経営理念を考えるヒント 両親に聞く

名前をつけるのは基本的には両親です。昔は、お坊さんにつけてもらったとか、おじいちゃんにつけてもらったというのがよくありました。「ゴッドファーザー」とは、本来はカトリックでの洗礼時の代父(名付け親)という意味だそうです。「子を持って初めてわかる親の恩」、という言葉があります。

誰でも初めての子どもはうれしくて、名前をつける本をあれもこれもとたくさん買って読み、子どもへの思いを名前に込めます。(二人、三人、四人となるとだんだん面倒くさくなったりしていい加減になるようですが・・・...)。その親の思いがこめられた自分の名前について、ご両親が生きている間に聞いておくことをおすすめします。あなたのご両親はご健在ですか?

〈両親がいきているあなたへ〉生きているとなかなか聞かないものです。勇気を出して聞いておくことです。両親が死んだらもう聞けませんからね。

〈片親が死んでしまっているあなたへ〉片親が生きているうちに早く聞いておいたほうがいいです。親が生き続ける保証はどこにもありません。

〈両親が死んでしまったあなたへ〉お墓参りをしてお墓に語りかけるという人もいますが、なかなか答えが出ません。できたら、生きている親戚の方か、兄弟、姉妹に聞いてみてください。

〈両親も兄弟、姉妹も親戚もいないというあなたへ〉きっと、あなたは友人に恵まれているのではないかと思います。そう信じています。

「自分の名前」というものは不思議なもので、自分ではつけられないのです。そして、その「自分の名前」を一生背負ってゆく。ここに自分自身の宿命や使命を感じることがあるかもしれません。ということは、経営理念つくりとは、ある種の自分探しの部分が出てくるのです。

したがって、哲学的なものや心理学的なものに対する理解が必要になってくるのです。表面的に経営理念をつくることも可能ですが、自分とは誰なのか?自分の使命は何なのか?といった人間の深い部分にまで入り込む必要性が出てくるのです。それは、「自分とはこういう人間だ」というアイデンティティを確立することともいえます。つまり、経営理念をつくるプロセスは自分自身のアイデンティティをハッキリさせることだともいえるのです

経営理念を考えるヒント  「自分の名前」の意味を知る

経営理念をつくるうえでは、社長自身を深く知る必要があります。その一番始めが名前です。

たとえば、坂上仁志の名前を見てどんな人か考えてみましょう。坂上さんか?坂下さんではない。坂上というのは、坂を上がっていくイメージ、坂の上にいるイメージ......。

仁志は「仁」と「志」。
「仁」は「愛」。
仁(じん)とは中国思想における徳の一つ。
仁愛。

とくに儒家によって強調されており、孔子がその中心に据えた倫理規定、人間関係の基本。思いやり。いつくしみ。なさけ。とくに、儒教における最高徳目で、他人と親しみ、思いやりの心をもって共生(きょうせい)を実現しようとする実践倫理......。(ウィキペディア、デジタル大辞泉より)

「仁」はにんべんに二と書くから、二人という意味、「天」という字も二に人を書く、など、国語辞典で意味を調べ、漢和辞典で漢字の意味を調べることに意味があると思います。「志」は、ある方向を目ざす気持ち。心に思い決めた目的や目標。

心の持ち方。信念。相手のためを思う気持ち。志と欲望は違うものです。志とは「利他なる願望」です。欲望は自分を中心とした一時的な欲求であり、野望というとその度合いが強く、大きくなるイメージがあります。つまり、坂上仁志とは坂を上り、仁と志をもって生きるんです。(カッコイイ!)そうるすとセルフイメージがビュンと上がります。

たしかに、ここに書いたことは一つの解釈かもしれませんが、このように自分の名前を一度、丁寧に調べてみるということは自分自身を知る大切なプロセスであり、経営理念つくりの基礎となるものだといえます。

