経営理念づくりは「5W2H」で考えるとうまくいく

「いつ」「どこ」「誰」「何」「どう」「なぜ」「いくら」という視点で経営理念を整理してみる

5W2Hの視点5W2Hとは、「いつ」「どこ」「誰」「何」「どう」「なぜ」「いくら」です。経営理念をつくるときに、この5W2Hの視点で考えることができます。つまり、次のことが経営理念をつくるポイントになります。

(1)「いつ」つくるのか?
(2)「どこで」つくるのか?
(3)「誰が」つくるのか?
(4)「どう」つくるのか?
(5)「なぜ」つくるのか?
(6)「いくらで」つくるのか?

一つひとつ考えていきましょう。

(1)「いつ」つくるのか?
ある調査によると、経営理念をつくった時期は、創業時が40%、創業5年以内が19%、6~10年が12%、11~20年が10%、20年超が15%となっています。つまり、創業時に経営理念をつくる経営者が40%ということは、半分以下の経営者しか創業時に経営理念をつくらない、またはつくれないということを表わしています。

創業時には、まずは食べることが優先、売上を上げることが大切となっても仕方がない面もあるといえるのでしょうしかし、時間の経過とともに経営理念について考え、6~10年経てば70%を超える経営者が経営理念をまとめています。また、何度もお話しているように、本人が経営理念と自覚をしていないものでも毎日の判断基準の中には、経営者の理念、考え方が反映されているものです。

つまり、経営理念は明文化されていなくても、社長の心の中には存在しています。それが形としてつくり上げられる一つの目安の時期が、6~10年といえるようです。また、創業者がつくった経営理念を2代目3代目が変えることも当然あります。2代目として会社に入り、2年で社長になる場合と、10年かけて社長になる場合でも経営理念の変え方は違ってきそうです。

とくに自分が働き出してまだ短い期間では、社員の考え方や行動がよくわからないでしょうから、経営理念を変えようとするときには注意が必要です。

(2)「どこ」でつくるのか?
ここでいう「どこ」は、「どこの部門」となるかと思います。一般的には社長直轄の経営企画室や総務部などになるかと思います。会社の組織によってケースバイケースで変わってくるものです。

(3)「誰」がつくるのか?
経営理念をつくるのは社長です。これは間違いのないことです。でも、社長だけがつくるのでは社員はその経営理念を受け入れづらいので、社員と一緒につくることが必要になります。社長が主導であることは大切ですし、そうでなければならないのですが、社長が一人で全部つくりあげたとすると、それは社長の考え方ではあるが、私たち社員はそう思っていないとなります。反発されると同時に、勝手に社長が言っているとあきれられる感じです。

「いや、違う。経営理念とは社長がすべてつくるものだ」という会社ももちろんあります。それが理想的な形です。しかし理念をすべてつくることができる社長ばかりではありませんのでケースバイケースで考えてください。社長が主導する場合には大まかには、社長が骨子をつくり、社員と対話しながらつくり込むイメージです。一番の基本となる部分は社長が決めます。

「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する」
「わが社は○○な人のために○○の領域で事業を行なう」
「創業の精神は○○」という部分は、社長でないと決められないものです。

一方、「最高のサービスを提供する」という項目を入れるなら、より現場に近い事例を入れて表現するほうがよくなります。そういった場合は、社長がすべてをつくり込むより現場の社員の人の意見を聞き、現場の人がわかりやすい表現で伝えていくことが大切になります。

比率としては、社長が作る部分が60%~80%、社員がつくる部分が40%~20%くらいでしょうか。この比率は決まっているものではなく、社長の思いや、社長の性格にもよるものだと思います。社長が大枠を決めて後は社員のみんなに任せるよ、というタイプならば、社長:社員=60:40くらいでしょう。でも、社長が経営理念に対する思いが強く、いろいろと伝えたいというタイプなら、社長の比率が高くなり、社長:社員=80:20くらいになるかもしれません。

(4)「何」をつくるのか?
何をつくるとなると、どれも経営理念と呼べるたくさんの言葉があります。経営理念、社是、社訓、信条、モットー、スローガン、クレド、ウェイ、ミッション、ビジョン、バリュー、原理原則、哲学、基本方針、個別方針、創業の精神......などなど。ここの言葉選びは、初めて経営理念をつくる人が大変悩むところでもあります。どれもいい気もするし、どれも良くない気もする......。人がたくさん集まれば、1日議論していられるのではないでしょうか?

しかし、言葉の定義や考え方の違いだけに時間を使うのはちょっともったいない気がします。それよりも、経営理念の考え方そのものへ議論の時間を使ってもらいたいと思います。どうしても大人数で話し始めると、話がいろいろな方向に飛んでしまいます。

「信条とクレドは同じなのか?」
「クレドのほうがかっこいいでしょ」
「クレドとウェイはどう違うんだ?」
「トヨタウェイとはいうが、トヨタクレドとは聞いたことないぞ」
「トヨタバリューってあるのか?」

このように、ある人だけ盛り上がるか、イヤになっちゃうか......ではダメなのです。このへんの言葉の選択は、社長がさっと決めてしまったほうがいいでしょう。ある意味ではどの言葉も正しいのです。いったん、いちばん納得しやすいものから始めてみて途中で修正すればいいと思います。

たとえば、『京セラフィロソフィ』(サンマーク出版)という本があります。これを同じように『鈴木商事(自社の名前)フィロソフィ』として、自社の経営に対する哲学として箇条書きでまとめてゆくのも一つの方法です。つまり、初めはどの言葉でもいいのです。つくる過程が数か月あるのですから、その間に変えていけばいいのです。

例(1) 信条 → 信条を羅列する(クレドのほうがカッコいいと思うならクレドにする)
例(2) 基本理念 → 1.2.3......と考え方を箇条書きにする
例(3) ミッション、ビジョン、バリュー → 使命感、将来像、価値観の3つにまとめる
例(4) フィロソフィ → 羅列する、大家族主義で経営するなど
例(5) 私たちが大切にする考え方 → 1.2.3......とわかりやすい表現にする
例(6) わが社の哲学 → (例)京セラフィロソフィ=○○フィロソフィ(わが社の哲学よりフィロソフィがカッコいい、納得がいくと思えばフィロソフィにする)

(5)「どう」つくるのか?
社長が直轄するプロジェクトチームをつくることが必要になります。「誰」がつくるのか?とも関係しますが、社内での人選も大切です。社長が指名する方法もありますし、社内から公募する方法もあります。一つの例としては、部門と年齢をマトリックスにする方法があります。

具体的には、総務・人事部門から一人、営業部門から一人、製造部門から一人、物流部門から一人、開発部門から一人、というようにいくつかの部門を横断します。こうすることで、部門ごとの意見が聞けます。同じように、年齢も20代、30代、40代、50代と各年齢層に一人ずつは入れたいところです。将来の幹部候補を入れる考え方もあれば、ちょっと最近さえない......という人を入れることもあるかもしれません。

実際には、経営理念という文章をつくることになりますので、ただしゃべるのが得意という人だけでもいけませんし、文章を書くのが苦手な人だけでもうまくいきません。人と人との組み合わせを考えたうえで、社長と幹部で人選されてください。作成プロセスとしては、次のようなことを覚えておきましょう。

経営理念をたくさん読む(集める)
いいと思うものを選ぶ
マネする
修正する
自社のものとする

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