亡くなったとしても、「経営理念」という思想、信念は残ります。お金を残すとか、名誉を残すといったことよりも、経営者であれば「経営理念」を残すことのほうが価値があると考えることもできます。

肉体を持ち、現世に生きているわれわれはどうしても、名利の欲にとらわれがちです。お金が欲しい、名誉が欲しい、いい家やいい車、おいしい食べ物、そして地位や役職や表彰状やトロフィーが欲しくなります。それは事業を拡大するエネルギーでもありますから、大切なものだと思います。しかし、多くの人がそればかりを追いかけ、思想や信念、つまり「経営理念」というものを後回しにしてしまいます。

その考え方を一度、スパッと断ち切り、いったん、半年後に「死ぬ」ことが決まったとして、「遺言」を会社に残すような気持ちで「経営理念」をつくってみれば、「経営理念」にあなたの「魂」が入ります。いま、われわれの会社はこういう状況だけれども、「私は会社をこうしたい」「皆さんにこうあってほしい」「こんな会社でありたい」「こういうことを大切にしてほしい」という心の底からの思いの集積が本物の「経営理念」となるのです。

「そうはいえ、毎日が忙しくて......」というのが現状かと思います。たしかに、半年後に必ず死ぬわけではないので緊迫感はそれほどないのかもしれません。しかし、「一寸先は闇」ですので、いつ何があるかわかりません。これを機に、自分の人生を振り返り、家族に対してそして会社の未来に対してあなたの「思い」をまとめてみるのはいかがでしょうか?

「いつ死んでもいい人生」、後悔しない人生であるためには、「経営理念」という「遺言」をつくりあげておくという考え方もあると思います。また、「経営理念」という「遺言」をつくるプロセスが、あなたの人生をより深く、より密度の高いものにするきっかけになるのではないでしょうか?

経営理念つくるヒント 時間とお金と人

自分が影響を受けたことを知るには、(1)時間、(2)お金、(3)人という切り口で見てみることができます。

(1)時間自分の人生とは時間の集積ですから、自分が何に時間を使ってきたかを確認してみると、自分の興味関心がわかります。例えば、読書してきた本。

どんなジャンルの本が好きだったか、どんな本をたくさん買ってきたか、図書館や本屋に行ったときにどんな本を手にする傾向があるか、といったことを自分で確認してみます。自分の家の本棚にある本を見るだけでもわかると思います。歴史の本が多い、金融、経済の本が多い、経営の本、セールスの本が多い、などです。

また、スポーツをしてきた時間が多いのか、音楽や室内での時間が多いのか。さらに、一人でやることが多いのか、大人数でやることが多いのか。外で複数の人でやる野球やサッカーに多くの時間を使い、そこから人との関係を学んできたという人もいるでしょう。一方、ピアノや書道のように室内で一人でやる芸術的なことから多くを学んだという人もいるかもしれません。

やってきたことは人それぞれですが、自分がたくさんの時間を使ったものから、何かを学んできたはずです。その過程で、自分の価値観がつくられてきたと思って振り返ってみてください。

(2)お金過去において、自分が一番多くのお金を使ってきたものは何でしょう?そして、それはいくらくらいでしょうか?

使ったお金は時間を使ってきたものと比例していると思います。野球が好きで道具を買い、遠征に行き、試合をたくさん観戦してきたのなら、野球に使ったお金はたくさんあるはずです。ある人はそれが、ゴルフだったり、音楽だったり、人づき合いだったり、お酒だったり、女性だったりします。そして、使われたお金もさまざまでしょう。

このあたり、人生いろいろ、男もいろいろ、女もいろいろですので、どれがいいどれが悪いというわけではありません。まさに、人それぞれの価値観があり、人生があり、お金の使い方があるわけです。虚栄心でものを買う傾向がある人もいます。ちょっと気にいると衝動的に大きな金額の買い物をしてしまう傾向がある人もいます。自己投資をするのが好きな人もいます。ケチケチしてお金をあまり使わない人もいます。こういった自分の傾向と無意識にしている判断基準を振り返っておくことです。