経営理念を考えるヒント 自分の名前を知る

「自分とはいったい誰なのか?」を知るために自分の名前からもう一度考えてみる

始めに「名前」ありきあなたは自己紹介で何を言うでしょうか?一般的には、名前、生まれ育ち、出身、趣味、仕事、家族などかと思います。実はこれが大切なポイントとなるのです。

「あなたは誰か?」と問われると、人はまず、名前を名乗ります。わたしは坂上仁志(さかうえひとし)です。でも、これはただの呼び名でしかありません。

私は海外に行くと"JJ(ジェイジェイ)"と名乗っています。昔、海外に行ったときにあるきっかけで、"JJ"と名乗るようにしました。日本語で名前を発音して外人にはもわかりづらいけど、短い"JJ"なら覚えやすい、音がいい、"JJ"の"J"は"JAPN"の"J"とかいろいろあとづけで理由をつけています。

サッカー好きの人はご存じかもしれませんが、日本の代表監督にもなった「ジーコ」の本名は「アルトゥール・アントゥネス・コインブラ」です。「イチロー」の本名は「鈴木一郎」です。つまり、名前とはある意味、ただの記号でしかありません。あなたの名前ももちろん例外ではありません。

しかし、別の視点から見るとこの名前というのはとても重要です。なぜなら、生まれてから何度も繰り返し自分で言い、書き、人からも呼ばれるからです。「鈴木さ~ん!」と大きな声で街で呼ばれると、鈴木さんはきっと振り返ります。なぜなら、鈴木さんだからです。鈴木さんと何度も呼ばれ、自分を鈴木さんと思っているからです。自分を田中さんとは思っていません。当たり前です。自分で自分のことを鈴木さんだと思う。鈴木さんだと思っている。このことが重要なのです。あなたはあなたのことをどう思っているかということです。

人間の心理とは不思議なもので、たとえいま、仕事がなくても「無職です」といわずに「社長です」「社長です」「社長です」といい続けると、いつの間にか「社長」のようになってきます。「社長!」と呼ばれているうちに「社長」の気分になり、「社長」のような行動をとるものなのです。つまり、自分が自分をどう思うのか、どう呼ぶのか?ということがセルフイメージ(自己の概念)をつくり上げるのです。

同じように、人が自分をどう呼ぶのか?自分は何と呼ばれているのか?という環境がその人をつくり上げていきます。

思考と行動(言葉)をコントロールする

「思考」とは「言葉」で行なうものですから、「言葉」というものに注意することです。経営理念とは「思考」であり「言葉」ですから、自分の「行動」と「結果」と「感情」に大きな影響が出ることに注意すべきです。

「『経営理念をつくると業績が上がる』と言われたから経営理念をつくったけど、別に業績は変わらなかった」という人がいます。たしかに、経営理念はつくったのかもしれませんが、経営理念に書いてある言葉を1日に1回も「思う」ことがないと何も変わりません。経営理念にある「思考」(信念)と「言葉」を、1日のうちに何度も「思い」、「言葉」にすると「結果」が変わってくるのです。

ですから、自分の「思考」と「行動」「言葉」をコントロールすることが大切です。そして、自分だけでなく社員全員の「思考」と「行動」「言葉」を良いほうにコントロールすることです。そうすることで会社に良い「結果」が出て、社風が良くなります。たとえば、「ありがとうございます」「がんばります」「やります」という言葉が社内にあふれている会社と、一方で「知りません」「わかりません」「できません」という言葉ばかり話している会社があるとすれば、おのずから結果は違ってくると思います。

社員一人ひとりの「思考」と「行動」「言葉」がまったくバラバラであれば、やはり「結果」はバラバラなものになります。たとえば、カレーハウスCoCo壱番屋の社是は、「ニコニコ・キビキビ・ハキハキ」。いつもニコニコ笑顔で、キビキビ働き、ハキハキこたえる。これを略した言葉が「ニコ・キビ・ハキ」です。この会社で、ニコニコしない、キビキビ動かない、ハキハキこたえない社員は会社にいづらいです。いづらいというより、すぐに辞めることになると思います。なぜなら、「思考」も「行動」も「言葉」も社是、つまり会社が是とする、よしとするものと違うからです。

