「家族を大切にすること」は経営理念

日本では売上10億円までの企業が全体の約90%になります。売上10億円までの企業の大半が、社長が旦那さんで奥さんが役員をやっています。経営者の親族が経営をしている家族経営が多いのです。いわゆる「ファミリービジネス」(同族経営)です。ファミリービジネスは、(1)家族、(2)経営、(3)株主の3つの輪の多くの部分がかぶさっているものです。

つまり、家族で経営をやり、株主も家族というものです。ファミリービジネスというと、売上10億円以下の小さい企業だけと思う人も多いかもしれませんが、そんなことはありません。日本でも世界でも大企業の中にはファミリービジネスでやっている企業がたくさんあります。

たとえば、トヨタ自動車、YKK、サントリー、伊藤園、キッコーマン、ミツカン、大正製薬、イオン、ニトリ、矢崎総業、海外ではフォード、ベンツ、ポルシェ、ロックフェラー......大企業でもキリがないほどあります。実は、日本の企業の95%以上がファミリービジネスなのです。

悪いことでもなければ、少数の特例でもない。"保守本流"といったほうがいいのです。したがって、経営をするときには経営陣は自分の家族との関係を視野に入れておく必要があるのです。たとえば、先ほどのような売上3億円で今季は赤字になるという企業があった場合、社長と奥さんの対話が必要になります。

社員15人は家族のようなものです。その人たちにボーナスを出すのか出さないのか?出すとしたらそのお金は、どの財布から出すのか?いくら出すのか?その金額でいいのか?こういったことを社長である旦那さんと、経理役員である奥さんとで話し合う必要があるのです。このときに理念、つまり考え方、お金に対する原理原則が違うと、「ケンカ」になるのです。勢いづくと「なら、出ていけ!離婚だ!」となるわけです。

社長である旦那さんは、売上が1億円から2億円、3億円と上がり社員も増えると、つき合う人も売上10億円、50億円、100億円の社長となっていく。すると、なぜか自分も偉くなったように錯覚します。たしかに接する世界が違い、入ってくる情報の量が奥さんより多くなる。

すると「ウチの奥さんは私の成長についてきていない」「いろいろ話しても、わかってくれない......」という気持ちを持ち始め、気持ちがすれ違うようになるのです。「あの先輩経営者はスゴイ。あの人についていこう」「女房に何を言ってもわかるわけがない」となると危険信号です。

創業した頃から一緒に苦労し、背中を押してくれた、応援してくれた奥さんをいつの間にか大切にしなくなるのです。考えてみてください。社長である自分を世界で一番わかってくれているのは奥さんです。たしかに血はつながっていない赤の他人です。しかし、縁あって一緒になったのです。その人より大切な人はいるのでしょうか?

病気になって腎臓が一つ必要だと言われたら、「いいよ、自分のを一つあげよう」と言えるのは奥さんか子どもではないですか?(いや、実は別の人がいて......とか言ってたりして)経営は戦略だけでできるものではありません。理念だけでもできません。冷たい数字だけでもない。温かい温情だけでもない。しかし、家族的な温かさがなければ、人は働いても楽しくもなければ幸せでもないと思うのです。

経営者は孤独です。経済的なリスクの伴う、どんな経営判断も最後は自分でしなければならない。そして、責任を取らなければならない。しかし、家族だから支え合えるときもあると思うのです。  

トヨタ自動車のような世界企業レベルのファミリービジネスと、売上3億円のファミリービジネスとでは規模もレベルも違うかもしれません。しかし、小さい企業だからこそ、ファミリーを大切にして経営をしてゆくことが大切なのではないでしょうか?

夫婦仲が悪くて、家族でケンカが絶えない状態では、経営もうまくいくはずがありません。ある100億円を超える企業の経営者は「私は離婚したら社長を辞める」と宣言しています。素晴らしいです。なかなかできるものではありません。ここに一つの「覚悟」を感じます。経営理念の中に、「大家族主義」とともに、「家族仲よく」「夫婦仲よく」という項目があってもいいかもしれません。

一切の人間関係のうち夫婦ほど、たがいに我慢の必要な間柄はないと云ってよい。夫婦のうち人間としてエライ方が、相手をコトバによってなおそうとしないで、相手の不完全さをそのまま黙って背負ってゆく。夫婦関係というものは、結局どちらかが、こうした心の態度を確立する外ないようですね。

森信三  「森信三語録 心魂にひびく言葉」

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