それは、社長という個人のお金の使い方の範囲ならば、まだかわいいものですが、会社のお金となると数億~数十億、数百億円となるので価値観、つまりフィロソフィが必要になってくるのです。自分のお金の使い方を知ることは、経営をするうえでとても大切な要素です。

(3)人自分が尊敬する人はどんな人でしょうか?いままで、「この人にならついていきたい!」と思った人はどんな人でしょうか?その人のどこが良かったのでしょうか?いままでで、一番嫌いな人はどんな人でしょうか?その人のどこがイヤだったのでしょうか?

ここにもあなたの判断基準が出てきます。しかし、聞かれなければ思いもしないことです。どうしてそう思ったのだろうと、一度、冷静に振り返ってみることが大切なのです。尊敬する人、あこがれる人が持っている資質は、あなたがそうありたいと思うものです。嫌いな人が持っている資質は、あなたがそうありたくないと思うものです。

たとえば、尊敬できる人に対して、「あの人は裏表がない、信頼できる」と思うのならば、「裏表なく、信頼できる人になろう」が経営理念の中に出てくる項目かもしれません。また、あなたが嫌いな人を「人に対して思いやりがない」と思ったならば、「思いやりがある経営をしよう」が経営の信条に出てくるかもしれません。

このように、経営理念は何か遠いところにあるものではなく、自分自身の体験や日常の中にあることをベースにつくり上げることをおすすめします。ただのきれいごとを並べるのではなく、実体験から感じたもの、こころの底からそう思えたもののほうがより自分のものになります。

そしてそういった言葉のほうが、話すときに嘘がなく、よどみがありません。また、その言葉には人を説得する力があります。人間には不思議な力があるようで、「どこか他人事だな」という言葉と、「どこか力がある、本気だな」という言葉の違いを感じることができるようです。

「甘く、軽く、浅い」経営をする人は、言葉にもどこか「甘く、軽く、浅い」香りがするものです。それはその人の生き様から出てくるものだと思います。そして、自らの生き様を反映する言葉を見つけるには自分の人生をしっかりと振り返り、深く見つめ直す時間が必要になります。そのプロセスこそが、経営理念をつくり上げるプロセスとなるのです。

経営理念をつくるヒント 影響を受けたことを知る

自分の生まれ育ちを振り返った後は、生まれてから影響を受けたことを振り返ります。自分の生まれ育ちとは、年齢でいうと0歳から6歳、つまり小学校に入る前くらいまでのイメージです。生活は家族を中心としていますので、自分の世界とは家族と半径100m程度の狭い世界です。

しかし、小学校に入ると世界が一変します。いままで見たことがない人たちに出会い、渡ったことがない道を渡り、行ったことがない場所へ行く。小学校は町内の集まり、中学は市の集まり、高校は県の集まり、大学は日本の集まりというように世界が広がり、影響を受ける人やことがたくさん出てきます。あなたにも、自分の世界が一変した事柄や、「この人はなんとスゴイのだろう!」と驚いた人などがいたはずです。その経験があなたの、「価値観」をつくったはずです。

社会人になって初めての上司が人格者でいろいろと面倒を見てもらったことが、いまでは自分より若い世代の人の面倒を見ることが恩返しだと思える人もいるでしょう。逆に、イヤな上司に出会ったことで、そうなるまいと誓った人もいれば、やり返してやると思っている人もいるかもしれません。

人生にはプラスなこともあれば、マイナスのこともあります。自分の(1)人生観、(2)社会観、(3)経済観に影響を与えた人や出来事を整理してみることをおすすめします。社会に出てからこんな人に恩になった、こんな人にイヤな目にあったということや、経済的にこんなに大変なことがあった、こういったいい仕事ができたなど、具体的にまとめてみることも面白いものです。

