経営理念とはミッション(使命)、ビジョン(将来像)、バリュー(価値観)か?

経営理念の根幹ともいえる3つのキーワードをシッカリと押さえておく

「ネクスト・ソサエティでは、トップマネジメントがそのまま企業となる。トップマネジメントの責任は、方向づけ、計画、戦略、価値、原則、構造、関係、提携、合弁、研究、開発、設計、イノベーションにおよぶ。組織としての個の確立には価値観が必要となる。ネクスト・ソサエティにおけるトップマネジメントの最大の仕事が、組織としての個の確立である。しかし、ネクスト・ソサエティにおける企業の最大の課題は、社会的な正統性の確立、すなわち価値、使命、ビジョンの確立である。他の機能はすべてアウトソーシングできる」(P・F・ドラッカー/『ネクスト・ソサエティ』ダイヤモンド社より)

ミッション(=使命)、ビジョン(=将来像)、バリュー(=価値観)、この3つ以外は、外部に出してもいい。つまり、この3つが企業の中枢であると言っているのです。ドラッカーにこう言われると、反論できる人が少なくなってしまいます。

しかし、ドラッカーの言うことが100%正しく、経営理念もミッション、ビジョン、バリューの3つにしなければいけないかというと、そうではないと思うのです。経営理念とは「経営者がどう思うのか?社員がどう考えるのか?」といったことも大切です。ですから、このミッション、ビジョン、バリューという言葉を使うか使わないかは、自社の状況に合わせて変えてほしいと思います。

ある上場企業の社長と経営理念について話したときに、「ミッション、ビジョン、バリューって使いづらいんですよね。なんとなく、しっくりこないんです。ですから、ウチの会社ではミッション、ビジョン、バリューという言葉は使っていません」ときっぱり話してくれました。それでいいのだと思います。「ミッション、ビジョン、バリューというまとめ方をしなければならない」と思うことが、思考を狭めてしまいます。もちろん、ミッション、ビジョン、バリューでまとめてもいいのです。しかし、その言葉に囚われすぎないということが大切なのだと思います。

ミッション = 使命、重要な任務、キリスト教の伝道など(『デジタル大辞泉』より)「ミッション」という言葉は、ややこしいところがあります。言う側の使い方、聞く側の聞き方で意味合いが違ってくるからです。「君のミッションは新規開拓だ」と言われた場合は、「君の任務=仕事は新規開拓だ」という意味で使われています。この場合、ミッション=任務=仕事=役割という程度のものです。「業務だからしっかりやりなさい」という感じです。

しかし、「君のミッションは世界の貧困を救うことだ」となると意味合いが違ってきます。「君は自分の命をかけて、人生のすべてをかけて世界の貧困を救うことだ」という重い意味を感じます。たとえば、国境なき医師団が自分が死ぬかもしれないがその最前線に出向いていく覚悟を感じるイメージです。「昨日つくった商品の新規開拓を君のミッションとする」というのとは重みが全然違います。

もちろん、言葉ですから人によって使い方が違っていいのですが、この「ミッション」という言葉は、どちらかというと重い意味で使ってほしい言葉です。「ミッション」は日本語に訳すと、「使命」ですから、「命を使う」という意味です。自分の「命をかけて全力で当たる」「一生かけてやり遂げる」という「覚悟」を感じさせる言葉が、このミッションといえます。

森信三氏は「天からの封書を開ける」と言います。「人は誰でも天から封書を預かって生まれてくる。しかし、その封書を開けずに人生を終えてしまう人のなんと多いことよ」と言っています。人は生まれながらに使命を持っている、人として死ぬまでに果たすべき役割がある、それを封書でもって生まれてくるということです。

では、どうすれば自分だけに与えられた封書を開け、自分の使命に気づくことができるのか?「『目の前のことに全力を尽くす』それ以外に自分の使命に気づく方法はない」と言ったのは吉田松陰です。つまり、天からの封書を開けるには、足下を掘るということです。どこかに青い鳥がいるのではないかとさまようより、「いま、ここ」を大切にすることのほうが、自分の使命に気づくことができるということです。

