企業は赤字を出してもいいのか?

日本の企業の70.3%は赤字です。いろいろな理由があると思います。でも、本当に赤字でいいのでしょうか?(「平成24年度会社標本調査」国税庁より)

松下幸之助氏は、赤字は罪悪であるといいます。「天下の金・人・物を使う企業は、それに見合うだけの社会的プラスが、初めから予想されていると考えるべきである。それが十分にできないのならば、いさぎよく人と金を社会に返して、他にもっと有効に活用してもらうことを考えたほうがよろしい。ましてや、企業が赤字となれば、これは単にその会社の損失というにとどまらず、社会的に見ても大いなる損失である。赤字を出したからといって、その企業が法的に罰せられることはないが、私は、その企業は社会に対して、一つの過ちを犯したのだという厳しい自覚をもって然るべきだと考える」
(松下幸之助/『なぜ』PHP文庫)

「利益が出たら税金なんか払うより、社員にボーナスで払いたい」という人もいるでしょう。しかし、そういう経営を続けているといざというときに給与が払えなくなることがあります。売上3億円、利益はトントン、つまりほぼゼロ、という経営を続けてきたある人柄のいい経営者、田中さん(仮名)がいます。田中さんはまさに、「利益が出たら税金なんか払うより、社員にボーナスで払いたい」という経営をしてきました。しかし、ある年に売上が3000万円、つまり10%ほど減り、社員にボーナスが払えなくなります。いろいろ手を打ってもどうにもならずに、結局、自分の貯金の中からわずかながらボーナスを払うことになりました。

経営はいつでもいい状態でいられるわけではありません。1年に四季があるように経営環境にもいい時もあれば悪いときもある、というアップダウンを繰り返します。その悪いときのために、会社に蓄えをつくっておかなければならないのです。松下幸之助氏の言う、「ダム式経営」です。

いまの日本の税制では売上100億円で、利益が10億円(10%)でれば、おおざっぱに言うとその50%の5億円を税金で持って行かれます。なので、会社に残るのは5億円です。売上3億円で利益が10%の3000万円出たら、手元に残るのは1500万円です。それが会社に残る「内部留保」と呼ばれるものになります。この出た利益の半分の額を毎年毎年少しずつ積み重ねた結果が「内部留保」となるわけです。会社が出した利益の本当に使える「貯金」と思えばいいのかもしれません。

その本当に使える「貯金」=「内部留保」が、仮に10年経営して1500万円ならば、1年で150万円しか社内に貯金(内部留保)できなかったということです。社員が15人いるとして、ボーナスを10万円ずつ支払いたいとすれば15人×10万円=150万円になるので、1年分の内部留保がなくなります。

だから、税金なんて払わずにそのときそのときで社員に給与で払ってあげたほうがいいじゃないか、という考え方もあるでしょう。しかし、そうしているうちはいつまでたっても内部留保ができません。つまり、ダムの中に水がたまらないのです。そうではなく、正々堂々と利益を出し、税金を払うことが会社の経営を安定させるのです。

経営理念の中に、
「社員を守るために、正々堂々と利益を出し、税金を払う」
「社員を守るために、必ず、キチンと給与とボーナスを支払う」
「社員を守るために、経常利益率10%を出す」
という経済的なフィロソフィ、哲学が必要になってくるのです。

「社員を幸せにする」といいながら、給与を払わずにいるということはできないのです。社員が生活をしてゆくためには、経済性の追求が必要となってくるのです。だから、経営理念の中には、きれい事だけではなく、「社員を守るために、経常利益率10%を出す」というフィロソフィが必要になってきます。

経営理念の一番上に、「経常利益率10%を出す」ではないのです。経営の目的は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」です。しかし、その社員の幸せと、社会の貢献のために、経済性の追求が必要になります。(1)人間性の追求、(2)社会性の追求、そのための(3)経済性の追求が必要になってくるのです。その一つの指標が「経常利益率10%を出す」となるわけです。

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