経営理念を考えるヒント 家系図と人柄

誰にでも両親がいます。もちろんあなたにも。そして、両親には両親がいて、その両親にはまた両親がいる。これも当たり前のことですが、もう一度確認しておきたいことなのです。そうやって、両親を遡って行くと祖先というものを考えることになります。

10代遡ると1024人の祖先となります。20代遡ると104万8576人、30代遡ると10億7374万1824人、40代遡ると1兆995億1162万7776人となります。これは、数字だけで書くとよくわからないので図表をつくってみてください。

10代遡るとは、10の10乗になります。自分に親が2人いて、その2人の親にまた2人ずついる、その4人の人にまた2人ずつ親がいると、2を10回かけることになるので、2の10乗です。同じようにして、20代遡るとは、2の20乗になります。さらに、30代遡るとは、2の30乗、40代遡るとは、2の40乗です。

したがって、10代で千、20代で百万、30代で十億、40代で1兆人の先祖がいるということになります。1代で20年として、40代×20年で800年前の1200年、つまり鎌倉時代に1兆人の人口はないので、そのあたりまでいくと日本人はみな兄弟なのかと考えざるをえません。

でも、ここではいったん、3代前まで遡ってみましょう。経営者であるあなたにやってほしいのは、両親(2人)と両親の祖父母(4人)の合計6人の性格を書き出してみることです。6人の強み、弱み、その特徴を3つずつでも書き出してみてください。あなたは誰かに似ているはずです。

生物学的にはそれぞれの血を引き継ぎ、DNAを引き継いでいるはずです(何か、途中で問題が起こっていなければ......ですが)。また、わたしは「桂馬とび」といっているのですが、おじいさんに似ていなくても、おじいさんのお兄さんにとても似ている場合があります。隔世遺伝にちょっと似た感じですが、可能性としてはそういうこともあります。顔が似ている、体つきが似ている、眉が似ているなど身体的なこともあれば、短気なところが似ている、憶病なところが似ている、お金にだらしないところが似ている、など性格的なこともあるでしょう。

家系図をつくることが目的ではないので、あまり詳しく調べなくてもいいのかもしれませんが、とにかく、自分の「出生」「氏素性」「ルーツ」といったものを一度整理しておくことは自分を知るためには必要な項目の一つといえます。

経営理念を考えるヒント 生まれ育ちを知る

いつ、どこで生まれ、どんな親兄弟に育てられたかは世界中の全員が違っている

生まれ育ちの話自己紹介ではよく、生まれ育ちを話します。私は、1962年埼玉県熊谷市で、三人兄弟の末っ子として生まれました。父は洋服屋をしていました。祖父は山口県の出身でお寺のお坊さんの家系だったようです。母は群馬県の出身で、代々続く商人の家の長女として生まれました。

ここでは何がいいたいかというと、自分の生まれ育ちをもう一度見直してみて欲しいということなのです。誰にでも、もちろんあなたにも、私と同じように両親がいて生まれ育ちがあります。当たり前のことなのですが、それを一度振り返ってみると自分自身について理解することができます。経営理念をつくる当事者としての自分をよく理解しておいてほしいのです。

経営理念とは、考え方、信念です。その考え方、信念とはどこから出てくるかというと、もちろん本人の考え方なのですが、それは生まれ育ち、環境などに大きく影響されます。日本に生まれ両親が日本語で話すから、自分も日本語を話しますが、同じ人でも両親のどちらかがアメリカ人でアメリカで育てば英語を話すようになります。

【質問】あなたはいつ、どこで生まれましたか?何人兄弟の何番目ですか?両親はどんな仕事をしていましたか?両親はどんな人で、どんな家庭で育てられましたか?

ここでのポイントは、次のようになります。
(1)いつ
(2)どこ
(3)兄弟
(4)親の仕事
(5)どんな家庭

(1)いつ
高度経済成長期に20代を過ごした人と、失われた10年といわれる1990年代に20代を過ごした人とでは、経済や社会に対する見方が違ってきます。あなたは、いつ生まれ、人生に目覚める15歳から20歳の頃、世の中では何が起こっていましたか?