自分の使命に気づくとは、本当の自己に目覚めるということです。誰かに影響されて、人の人生を生きるのではなく、本物の自分の生き方に気づくということです。自分にしか歩けない、自分自身の人生を歩くということ。「覚悟を決める」「ブレない」「この道しかない」という表現が当てはまる生き方となります。

ビジョン = 洞察力、未来像、夢、幻想など(『新英和中辞典』『デジタル大辞泉』より)「ビジョン」は「ミッション(使命)が実現した姿」という表現があります。経営理念に基づいて、「こうありたい」という姿、自社が目指すイメージともいえます。日本人は昔から言葉遊びが好きです。「人生には3つの坂がある。『上り坂、下り坂、まさか』、この『まさか』という坂に気をつけましょう」という話を聞いたことがあるかと思います。しかし、これは言葉遊びです。

同じように、「ビジョン」でも、「『ビジョン経営』をしましょう!」などと言われます。「ビジョン経営」といっても、響きはいいのですが、意味がよくわからない。「『ビジョン経営』で行こう」「『ビジョン経営』の時代だ!」と言われても、言っている経営者は気持ちがいいのですが、聞いている社員はよくわかっていないということが起こります。つまり、一種の言葉遊びのようになってしまうのです。

「ビジョン経営」とは、日本語に訳すと、「夢経営」「幻想経営」です。これだとよく意味がわからない。「こうありたい経営」のほうがまだ、何となく意味が通じるかもしれない......。この「ビジョン」とは、「将来ありたい姿」「なっていたい会社の状態」と考えるといいのかもしれません。言葉を変えると、「No.1になる」「日本一になる」「世界で活躍する」という「イメージ」「願望」です。また、「目指すもの」「目指す姿」「目指す方向性」ともいえます。

【アタックスグループ「ビジョン」】
日本一の「社長の最良の相談相手」になること。

【株式会社LIXILグループ 中期経営VISION】
住生活産業におけるグローバルリーダーを目指す

【ANAグループ「経営ビジョン」】
ANAグループは、お客様満足と価値創造で世界のリーディングエアライングループを目指します。

バリュー = 価値基準、価値観、値打ち、評価、価値など(『新英和中辞典』より)経営理念で使われる「バリュー」は、「価値観」「判断基準」といってもいいかもしれません。「ミッション」という使命をもとに、「ビジョン」という将来像を描き、そこに向かって行動するための判断基準が「バリュー」です。また、行動をする基準となるものとも考えられますので、「バリュー」を「行動指針」と表現する場合もあります。

つまり、「バリュー」とは判断の基準となる考え方、「価値観」であり、その「価値観」「判断基準」に基づいた「行動指針」なのです。この「バリュー」は、さまざまな言葉で言い換えられています。たとえば、「行動指針」「信条」「クレド」「社是」「社訓」「ガイドライン」「ウェイ」などです。こういった言葉は、絶対にこの言葉でなくてはいけないというものではなく、それぞれの会社に会った言葉で、わかりやすいものであればいいのです。

「価値観」「バリュー」を決める社長のフィーリングに合う言葉、経営理念をつくり込む社員の考え方に合う言葉、社外に発信するときに社外の人にわかりやすい言葉でありたいものです。カッコいい言葉ばかりを求めて、本質を見失わないようにすることが大切です。そのひと言があれば、社員全員がこうすればいいとすぐにわかるような言葉が最適です。

読売巨人軍のオーナーであった正力松太郎氏は「巨人軍は常に紳士たれ」「巨人軍は常に強くあれ」「巨人軍はアメリカ野球に追いつき、そして追い越せ」という3つの遺訓を残しています。この言葉は、そのあるべき姿、ありたい姿を表わす、わかりやすい表現だと思います。企業経営だけでなく、プロ野球の選手のあり方においても、価値観、経営理念というものが生きている例といえます。

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