つまり、経営理念とは社員の「思考」と「行動」に良い影響を与えるものであり、その「思考」や「行動」をともにできる人ですか?という問いかけでもあります。

経営理念を考えるために知っておきたいこと

心理学の視点から見た「思考」と「行動」をコントロールする重要性を理解する

思考と行動の関係を理解する経営理念をつくるうえで、思考と行動の関係について理解しておく必要があります。

心理学の視点から見ても、思考と行動はお互いに影響し合っています。思考と行動はコインの裏表、車の両輪ともいえます。どちらか一つを良くすれば、もう一つも良くなってきます。どちらか一つを悪くすれば、もう一つも悪くなってきます。心身ともに健康という言葉があるように、心と身体は影響し合います。心が病めば体は調子が悪くなり、体の調子が悪くなれば心も重くなってきます。

また、体が良いことをしながら(〇の行動)、悪いことを考える(×の思考)のはむずかしいですし、頭で良いことを考えながら(〇の思考)悪い行動をする(×の行動)のもむずかしいでしょう。片方がプラスなのに、もう片方がマイナスになるというのはむずかしいのです。

たとえば、良いことを思いながら悪いことをする、良いことをしながら悪いことを思うことです。「子どもにプレゼントを買ってあげたら喜ぶだろうな」と思いながら(〇の思考)、人の物を盗む(×の行動)のはむずかしいのです。同じように、人に親切にしながら(〇の行動)、「今度誰かを騙してやろう」(×の思考)と考えることがむずかしいのです。

行動の中には言葉も含まれます。つまり、いつも良いことを考えている人は良い言葉を使います(〇の思考と〇の行動・言葉です)。なぜなら、思考が行動(言葉)に現われるからです。同じようにいつも良い言葉使っていると、考え方も良い考えをするようになるということです(〇の言葉と〇の思考です)。さらに、いつも良い言葉を使って話している人は良い行動をするようになり、いつも悪い言葉を使っている人は悪い行動をするようになります。つまり、〇の思考・行動が〇の行動を生み、×の思考・行動が×の行動を生むということです。

人として正しいことをしようという経営理念をいつも「思っている」人は、人として正しい「行動」をするようになります。そして、人として正しい「行動」をしている人はさらに人として正しい「行動」を繰り返し、習慣になっていくものです。このように、良い「思い」と良い「行動」を繰り返すと、良い「結果」が生まれ、良い「気持ち」になるのです。これが人生と経営がうまくいっている人の特徴です。
「思考」と「行動」が「結果」と「感情」を生み出すのです。

裏を返せば、悪い「思考」と悪い「行動」が悪い「結果」と悪い「感情」を生み出すことになります。当たり前のことなのですが、とても大切なのです。ここに良い「言葉」と悪い「言葉」を並べてみました。

読んでみると自分自身の「感情」、つまり「気持ち」に変化が起こることがわかると思います。良い「言葉」を読むと良い「気持ち」になり、悪い「言葉」を読むと悪い「気持ち」になるものです。つまり、「毎日、何を思うのか」がとても大切なのです。「毎日、何を話すか」が自分の人生と会社の業績や雰囲気を決めてゆくのです。

よいことば
ありがとう
ついてる
良い
できる
やりたい
楽しい
うれしい
感謝

平和
幸せ
努力
謙虚
反省
わるいことば
馬鹿野郎
運がない
悪い
できない
やりたくない
つまらない
鬱陶しい
憎しみ
暴力
自殺
病気
困難
傲慢
悪意

経営理念があり、業績が良い会社はどのくらいあるのか?