(2)どこ
東京、大阪、名古屋、京都、札幌、福岡、それぞれの都市で生まれた人はそこの地域の言葉や文化、食べ物、産業によって価値観、考え方が変わってきます。

大阪の人は「お笑い」や「たこやき」の中で育ち、京都の人は「おばんざい」や「世界遺産」の中で育ちます。さらに、同じ東京でも育った地域によって言葉や価値観が違います。江戸っ子と呼ばれる下町出身の人と、山の手のちょっと品がいい地域出身の人では価値観が違うでしょう。あなたはどこで生まれ、育ったのでしょう?

(3)兄弟
一人っ子なのか、二人兄弟なのか、三人兄弟なのかで考え方が変わってきます。それも三人兄弟なら何番目なのか、また男女の構成でも違ってきます。男三人兄弟の長男と、長女、次女がいる末っ子の男では同じ男でも考え方が違ってくるものです。男三人で暴れまわって育った長男であれば、男っぽい、「オレについてこい!」という考え方が、経営理念になっていくでしょう。

一方、上に二人、年齢も離れた姉妹がいる中で育ったなら、「オレについてこい!」というよりも、「これ、こんなふうにやったらどうかな・・・ん?」という調整型、合議型を重視する経営理念になるのではないでしょうか?もちろん、これがあっているとはいえませんが、少なくとも兄弟の構成が「私、弟、弟」という場合と「姉、姉、私」の場合では人に対する考え方が違ってくることは間違いないと思います。

あなたが長男なら、長男として扱われ、生きることはあなたにとって当たり前なのですが、他の人にとってはまったく当り前ではないのです。このことに気づいてほしいのです。

(4)親の仕事
父親はどんな仕事をしていたのか?は、自分の人生をつくるうえで大きな影響があると思います。商人、公務員、サラリーマンなどいくつもの選択肢がありますが、特に商売をしていたかどうかは一つの大きなポイントとなります。父が家で商売をするのを毎日見ていた、いつかは自分も商売をしようと思っていた、という経営者の話をよく聞きます。母は父を手伝って一緒に仕事をしていた、という商人の一家の例があります。

また、父はサラリーマンだったが、おじが会社をしていてよく遊びに行ったという例もあります。一方、父も母も学校の先生で小さいときは経営者になるなんて全く思ってもみなかった、という商売とあまり関係がなかったにもかかわらず社長になったという例もあります。あなたは、どんな仕事を見てきましたか?

(5)どんな家庭
お父さんが家の中では一番偉かったという家庭もあれば、お母さんがとてもしっかりして家の中を切り盛りしていたという家庭もあるでしょう。また、お父さんはいつも、いつも「三方よしの商売が大切だ」といっていたという「言葉」や「考え方」の影響もあるかもしれません。お父さんは忙しかったので、おじいちゃんとおばあちゃんに遊んでもらったという人もいるでしょう。また、両親が共働きでよく一人で遊んでいたという人もいるかもしれません。

日本では1991年には、お父さんが働きお母さんは専業主婦という世帯と、お父さんもお母さんも働く共働きの世帯がほぼ同じ数になり、その後は共働き世帯の数が多くなっています。「男女共同参画白書」(内閣府データ)による)

あなたの家庭はどんな家庭でしたか?家ではどんな「言葉」をよく話していたのでしょう?こういった事柄について自分自身を振り返ってみてほしいのです。人生は十人十色、百人百様、千差万別です。まったく同じ人生はありえません。したがって、経営理念、つまり考え方がまったく同じになるということもありえないのです。

誰でも自分だけの人生を歩んでいます。経営理念をつくるには人の経営理念を参考にするのですが、最後の最後は自分の人生を反映させるのです。だから、自分の会社の独自のものとなります。そのことを、このプロセスで感じて頂きたいと思います。なぜなら、あなたの歩く道は、世界中の誰も歩かないあなただけの道だからです。

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