経常利益率は10%なければならないのか?

日本の253万社のうち、70.3%が赤字なのは日本の法人税率が高いというのも一つの原因かもしれません。しかし、実はここに経営理念が大きく関わっていると思うのです。税金が高いから払いたくないと思うその心が、儲かったら社員にボーナスを払えばいい、この際だから広告を出しておこう、交際費を使おうという思いになるのです。

つまり、それが経営理念とつながっているのです。税金を逃れようという思いが、本来なら経常利益10%が出せるところを、2%、3%という数字にしてしまうということなのです。

利益には2つの意味があります。一つが守り、もう一つが攻めです。

守り守りとは、いざというときのために蓄えを取っておくという考え方です。先ほどお話した「内部留保」です。

例えば、社員の賃金の上昇ということもあります。100人の社員の平均給与が400万円なら年間4億円の人件費がかかっていることになります。その4億円の賃金が仮に10%上昇すれば4000万円のコストが増加するのです。そのことに対して準備をしておく必要があります。また、飲食店であれば、食中毒が起こることがあります。生モノを扱うお寿司などはなおさらです。仮に食中毒が起これば、業務停止が1週間、2週間となり、月の売上が半分になっても、コストだけはずっとかかり続け赤字に陥ります。

こういった不測の事態に対して「守る」ために高収益を出し続け、社内にいつでもその不測の事態に対応できるキャッシュを持っておく必要があるのです。

攻め攻めとは、前向き積極的な利益の使い方です。たとえば、自分の持っている店舗の隣に、たまたま土地を売りたいという人が出てきた場合や、新しい工場をつくり、設備投資をするといった攻めの経営を展開したい場合に対応するための資金を手元に持っておくということです。

銀行からの借入れだけではなく、自社でキャッシュを持っていることによって、余裕がある対応をすることができるのです。利益とは、働いた付加価値を測るものであり、自分自身の経営を守るものであり、攻める経営をする場合に必要となるものといえるのです。したがって、経常利益10%というものが必要となるわけです。

「セルフイメージ」という言葉があります。自分自身をどう思っているかということなのです。たとえば、年収1000万円の人は、仮に職を失ったとしても、またいつの間にか年収1000万円になります。これは、本人が居心地のいい世界、自分自身が持つ居心地のいい世界に戻ろうとするからなのです。自分自身が持つイメージは年収1000万円だと思えばそこに行き、自分自身の年収が2000万円だと思っている人は2000万円となります。これとまったく同じことが企業にもあるのです。

経常利益は特にいらない、トントンであればいいと思う人はそうなるし、3%でいいと思えばそうなり、10%必要だと思えばそうなっていくわけです。これが心理学でいうセルフイメージというものであり、また、言葉を換えれば理念、考え方ということができるわけです。

世界的ファンドであるテマセク・ホールディングスや、カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)などは、年間の平均利回りが10%で回っているそうです。つまり、働かなくても10%の金利が付いているということです。日本ではここ10年以上低金利ですが、世界では5%、10%で回っているファンドというものが存在します。もし企業が全社員の力を合わせ働いても、経常利益、つまり生んだ付加価値の最後が1%までないというのであれば、逆に働かずにそういったファンドに預けておいたほうがいいのではないかというような思いも出てきます。

したがって、社員全員が努力をし、英知を結集し、働いているのであれば、経常利益は10%を目指してほしいのです。高収益というのは悪ではなく、正々堂々と追求するものであります。不当な利益を得ることは罪ですが、社員全員が努力をしてつくり上げた付加価値、つまり利益は尊いものであると思います。

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