経営理念と業績の関係を4つにするとこうなります。

(1)経営理念があり、業績が良い =◎
(2)経営理念があり、業績が悪い =△
(3)経営理念がない、業績が良い =△
(4)経営理念がない、業績が悪い =×

(1)経営理念があり、業績が良い会社は理想的です。さらに成長されることを期待します。もうこれ以上いうこともありません。

(2)経営理念があり、業績が悪い会社は、経営理念先行型で経営戦略がない、営業努力が足りないなど、何か業績を上げる要素が足りないといえます。

(3)経営理念がない、業績が良い企業は、注意が必要かもしれません。ここでいう「経営理念がない」の定義が大切です。「経営に対する強い信念がない」「まだはっきりとした判断基準ができていない」というものであればいいのです。しかし、「経営理念がない」ということが、「悪い経営理念を持っている」ということだと問題があります。たとえば、「自分だけ儲かればいい」「人殺し以外は何をしてもいい」といった判断基準です。そういった経営理念、判断基準を持ち続けると、どこかで世の中からの制裁を受けることになると覚悟しておいたほうがいいのかもしれません。

(4)経営理念がない、業績が悪い会社は倒産型企業といえるのかもしれません。

さて、この4つの分類についてもう少し詳しく見ていきたいと思います

「80:20の法則」1896年イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見したといわれる80:20の法則では、上位20%の原因が80%の結果を生むとされています。この80:20の法則をもとに考えると、100人の経営者がいれば、20:60:20に分けることができます。上位20%の経営者は経営理念を大切にし、中位60%の経営者は経営者についてはどちらでもないと思い、下位20%の経営者は経営理念については必要ないと思っているとなります。

この文章を読まれている皆さんは、「経営理念について考えよう」「経営理念をつくろう」と思っているわけですから、その時点で上位20%に入っている人、または入ろうという人といえます。(1)の人です。

今度はさらに、ヨコ軸に業績を入れてみます。業績の比率も同じように20:60:20に分けます。業績の上位20%、中位60%、下位20%を右から書きます。ここからわかるように、

(1)経営理念を大切にする上位20%の企業であり、かつ業績が良い上位20%の企業というのは、20%×20%で全体の4%しかないといえます。

(2)経営理念はほどほどの中位60%の企業であり、業績が良い上位20%の企業というのは、60%×20%で全体の12%。

(3)経営理念は大切にしない下位20%の企業であるが、業績が良い上位20%の企業というのは、20%×20%で全体の4%。

(4)経営理念を大切にする上位20%の企業であるけれども、業績が中位の60%の企業というのは、20%×60%で全体の12%。

(5)経営理念を大切にする上位20%の企業であるけれども、業績が悪い下位20%の企業というのも、20%×20%で全体の4%。

さらに、(6)経営理念は大切にしない下位20%の企業であり、業績が悪い下位20%の企業というのも、20%×20%で全体の4%あるということになります。

日本の企業数は253万社あり、個人事業主を入れると346万社となります。253万社の上位20%は、50万社です。また、売上が10億円を超える企業数は4.4%というデータもあります。自分自身の会社がいま、どこの位置にあるのかをもう一度確認しておいてください。

*国税庁「会社標本調査」=法人税の納税手続きを行なった法人の数(253万社、平成24年)・総務省・経済産業省「経済センサス」活動実態を確認集計(346万社)、売上10億円超の企業率(中小企業実態基本調査平成25年)

ボランティアという社会貢献

「ボランティア」とは自主的に無償で社会活動などに参加し、奉仕活動をする人を指します。「ボランタリー」(voluntary:自発的)という言葉にあるように、自分から主体的に活動することです。ボランティアは社会貢献として素晴らしいものです。

では、企業でやっている「仕事」は素晴らしくないのでしょうか?ボランティアは社会貢献できるけれども仕事では社会貢献できないのでしょうか?ボランティアは素晴らしいが、仕事は素晴らしくはないのでしょうか?

いえ、それは違います。仕事こそが、最も社会に貢献できる活動であるといえます。また、どの会社にあってもそうであってほしいのです。なぜなら、ボランティア活動だけでは、家族を養えません。しかし、会社で仕事をすれば家族を養えます。

ボランティアはレベルが高くて、仕事はレベルが低いなどということはありません。「ボランティアは明るくワクワクしながらやるもので、仕事は暗くイヤイヤながらやるもの」というイメージを持っている人がいるとしたら、いったんそのイメージを捨ててほしいと思います。

「働く」とは、「傍(はた)を楽にする」こと、傍(はた)とは他者のことという解釈もあります。本来の「仕事」とは、他者に「貢献」する、つまり、自分の周りの人の役に立ち、喜ばれ、感謝される行ないです。「いまの自分の仕事は社会に貢献している、社会に役立っている」と社長が心の底から思えることが大切です。そして、この会社で、この仕事で社会に貢献していこうと、経営理念を通じて全社員と価値観を一緒にしてほしいのです。

「仕事」で社会に貢献しているという考え方を信念にまで高め、共有することは経営理念づくりの根底ともいえます。

「管理会計」と「財務会計」

管理会計と財務会計は違います。簡単にいうと管理会計というのは、いまの経営の数字を確認、理解するための管理のための会計であり、財務会計とは国に対する税金の申告などのための会計です。

たとえば、財務会計とは1月の数字が締まると、その会計上に必要な数字をすべて確認をし、その翌々月中旬、つまり、3月の15日に出てくるようなものです。しかし、これでは実際に経営をするときには数字が遅すぎてまったく役に立ちません。

八百屋さんをイメージしてみてください。白菜を売るときに、月末に締めて翌々月の中旬にその状況がわかっても役に立たないうえに、2か月後には在庫である野菜自体は腐っているはずです。1月の末の白菜が100個あるということが、3月の15日にわかったとしても、その時点ではすでに腐って使い物にならなくなっているということなのです。

私は半導体関係の会社で務めたことがありますが、半導体の価格というのは、当時価格の下落が激しく、1か月の中で2回くらい出荷価格が変わりました。店頭価格はもっと激しく、週に1回、月に4回というようなペースで価格が変わっていくこともよくありました。そういった値動き、市場の変化が激しい業界において、財務会計というのはほとんど意味を持ちません。なぜなら、1月末で締めたものが3月の末に上がってきても、毎日の実務には何の手も打てないからです。

それを解決するために管理会計というものが必要になります。それはちょうど八百屋さんが1日に3回店頭で値段を変えるようなイメージです。昼1個100円だった白菜が売れ残りそうになれば、夕方の5時に90円にし、店を閉める1時間前の7時にまだ残っているのであれば、その100円の白菜は90円、70円、50円と値段が下がっていくはずです。つまり、その日の売上や収支をはっきりさせるために、その日中に価格を変え、売上を決定していくのです。

このように毎日、決算を出して今日の状況を把握し、管理するためのものが管理会計です。それと同じようなことを大きな会社でもやる必要があるということです。もちろん、「在庫がこれだけたくさんある」「毎日の棚卸しなんてできるわけがない」「現金の回収がお客さんからの請求書が来ない」などのたくさんの問題があるとは思います。しかしそれをいったん、仮でもいいから数字を入れ「このくらいの売上になる」「これくらいのコストがかかる」「このくらいの利益が出る」というものを確定していく必要があるということです。

飛行機に乗っていて計器を見ずに飛ぶことができないように、やはり毎日の数字を見ずに経営はできません。より良い経営をする、社員を幸せにする、利益を出すという理念を持つのであれば、必ず数字を見てゆく必要があります。

その経営理念は日次で決算をする、月末で締めたら翌3日以内に決算の数字を出すといった事実に反映されます。つまり社員を幸せにする経営、高収益の経営を追求すのであれば、より正しい経営数字を毎日把握するということが必要になってくるのです。経営理念を数字に落とし込むこと、これも経営理念といえるのです。

ダブルチェックの原則

銀行での多額の不正使用や、ある企業で経理の女性が一人で数億円の損失を出したというようなことが新聞に載っていることがあります。つまりそれは、ある意味ではその人を信じ、数字を任せはしたのですが、結果的に不正を働くという罪を作らせてしまったということになります。人間というものは弱いものであることを前提に、その間違いを防ぐのがダブルチェックといわれるものです。

ダブルチェックとは、Aさん一人、つまり、1人だけでお金を動かすということをしないような仕組みをつくり、2人でチェックするということです。ダブルチェックをするという数字に関する経営理念を持つということが不正を防ぐうえで大事になるのです。

身近な例として10人で居酒屋でコンパをしたとします。合計の会計が2万8500円だったとすれば、1人当たり2850円になります。この場合支出の2万8500円を10人で割ると、1人2850円の費用負担です。しかし、2850円ずつ集めるのが大変なので、1人当たり3000円ずつ集金をします。3000×10人=3万円が収入になります。そして、収入-支出=3万円-2万8500円=差額が1500円。これを10人で割ると、1人に150円ずつ戻すという会計になります。

数字の上で計算し、口で言うのは簡単なのですが、実際に酔ったときにさらに端数のある金額の計算を1人でやろうとすると、「あれ、おかしいな。ちょっと合わないな」というようなことがよく起こるのです。こういったことを回避するのがダブルチェックです。つまり、AさんとBさん2人で、そのお金を確認をすることによって間違いが防げるのです。支出がいくら収入がいくら、差額がいくら、1人当たりの払い戻しがいくらと、それぞれの数字を確認することによって過ちを防ぐことができます。

仮に本人に悪気がないとしても、一人でやったときに数字が間違っていれば、「ちょっとくらいいいだろう」とごまかすことになります。計算が合わなければ「お前、お金を自分の懐に入れただろう」と疑われてしまうこともあります。また、お金が不足していれば、「僕が黙って1000円多く払えば解決する」と善意ある人に負担をかけてしまうこともあるのです。こういったことを防ぐために、誰かにしわ寄せがいかないようにダブルチェックが必要となります。

この例は、たかがコンパの席のことではあるのですが、会社に置き換えると売上が10億円、100億円、1000億円と大きくなれば、そのしわ寄せは1000円や2000円では済まなくなり、1000万円、1億円、2億円という金額になってしまうのです。そうならないように、小さな一つひとつのダブルチェックが必要といえるのです。

経営理念を「数字」に落とし込む

「利益」という「数字」が人の心を変化させる、だから、人が「数字」をコントロールする必要がでてくる

「君は高給に耐えられるか?」

この言葉は、あるオーナー社長が、その雇われ社長である若い経営者田中さん(仮名)に言ったものです。ある意味、この言葉はオーナー社長の名言ではないかと思います。サラリーマンとしてある会社に入り、関連子会社の課長、部長、役員となり、社長に昇格し、その人にその会社の経営を本当に任せようとした時に、田中さんは「君は高給に耐えられるか?」と問われたのです。

立場が上がればその人の給料は上がっていきます。400万、600万、800万、1000万、1500万、2000万、3000万と上がっていくわけです。すると、自分がとても偉くなった気がします。そうすると人は勘違いを起こしやすくなるのです。自分が創業したわけでもないのに社長になり、他の人に対して優越感を持つようになります

とくにお金の問題が大きくなります。給料が上がり、年収が1000万を超え、2000万を超えるあたりになると、普通の人がする生活よりもいい生活ができるようになり、また、社長という立場を勘違いすれば、人より遅く会社に来ることが多くなり、平日にゴルフをしたりすることもあります。そのような行動を続けると、いつの間にか自分が偉くなったようなつもりになり、浪費をするようにもなるのです。

会社のお金が自由に使え、会社のお金で食事をし、飛行機に乗り、新幹線のグリーン車に乗るようになるわけです。それがその人に勘違いを起こす。つまり、給料が高くなり、持てる権限が大きくなると人は人格が変わっていってしまうことがあるのです。

それが、「君は高給に耐えられるか?」という言葉になったのです。給料が多くなる、人より地位が上がるということは、ある意味その本人に精神力が問われる試練ともいえるのです。

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